先に断っておきたいことがあります。この記事に書くのは、あくまで私個人の選び方です。「ベトナムで一番いい場所はここです」という話ではありません。そのつもりで読んでいただけたらと思います。
仕事の都合で、北のハノイから南のメコンデルタまで、ひととおり回ってきました。そのなかで、また行きたいと思った場所と、日本語の情報がまだ少ないわりに良かった場所を書きます。
なので、ダナンとダラットは外します。どちらもいい街ですが、すでに十分に紹介されていますし、私がここで書き足せることも多くありません。都市ごとの客観的な比較は17都市を目的別にまとめた記事のほうにあるので、全体像を知りたい方はそちらを見てください。
ビーチ|ダナンではなく、ニャチャンとクイニョン
海沿いの街から書きます。リゾートというと、やはりダナンが選ばれます。日本からの直行便が出ていて、行きやすい。これは当然だと思います。
そのうえで私が挙げたいのが、ニャチャンとクイニョンです。この2つは性格がまったく違うので、順番に書きます。
ニャチャン|外国人慣れした街。ダラットとセットで回れる
ニャチャンは、地方といっても旅行者にはよく知られた場所です。もともとロシアからの旅行者が多かった土地で、外国人向けの店やホテルが早くから育ちました。
そのロシアからの客足は一度ほぼ途絶えたのですが、2025年3月にロシアからカムラン空港への直行便が再開してから、はっきり戻ってきています。2026年の上半期にベトナムを訪れたロシア人は74万人を超えて、前年同期のおよそ3倍。ニャチャンの海沿いを歩くと、その実感があります。
国際チェーンのホテルも揃っています。インターコンチネンタルとシェラトンが以前からあり、2026年の初めにはハイアット リージェンシーが開業しました。ホンチェ島にはマリオットのリゾートもあります。外国人が不便を感じにくい街、というのはこういう意味です。
日本からの直行便はないので、ホーチミンかハノイ、あるいはダナンから乗り継ぐことになります。陸路だと、ホーチミンからは電車で7時間以上。バスはもう少し短く済みますが、いずれにしても時間に余裕がないなら飛行機のほうがいいと思います。
| ホーチミンから | 所要時間 | 料金の目安 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 飛行機(カムラン空港) | 約1時間〜1時間10分 | 往復3,000〜8,000円台 | 空港から市街まで30km強 |
| 電車(統一鉄道) | 約7〜9時間 | 座席〜寝台で幅がある | 1日9〜10本。夜行にすれば宿代が浮く |
| バス(寝台リムジン) | 約8時間半 | 30万ドン前後(約1,800円) | 本数は多い。夜行が中心 |
時間に余裕がないなら飛行機です。逆に、夜行の寝台に乗って朝に着くという行き方は、宿を1泊分浮かせられるので悪くありません。
ニャチャン。カムラン空港は市街から南へ30kmほどの位置にあります
ニャチャンのもうひとつの利点は、ダラットが近いことです。距離にして140kmほど、バスやリムジンで3時間から3時間半。カインレー峠を越える山道なので、混み具合によっては4時間近くかかることもあります。
それでも、ビーチと高原という性格の違う2箇所を1回の旅行でまとめられる。これは意外と知られていない組み合わせだと思います。ダラットの空港は2026年3月から改修で閉まっていましたが、8月19日に再開します。それまでは陸路一本なので、この経路がむしろ現実的でした。
食べるなら海鮮です。私がよく食べるのは、エビやイカの入ったバインセオでした。ニャチャンらしさでいえば、魚のすり身を揚げた chả cá を載せたブンチャーカーや、クラゲを合わせたブンスアのほうが土地の看板です。小さな素焼きの型で焼くバインカンも、朝から晩まで店が開いています。料理そのものの説明はベトナムの食べ物ガイドにまとめました。
外国人が多い分ツアーの選択肢も豊富なので、「ベトナムに少し慣れてきて、そろそろ地方に行ってみたい」という段階の人に合う街です。カフェについてはニャチャンのコーヒーガイドにまとめてあります。
クイニョン|外国人が少なく、観光地価格になっていない
クイニョンは、ニャチャンとは対照的にかなりローカルです。外国人はあまり見かけません。
ただ、この状況は長くは続かないかもしれません。クイニョンは Lonely Planet の「Best in Travel 2026」に選ばれ、Tripadvisor のトレンド目的地にも入りました。推薦文にあったのは、海岸のアクティビティと海鮮です。私が良いと思った点と、ほぼ同じでした。
もうひとつ知っておくと混乱しないのが、行政の話です。2025年7月の再編で、クイニョンが属していたビンディン省はザライ省に統合されました。いまクイニョンは、ザライ省の行政中心です。古いガイドブックには「ビンディン省クイニョン」と書いてありますが、その省はもうありません。
私が泊まったのは中級のホテルでした。高級帯がないわけではなく、アナンタラのヴィラのようなリゾートもあります。ただニャチャンほど選択肢は多くないので、中級のホテルかAirbnbのアパートメントを選ぶことになると思います。旅行で数日過ごすぶんには、まったく問題ありませんでした。宿の選び方はクイニョンのホテル記事に整理してあります。
観光としては、ビーチとイカ釣りがよく挙がります。市街のビーチもいいのですが、きれいなのは少し離れたほうです。断崖に囲まれたキーコー(Kỳ Co)、岩の稜線が三日月形の砂浜を抱えるエオヨー(Eo Gió)、それとホンコー島。いずれもニョンリー(Nhơn Lý)という漁村が起点になります。
| 場所 | どんなところ | 起点 |
|---|---|---|
| キーコー(Kỳ Co) | 断崖に囲まれた入り江。ボートで渡る | ニョンリー漁村 |
| エオヨー(Eo Gió) | 岩の稜線が三日月形の砂浜を抱える岬 | ニョンリー漁村 |
| ホンコー島(Hòn Khô) | 沖の小さな島。海が澄んでいる | ニョンリー漁村 |
| 市街のビーチ | 街から歩ける。人は少ない | クイニョン中心部 |
エオヨー。キーコーとホンコー島も、この一帯のニョンリー漁村が起点になります。クイニョン市街からは北へ20kmほどです
イカ釣りも、そのニョンリーから出ます。夕方に集合して、スピードボートで沖に浮かぶ筏まで数分。2時間ほどの間に日が落ちて、漁師にやり方を教わりながら糸を垂らします。釣れたものはその場で調理してもらえます。料金は40万〜50万ドン、日本円で2,400〜3,000円といったところでした。
ただ、私がクイニョンで一番よかったのは、そこではありません。食事です。観光客向けに値付けされた店が少なく、地元の人が普段行く店がそのまま並んでいる。少なくとも私が入った範囲では、海のものが安くておいしいと感じました。
ここは誤解のないように書いておきたいのですが、いちばん驚いた価格に出会ったのは、クイニョンの市街地ではありません。そこからさらに車で出た郊外のほうです。その郊外で食べたウニは、1つ100円もしませんでした。ビールも1本40円ほどです。ホーチミンの缶ビールが100円前後なので、その半分以下ということになります。
市街地にも安くておいしい店はありますが、この記事で書いているような「桁が違う」価格は、郊外まで足を延ばしてはじめて出てきます。バイクを借りて動けるかどうかで、クイニョンの印象はかなり変わるはずです。
あとから知ったのですが、この一帯はもともとウニの産地でした。ベトナム語では nhum biển といって、この地域ではウニの塩辛(mắm nhum)まで作られています。安く食べられたのは、旅行者向けに安くしていたからではなく、そこで獲れるものをそのまま出していたからでした。
一人で行って、バイクを借りて走って、あとはのんびりする。そういう過ごし方に向いた街だと思います。逆に、恋人や家族と行くなら、ニャチャンのように少し都市化されたほうが飲食の選択肢が多くていいはずです。
| ダナン | ニャチャン | クイニョン | |
|---|---|---|---|
| 日本からの直行便 | あり | なし(乗り継ぎ) | なし(乗り継ぎ) |
| 外国人旅行者 | 多い | 多い | ほとんどいない |
| 宿のグレード | 高級リゾートまで | 国際チェーンあり | 中級とアパートメント |
| 向いている人 | 初めてのビーチ | 地方に踏み出す人 | 一人でのんびりする人 |
| この記事での扱い | 定番なので外す | 推す | 推す |
高原|ダラットではなく、バオロックとバンメトート
次は山のほうです。高原リゾートといえばダラットですが、ここも有名なので飛ばします。
ダラットは観光地として完成しています。飲食店の選択肢も多く、旅行はしやすい。ただ、バックパッカー的な「新しい土地に来た」という感覚は、正直あまりありません。そういう手触りを求めるなら、次の2つのほうが面白いと思います。
| ダラット | バオロック | バンメトート | |
|---|---|---|---|
| この街の作物 | 花・野菜・コーヒー | 茶(ブラオ) | コーヒー(ロブスタ) |
| 近郊の大きな滝 | 複数 | ダンブリ滝(落差60mほど) | ドライヌール滝(幅250m超) |
| 街なかの湖 | スアンフーン湖 | ナムフオン湖 | — |
| 観光地化 | 完成している | ほとんどされていない | ほとんどされていない |
| 飲食の選択肢 | 多い | 少ない | 少ない(コーヒー屋は多い) |
| この記事での扱い | 定番なので外す | 推す | 推す |
バオロック|大きな滝と、お茶の産地
ダラットの近くにバオロックという街があります。観光地と呼べるものは多くありません。名物はダンブリ滝(Thác Đamb’ri)という落差60mほどの大きな滝で、街の中心から17kmほど。正直なところ、目玉といえるのはここくらいです。
街の構造はダラットに似ていて、ナムフオン湖という小さな湖を囲むように町が広がっています。ただ、人はダラットよりずっと少なく、全体にゆったりしています。
ダンブリ滝。バオロックの中心から17kmほど北西にあります
この街の性格を決めているのはお茶です。バオロックは標高800〜900m、平均気温21〜22度という土地で、1930年代から茶が作られてきました。ブラオ(B’Lao)というブランド名で知られていて、ベトナムの「茶の首都」と呼ばれることもあります。茶畑を見て回って、その場で飲んでみる。この街らしい過ごし方はそれだと思います。
バンメトート|滝と、やたらとコーヒー屋が多い街
バンメトートも、構造としては似ています。市街から25kmほど南に、ドライヌール滝(Thác Dray Nur)という幅250mを超える滝があって、街そのものは静かです。
バオロックと違うのは、コーヒー屋の多さでした。歩いていると、とにかくコーヒーの店が目に入ります。これには理由があって、バンメトートを抱えるダクラク省は栽培面積も生産量もベトナムで1位。全国のコーヒーの3割以上がこの省から出ます。「コーヒーの首都」と呼ばれるのは、比喩ではありません。
世界コーヒー博物館。バンメトートの市街にあります
チュングエンが2018年に開いた世界コーヒー博物館もあります。エデ族の高床の長い家をかたどった建物で、これは単純に見応えがありました。
大きな見どころが並んでいるわけではありません。ただ、コーヒーを飲みながらゆっくりするという目的だけで来ても、それなりに面白い街だと思います。
この2つに共通するのは、「見るものが少ない」ことです。それを物足りないと感じる人にはおすすめしません。逆に、観光地をこなすのではなく、知らない街をただ歩きたいという人には合います。
メコンデルタ|日帰りツアーで済ませず、泊まってみる
メコンデルタは、ホーチミン発の日帰りツアーがよく知られています。それで行く人が多いのですが、私は泊まることをすすめたいです。
ホーチミンからバスで行くと、ベンチェまでが2〜3時間ほど。チャビンで3〜4時間、もっと先のカマウまで行くと5〜6時間といったところです。
カマウについては、少し補足がいります。これは私が行ったときの体感で、予約サイトを見ると7時間から9時間と出ることもあります。バス会社と経路、それに出発時刻でかなり変わる区間です。
背景として、2025年12月にカントーとカマウをつなぐ高速道路が開通しました。国道1号を延々と走っていたころより短くなったのは確かですが、各社の所要時間の表示が追いついていない面もあります。行く前に、乗る会社の最新の時刻で確認してください。
もうひとつ、地名の話をしておきます。2025年7月の再編で、ベンチェ省とチャビン省はヴィンロン省に統合されました。いまはどちらもヴィンロン省です。ついでにいうと、ブンタウはホーチミン市に編入されました。ベトナムの地図は、この1年でかなり書き換わっています。
| 行き先 | ホーチミンからバスで | この街の性格 |
|---|---|---|
| ベンチェ | 約2〜3時間 | ヤシ林と運河。いちばん気軽に行ける |
| チャビン | 約3〜4時間(4時間強の表示も) | 観光地化されておらず、静か |
| カマウ | 5〜6時間(表示は7〜9時間の場合も) | 海鮮の産地。カニやエビが安い |
ベンチェ。2025年の再編でヴィンロン省になりました。ホーチミンからいちばん近いメコンの街です
どこも観光地は多くありません。あるのは、生い茂ったココナッツと、豊富に採れるフルーツです。
私が面白いと思うのは食文化のほうで、ホーチミンで食べるものと比べても、もう少し酸味の効いた鍋や、川魚を使った料理が出てきます。タマリンドで酸味をつけたカインチュアに、増水期にしか獲れないカーリンという小魚と、黄色い花を入れる。発酵させた魚を溶かしたラウマムという鍋もあります。いわゆる東南アジアらしい雰囲気は、この地域のほうが強く感じられます。
カマウは海鮮の産地でもあるので、カニやエビをかなり安く食べられます。ここも、ホーチミンの価格に慣れているほど驚くと思います。
宿は、メコン川沿いのホテルを選ぶといいです。この記事では詳しく触れませんが、カントーには川の中州に建っていて、ボートでしか行けない宿もあります。市街から数分の距離なのに、着いてしまえば川に囲まれている。川に浮かぶ船に泊まるクルーズもあります。
のんびり過ごすリトリートのような旅には、向いている地域だと思います。宿の選び方はメコンデルタのホテル記事にまとめました。
こうして並べてみると、私が挙げた街には共通点があります。「見るものが少ない」ことです。クイニョンにもバオロックにも、一日かけて回るような観光地はありません。ダラットやダナンのほうが、その意味では確実に満足度が高いはずです。
それでもまた行きたくなるのは、たぶん、観光地をこなす旅ではなくなるからだと思っています。見るものがないので、朝は市場に行って、昼は地元の店で食べて、午後はバイクで海沿いを走る。日本から来た旅行者ではなく、その街に何日か住んでいる人のような時間の使い方になる。
短い休みで一箇所しか行けないなら、私も定番をすすめます。ただ、ベトナムに何度か来て、一通り見たと思っている人には、こういう街のほうが記憶に残るはずです。少なくとも私はそうでした。
国内線は往復1万円前後。1泊2日でも足ります
こういう話をすると「時間もお金もかかるのでは」と思われるのですが、ベトナムの国内線はかなり本数があります。ホーチミンとハノイからは、ダナンをはじめ各地に飛んでいます。
料金は、LCCで平日、しかも閑散期に取れれば往復1万円前後ということもあります。ただ、これは条件が揃ったときの話です。連休やテトの時期は2倍にも3倍にもなるので、そこは日本と変わりません。
この価格帯なら、週末の1泊2日でも十分に成立します。ホーチミンやハノイに滞在して、そこで完結させてしまうのはもったいない。1泊でいいので、地方に足を延ばしてみてほしいと思っています。
旅行前の準備についてはベトナム旅行の準備完全ガイドに、現地の価格感についてはホーチミンの物価コラムに書きました。地方に行くと、そこで書いた価格がさらにもう一段下がります。
目的別の早見表
最後に整理します。この記事で主役にしたのは下の段の街ですが、比較の基準がないと選びづらいので、定番も入れてあります。
| こういう人には | この街 | 理由 |
|---|---|---|
| はじめてのベトナムで海に行きたい | ダナン(定番・比較用) | 直行便があり、迷う要素が少ない |
| 地方に踏み出してみたい | ニャチャン | 外国人向けの店とツアーが揃っている |
| ビーチと高原をまとめて回りたい | ニャチャン+ダラット | バスで3〜4時間。1回の旅程に収まる |
| 一人でのんびり、食事重視 | クイニョン(郊外まで) | 海のものが安くておいしい。外国人が少ない |
| お茶と静けさ | バオロック | 茶産地。人が少なく街が小さい |
| コーヒーを飲んで過ごしたい | バンメトート | コーヒー屋が多く、街が静か |
| 気軽に東南アジアらしさを味わう | ベンチェ | ホーチミンからバスで2〜3時間 |
| カニやエビを安く食べたい | カマウ | 海鮮の産地。ただし片道5〜6時間かそれ以上 |
| 川沿いでのんびりしたい | カントー | 川の中州にありボートで渡る宿がある |
繰り返しになりますが、これは私の選び方です。行き先を決めるのは読んだ方なので、判断の材料のひとつとして使ってもらえたらと思います。
よくある質問
- ベトナムの地方都市は、旅行者だけで行っても大丈夫ですか?
-
ニャチャンは外国人向けの店やツアーが揃っているので、はじめての地方でも困りません。クイニョンやバオロック、バンメトートは英語が通じる場面が少ないので、翻訳アプリと配車アプリを入れてから行くと安心です。
- ホーチミンからニャチャンへは、どう行くのが早いですか?
-
飛行機です。陸路だと電車で7時間以上かかります。バスはもう少し短く済みますが、時間に余裕がないなら国内線をおすすめします。
- ニャチャンとダラットは一緒に回れますか?
-
回れます。バスやリムジンで3時間から3時間半、峠を越える山道なので混めば4時間近くかかります。それでも、ビーチと高原という性格の違う2箇所を1回の旅程にまとめられます。
- メコンデルタは日帰りツアーで十分ではないですか?
-
日帰りでも水上市場や運河は見られます。ただ、この地域の面白さは食文化と川沿いでの時間の流れ方にあるので、1泊すると印象がかなり変わります。ベンチェならホーチミンからバスで2〜3時間なので、週末でも足を延ばせます。
- 地方に行くと物価はさらに下がりますか?
-
下がります。とくに食事は、ホーチミンでは見ない価格に出会うことがあります。ただし、これはクイニョンの市街地ではなく郊外での話です。その郊外ではウニが1つ100円もせず、ビールも1本40円ほどでした。
