サイゴンで話題の巨大図書館は住宅販売の拠点、実物の蔵書は約500点

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ホーチミン市で「韓国の図書館のような空間がある」と拡散した場所へ、雨のなかバイクで12km以上を走った20代の男性が、本を1冊も見つけられないまま引き返した。ベトナムのダントリ紙が9月25日に載せたルポの話だ。天井まで届く棚に本が詰まった写真が出回っていたが、現地はウォウセンター(WOW Center)という住宅プロジェクトの紹介拠点で、高い棚の本の大半は固定された装飾用の模型だった。入場は無料だが、喫茶も読書席もない。写真だけで行き先を決めると、片道1時間が空振りになる。

目次

12km走った男性と、30分で引き返したハノイからの旅行者

動画を見てバイクで1時間、着いたのは不動産の紹介センター

ダントリ紙の取材に答えたのは、2000年生まれのミン・ティエンさん(ゴーヴァップ坊在住)。読書好きで、世界の有名な図書館を訪ねたいと思っていた。「ホーチミン市のなかの韓国風図書館」という動画で広い書架を見て、本を選んで読みコーヒーを飲めると考えたという。実際にはバイクで1時間近く、雨のなかを12km以上走って着いた先は不動産プロジェクトの紹介センターで、喫茶も読書席もなかった。「不動産を買う予定はないし、本も見つからない。十数kmの移動は無意味だった。最初に調べてから行くべきだった」と同紙に語っている。

ハノイから来た夫婦は30分足らずで引き上げた

夫と3日間の旅行でホーチミン市を訪れていたモチさんは、読書スペース付きのカフェだと思い込んでいた。旅行2日目、旧1区のあたりから30分ほどで到着している。「来る前は、ここがカフェではないと知らなかった。遠くまで来たのに頼める飲み物も菓子もなく、本もない」。ただ、中に入ってからは内装を気に入り、記念に写真を撮った。落胆の主因は出発前の思い違いにあったと本人が話し、模型の本を見てがっかりする人がいる理由も分かるという。見学は30分足らずで終わった。

高さ約20mの吹き抜けと、棚に固定された模型の本

運営側は展示エリアの高さを約20mと説明している

数字の出どころは分けて見たい。「20m」は同紙の取材に応じたウォウセンター代表グエン・ディン・ロン氏の説明で、展示エリアの高さを指す。天井まで届く高い棚の本は、その大半が装飾用の模型だと同氏が認めている。ダントリ紙の記者も現場を確認し、写真のキャプションに棚の本の多くが模型で固定されていると書いている。つまり「20mの本棚がまるごと偽物」ではなく、吹き抜けの高さが約20m、手の届かない棚は模型が中心、という二つの事実が重なっている。

実物の蔵書は約500点、2,000点超を手の届く高さに足す計画

ロン氏によると、この空間にある実物の蔵書は約500点(原文は đầu sách で書名を数える言い方)。今後2,000点超を追加し、来場者が手を伸ばせる高さに置く予定だという。開発主体のTTジェネシスが9月24日に自社サイトへ出した告知も、来客用の大広間を「天井に届く巨大な書架を模した、象徴性のある建築上の手法」と書き、図書館そのものだという説明はしていない。書架を模した大広間があるのは、物件自体が「日本式の知識レジデンス」として売り出されているからだ。ロン氏は接客エリアを韓国のスターフィールド図書館から着想したと同紙に説明しており、記者も同じ連想を書いている。

「図書館」「知識の博物館」の呼び名はSNSだけの産物ではない

拡散した呼び名と、運営側が使っている正式名称

ダントリ紙は、SNS上の一部アカウントがこの場所を「巨大図書館」「ホーチミンの韓国図書館」「知識の博物館」と呼んでいると書く。ただし「知識の博物館」は運営側の名乗りでもある。VnExpressが9月24日に載せた不動産面の記事はこの空間を「WOW Center – Bảo tàng Tri thức(知識の博物館)」と表記し、TTジェネシス公式サイトの英語ニュース欄にも「The Museum of Knowledge」の名が並ぶ。誤解の原因を投稿者側だけに寄せると、経緯を取り違える。呼び名が独り歩きしやすい内装と名称が先にあり、その上に拡散が乗った順序だ。

初日に1,000人超が来て、受け入れ人員を3倍にした

TTジェネシスの告知によれば、ウォウセンターは9月19日に開業し、初日だけで1,000人超の来場があった。ロン氏も、開業直後に客足が急に伸びて接客が追いつかなかったと認め、対応と清掃の人員を3倍に増やしたと話す。もともとこの空間は、営業担当者が顧客に物件を説明するために設計された。カフェと間違われたことに同氏自身が驚いており、物件を見に来た客が撮影してSNSへ上げた写真が誤解の起点になったとみている。今後は物件の模型とモデルルームを増やし、紹介拠点だと判別しやすくする方針も示した。

項目 内容 出どころ
開業日 2026年9月19日 TTジェネシス公式告知
初日の来場 1,000人超 同上
施設面積 約2,500m² 公式・VnExpress
展示エリアの高さ 約20m 代表ロン氏(Dân trí)
高い棚の本 大半が装飾用の模型で棚に固定 ロン氏と同紙記者の確認
実物の蔵書 約500点 ロン氏
追加予定 2,000点超を手の届く高さに ロン氏
モデルルーム 10月3日公開予定 TTジェネシス公式告知

販売拠点を体験施設にする動きが、ホーチミンで広がっている

日本の3社が入る共同開発、フーミーフン隣の1.9ha

ウォウセンターが建つTTジェネシスは分譲マンションで、公式サイトとVnExpressによれば、開発はTTキャピタル(ベトナム)、ベトマックス・キャピタル(シンガポール)、そして日本の3社――大和ハウスグループのコスモスイニシア、ヒノキヤグループ、コテラス――の共同事業だ。敷地は約1.9ha、30階建て2棟に約1,438戸で、フーミーフン地区に隣接する。公式サイトの記事一覧ではこの日系連合にとってベトナムで2件目、VnExpressは市南部エリアでは最初の案件だと書いている。ウォウセンター自体は約2,500m²で、曲面LEDスクリーン、3Dマッピング上映室、大型模型、大広間と続く。

モデルルームの印象だけで買わないよう、専門家が釘を刺している

販売会場を展示空間に変える動きは、この1社に限らない。VnExpressが9月24日に出した別の記事は、ナムロンやマスタライズ・ホームズなどの例を並べる。DKRAコンサルティングのヴォー・ホン・タン副所長は、こうした空間への投資が数百万ドル、あるいは数千億ドン規模に達しうると話す。同記事はその実例として、タンロイ・グループの体験センター(約300万ドル)とマスタライズ・ホームズのグランドマリーナ・ギャラリー(400 tỷ ドン=4,000億ドン)を挙げる。ウォウセンターの投資額は、本稿で確認した資料には出ていない。同副所長は買い手に対し、見栄えよく整えた空間の印象だけで判断せず、面積・設計・素材・設備を契約の約束と突き合わせるよう促す。

行く前に確認したい開館時間と場所

場所はダオスーティック住宅地、中心部からは30分〜1時間

所在地はホーチミン市南部のダオスーティック住宅地(KDC Đào Sư Tích)にあるTTジェネシスの敷地内で、ダントリ紙はこの一帯をニャーベー(Nhà Bè)と書く。公式サイトも自社イベントの告知で会場をこの住宅地として表記している。ダントリ紙に出てくる移動時間は、ゴーヴァップ坊からバイクで1時間近く・12km以上、旧1区からは約30分で、ついでに寄れる距離ではない。中心部の移動時間そのものも読みにくくなっており、地下鉄2号線タオダン駅の工事でカックマンタン8月通りとグエン・ティ・ミン・カイ通りが3年以上にわたって一方通行に切り替わる。南へ抜ける所要は出発時刻でかなり振れる。

開館は8時から20時、入場は無料で事前登録だけ

開館時間・料金・入場条件は、いずれもロン氏がダントリ紙に語った内容が出どころだ。同氏は「8時から20時まで開けており、入場料はもらっていない。入場前に登録してもらうだけだ。ただ、写真スポットやカフェだと誤解されれば、本を探しに来た人やコーヒーを飲みたい人の失望は避けられない」と話す。

確認項目 内容
名称 WOW Center(TT Genesis の敷地内)
所在地 ダオスーティック住宅地(市南部)
開館時間 8:00〜20:00
入場料 無料
入場条件 入場前に登録
性格 住宅プロジェクトの紹介・商談拠点

時間・料金・入場条件はロン氏、所在地と性格はTTジェネシス公式による。

見られるのは書架を模した大広間、住宅の模型と3Dマッピングの上映で、飲み物や軽食の提供と読書用の席はない。似た思い違いは他の施設でも起きる。9月22日にホーチミン市アンラック坊で開いた日本酒のショールーム「Tasu+ Fine Sake & Beyond」も、展示・試飲会・資格講座を並べた場所で、一杯飲みに行くバーではない。名前からは用途が伝わりにくい。

写真と実体が一致する行き先なら、同じ市内でもタンディン地区のように、ピンクの教会の裏手に路地の食堂と個人経営のカフェが続く一角のほうが移動時間に見合う。ウォウセンターへ行くなら、出発前に入場登録を済ませ、「本は読めない・飲み物は出ない」前提に切り替えて、写真を撮る目的に絞り30分の枠を取る。モデルルームは10月3日公開予定とされており、その後なら住まいを見る目的が加わる。

この記事で確認した報道と発表

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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