ホーチミンのドンコイ通りは、サイゴン川のほとりから始まります。その1番地に建っているのが、ホテル・マジェスティック・サイゴンです。街に出るたび前を通っていて、前から一度泊まってみたいと思っていました。
先日、川に面したリバービューの部屋を取って泊まってきたので、その記録です。
先に結論を書きます。部屋は、正直ふつうでした。それでも私は、人に聞かれたら泊まってみるといいと答えると思います。その理由を、順番に書いていきます。
泊まる前に、ひとつ勘違いをしていました
私はここを、サイゴンでいちばん古いホテルだと思い込んでいました。誰かにそう聞いたわけでもなく、勝手にそう思っていた。泊まったあとで調べたら、違いました。
サイゴンで現存する最も古いホテルは、同じドンコイ通りにあるコンチネンタルです。開業は1880年。マジェスティックの開業は1925年なので、45年ちがいます。3番目のグランド・ホテル・サイゴンが1930年で、この3軒が「サイゴンの老舗3館」としてまとめて語られています。
| ホテル | 開業 | 通り |
|---|---|---|
| コンチネンタル・サイゴン | 1880年 | ドンコイ通り |
| マジェスティック・サイゴン | 1925年 | ドンコイ通り(川側の起点) |
| グランド・ホテル・サイゴン | 1930年 | ドンコイ通り |
面白いのは、マジェスティック自身も「最古」とは名乗っていないことです。公式サイトを読むと、使われているのは heritage、historic、landmark といった言葉ばかりで、oldest という単語はどこにも出てきません。
そのかわり、はっきり「初」と書いている実績がひとつだけあります。2007年に、ベトナム資本・ベトナム運営のホテルとして初めて5つ星に認定された、というものです。このホテルが誇りにしているのは、古さではなくそちらのようです。
もともとは1925年に、当時サイゴンでいちばんの資産家だった華人の実業家が建てたホテルでした。開業時は3階建てで44室。その後の増築を経て、いまは175室あります。2025年にちょうど100周年を迎えたところでした。
先にひとつ書いておくと、この勘違いに気づいても、泊まった感想は変わりませんでした。私がここで受け取ったのは順位ではなく、朝に川を見ながらコーヒーを飲む時間と、1925年からこの角に建っている建物のなかにいるという感覚のほうだったからです。この記事は、その2つに払う価値があるかどうかの話になります。
ドンコイ通りとトンドゥックタン通りの角。2025年の行政区再編で、住所の「1区」はサイゴン坊に変わりました
部屋は、正直ふつうでした
今回取ったのは、川に向いたバルコニー付きのリバービューの部屋です。公式ではセンチュリー・リバー・デラックスという名前になっています。日本の旅行サイトだと「コロニアル・リバーデラックス」という古い名前で載っていることがありますが、いまはこの呼び方です。
その部屋に入っての第一印象が、ふつう、でした。広さも設備も、5つ星として不足はありません。ただ、写真だけ見せられて「どこのホテルか当ててください」と言われたら、私は答えられなかったと思います。ベッドと机とソファがあって、きれいに整えられている。寝室そのものは、どこにでもある造りでした。
部屋のなかで場所が特定できるのは、2箇所だけです。ひとつがバスルームで、昔ながらの意匠を残しつつ清潔に保たれている。ここは古いホテルに泊まっている実感がありました。もうひとつがバルコニーです。つまりこの部屋の個性は、内装ではなく、水回りと外に出たところに寄っている。
ベッドと、細かいもてなし
部屋そのものより良かったのが、寝るための道具立てです。ベッドは少し柔らかめで、寝心地のいいタイプでした。枕が2種類用意されていたので、好みのほうを選べます。
部屋にはフルーツが置かれていて、滞在中にクッキーの差し入れもありました。この手のものは形式的なことも多いのですが、部屋が素っ気ないぶん、こういう気配りのほうが印象に残りました。
| 部屋のつくり | 5つ星として不足はないが、内装に強い個性はない |
|---|---|
| バスルーム | 昔ながらの意匠が残っていて、清潔。ここは雰囲気がある |
| ベッド | 少し柔らかめ。寝心地はよい |
| 枕 | 2種類から選べる |
| 室内サービス | フルーツの用意と、クッキーの差し入れ |
景色は、この部屋を選ぶ理由になります
リバービューを取った価値は、はっきりありました。バルコニーからサイゴン川が一望できて、川にかかる橋まで見えます。日が落ちてからの眺めがとくによくて、この部屋にした理由はこれで足りると思いました。
ひとつ補足すると、ホテルは川に直接面しているわけではありません。建物と水面のあいだにトンドゥックタン通りと、バクダン埠頭の遊歩道が挟まっています。「窓の下がすぐ川」という景色を想像していると、少し違います。
交通量は多い。でも、思ったより気になりませんでした
泊まる前にいちばん心配していたのが、音でした。ホテルの前を走るトンドゥックタン通りは、市の中心を川沿いに貫く幹線で、交通量がとにかく多い。実際、部屋には耳栓が用意されていました。ホテル側も承知しているということだと思います。
ところが、泊まってみるとそこまで気になりませんでした。夜11時を境にバイクの量がはっきり減って、そこから静かになります。夜中はバスやトラックが通るので、クラクションは相応に響きます。ただ、眠れないというほどではありませんでした。
音に敏感な方は川側ではない部屋を選ぶ手もありますが、それだと景色という最大の利点を手放すことになります。私は耳栓を使わずに眠れたので、川側でよかったと思っています。
いちばん良かったのは、朝食でした
この宿泊でいちばん満足したのは、部屋でも景色でもなく朝食です。
2泊して、2回とも違う皿が出てきた
フォーやバインミーといった定番はもちろんありました。それに加えてサラダ系が豊富で、これは朝から重いものを食べたくない日に効きます。
感心したのは、2回の朝食で料理が入れ替わっていたことでした。1日目にトマトを炒めたものが出て、2日目はそれがナスに替わっている。ベーコンやポテトのような洋のものも、ベトナム料理も、同じように動いていました。2泊しか見ていないので言い切れませんが、連泊しても飽きないように組まれているのだと思います。
味噌汁が置いてあったのも印象的でした。これは、日本人の宿泊客がそれなりに多いということだと思います。
カフェとして使える
もうひとつ良かったのが、飲みものの種類です。コーヒー、ジュース、それにベトナムコーヒーまで揃っていて、朝食の席をそのままカフェとして使えました。
川を眺めながら、時間を気にせずコーヒーを飲む。これは、ここに泊まった人だけができることだと思います。マジェスティックの価値は、部屋よりもこの時間のほうにありました。
館内は、意外とあっさりしています
チェックインのとき、ロビーでジュースを出してもらえました。対応は落ち着いていて、特に不満はありません。
ただ、館内の設備そのものは多くありません。プールは1階の中庭にひとつあるだけで、規模も小さめです。建物に囲まれているので、泳ぎながら景色を眺めるという性格のものではありませんでした。
飲食は、階ごとに分かれています。私が使ったのは朝食とロビー階だけですが、上の階にはバーもあって、次に泊まることがあれば試してみようと思っています。
| 施設 | 場所 | 営業時間 |
|---|---|---|
| Catinat Lounge | ロビー階 | 7:00〜22:00 |
| Breeze Sky Bar | 5階 | 24時間 |
| Saigon House(ベトナム料理) | 7階 | 6:00〜14:00 |
| M Bar | 新館8階 | 15:00〜24:00(20時からライブ演奏) |
売店のようなものも、歩いていて見当たりませんでした。あとで公式サイトを見たら、オリジナルのTシャツや磁器のティーセットを扱うページがあって、注文はフロント経由と書かれていました。売り場として構えているわけではない、ということのようです。
ひとつだけ、はっきりした不便があります
宿泊そのものではなく、外に出るときの話です。ホテルの前の道路がいつも混んでいて、Grabなどの配車アプリで車をつかまえるのに苦労しました。
待っていてもなかなか来ないので、少し歩いて別のエリアまで移動してから呼ぶほうが早い、という結論になりました。これは私が泊まった2泊のあいだの話で、曜日や時間帯によっては違うかもしれません。ただ、少なくとも車を呼ぶときは、この手間を見込んでおいたほうがいいと思います。アプリ自体の使い方はベトナムの配車アプリ使い方ガイドに書きました。
立地そのものは良く、コンビニは徒歩3分ほど。メトロ1号線のオペラハウス駅も、ドンコイ通りを5分ほど歩けば着きます。不便なのは車を呼ぶときだけでした。
この記事を書くために調べていて、自分が勘違いしていたことに気づきました。私はマジェスティックをベトナム最古のホテルだと思って泊まりに行ったのですが、最古はコンチネンタルで、45年も差がありました。ホテル自身も「最古」とは一度も名乗っていない。勝手に物語を足していたのは、私のほうでした。
ただ、それを知っても評価は変わりませんでした。朝、川を見ながらコーヒーを飲んでいる時間に、「ここは何番目に古いのか」は一度も頭に浮かばなかったからです。大事だったのは、1925年からこの角に建っている建物のなかに、いま自分がいるという事実のほうでした。
部屋は普通です。プールは小さいし、売店もありません。設備を数えていくと、同じ金額でもっと快適なホテルは市内にいくらでもあります。それでも人にすすめたくなるのは、2日とも朝食のあとに席を立てなくなったからです。コーヒーを注ぎ足して、川を見ながらしばらく座っていました。その時間の分だけは、ほかで買えないと思っています。
それで、泊まる価値はどこにあるか
総括すると、ゴージャスな体験を求めて行く場所ではありません。驚くようなことは、正直なにも起きませんでした。
はっきり分けるなら、こうなります。朝に川を見ながら過ごす時間と、1925年からこの角に建っている建物に泊まること。この2つにお金を払える人には、すすめます。逆に、客室の豪華さや設備の新しさを基準に選ぶ人には、同じ金額でもっと満足できるホテルが市内にいくらでもあります。そこは正直に書いておきます。
| 期待していいところ | 期待しないほうがいいところ |
|---|---|
| サイゴン川を見下ろすバルコニーと夜景 | 客室の内装そのもの |
| 日替わりで飽きない朝食と、飲みものの種類 | プール(1階の中庭にある小さなもの) |
| ドンコイ通りの起点という立地 | 館内のショップや娯楽設備 |
| 寝心地のよいベッドと枕の選択 | ホテル前で配車アプリを呼ぶこと |
私は、行ってよかったと思っています。いちばん覚えているのは部屋ではなく、2日とも朝食のあとにコーヒーを注ぎ足して、川を見ながらしばらく座っていた時間でした。
このときの宿泊料金についてはホーチミンの物価コラムに実額を書きました。エリアごとの宿の選び方はホーチミンのホテル、どの街に泊まる?にまとめてあります。
よくある質問
- マジェスティックはベトナム最古のホテルですか?
-
違います。現存するサイゴン最古のホテルは1880年開業のコンチネンタル・サイゴンで、マジェスティックの開業は1925年です。ホテル自身も公式サイトで「最古」とは名乗っておらず、掲げているのは2007年にベトナム運営のホテルとして初めて5つ星に認定された、という実績のほうです。
- リバービューの部屋は取る価値がありますか?
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あります。バルコニーからサイゴン川と橋が見えて、夜景がとくによかったです。ただし建物と水面のあいだにはトンドゥックタン通りと遊歩道が挟まるので、「窓の下がすぐ川」という景色ではありません。
- 前の道路がうるさくて眠れませんか?
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交通量は多く、部屋にも耳栓が用意されています。ただ、夜11時を境にバイクが減って静かになるので、私は耳栓なしで眠れました。夜中はバスやトラックのクラクションが響きますが、眠れないほどではありませんでした。
- 朝食はどうでしたか?
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この滞在でいちばん満足した部分でした。フォーやバインミーの定番に加えてサラダが豊富で、料理が毎日入れ替わるので連泊しても飽きません。味噌汁もありました。コーヒーやベトナムコーヒーの種類が多く、川を見ながらカフェのように使えます。
- 立地の不便な点はありますか?
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ホテル前の道路が混んでいて、配車アプリで車をつかまえにくいことです。少し歩いて別のエリアから呼ぶほうが早く着きました。それ以外は、コンビニが徒歩3分、メトロのオペラハウス駅まで徒歩5分ほどで、不便はありません。
