ベトナム料理を語るうえで絶対に外せない調味料、それが「ヌクマム」です。
日本の醤油のように、ベトナムの家庭では毎日の食卓に欠かせない存在で、炒め物や煮込み料理、つけダレとあらゆる場面で活躍します。
この記事では、ヌクマムの基礎知識から実践的な使い方、タイのナンプラーとの違いを詳しくご紹介します。
日本人旅行者ヌクマムは気になっていましたが、まだ試していません…。



知らない調味料を購入するのはハードルが高いです。



魚醤のような味わいでベトナム料理にはぴったりです!特徴を知り、まずはレストランで少量から試してみましょう。
ヌクマムとは?ベトナムでは定番の調味料


ヌクマム(Nuoc mam)は、ベトナムで作られる魚醤のこと。木樽に小魚と塩を漬け込み、4ヶ月から1年ほどかけて発酵・熟成させて作ります。



スーパーで家庭用として販売されているヌクマムは500mlで55,000~150ドン(約330~900円)です。
原料と製法
主な原料は、カーコム(Ca com)と呼ばれるカタクチイワシ科の魚です。この小魚を塩と一緒にカメに詰め込み、魚の内臓に含まれる酵素を利用して自然発酵させていきます。
時間が経つにつれて、魚の骨や体は徐々に分解され、カメの底に沈殿物として沈んでいきます。そしてカメの上部に残った液体がヌクマムとなります。
名産地として知られる場所
ベトナム国内でヌクマムの名産地として知られているのは、北部のカットハイ、南部のニャチャンやファンティエット、そしてフーコック島です。
魚を原料にしていることもあり、ベトナムの中でも沿岸地域での生産が盛んなようです。



特にフーコック島産のヌクマムは最高級品として国際的にも評価されています。
「⁰N」表示が示す旨味度数


商品によっては「40⁰N」といった表示があります。これは旨味度数(ヌクマム中の窒素含有量)を示しています。
数字が高ければ高いほど、香りと旨味が強く、価格も高くなります。一般的なスーパーには35~40⁰Nのものが多く並んでいます。
度数の低いものは加熱調理用に、高いものはつけダレとして水などを加えて使うのが基本です。
他の調味料との違い
発酵した魚や海老を使った調味料はほかにもあります。ここではナンプラーとマムトムの違いをみていきましょう。
ナンプラーとの違い


ヌクマムもナンプラーも、基本的にはカタクチイワシと塩を原料としていますが、製法やその他の原料が異なります。
ヌクマムは魚に対する塩の割合が少なく、発酵期間も比較的短め。一方、ナンプラーは発酵中に少量の砂糖やカラメルを加えることが多く、熟成期間もやや長めです。
味はナンプラーのほうがやや甘めに感じられるため料理によって使い分けましょう。
ベトナムの発酵調味料といえばマムトムも有名


ベトナムには、ヌクマムのほかに「マムトム(Mam tom)」と呼ばれる発酵調味料もあります。
マムトムは、小さな海老を塩漬けにして発酵させたソースです。
見た目は灰色から紫がかった色をしており、とろりとした質感と強い香りが特徴。初めて見ると少し驚くかもしれませんが、海老の旨味が凝縮された濃厚な味わいです。
代表的な料理が、ハノイ名物のブンダウマムトム(Bun đau mam tom)。米麺や揚げ豆腐、肉などをマムトムにつけて食べます。
ヌクマムの使い方:基本から応用まで
ヌクマムの魅力は、その使い勝手の良さにあります。日本の醤油のように、さまざまな場面で活躍します。
つけダレとして楽しむ
生春巻きや揚げ春巻き、麺料理のブンチャーのタレとして楽しめます。
生春巻きのつけダレは「ヌクチャム」とよばれます。
ヌクマムに刻み唐辛子とにんにく、ライムの絞り汁、水、砂糖を混ぜ合わせるだけ。甘酸っぱくピリッとした味わいが、料理をより引き立ててくれます。
加熱調理での活用法
炒め物や煮込み料理にも、ヌクマムは大活躍します。
例えば手羽先のヌクマム風味揚げは、ヌクマムなどで下味をつけてから揚げるドライなタイプと、素揚げしてからヌクマムソースに絡めるしっとりタイプがあります。どちらもご飯のおかずにも、お酒のつまみにもなる絶品です。
ベトナムの家庭料理の定番、揚げ豆腐のネギソースがけでも、味の決め手としてヌクマムを使用しています。
ヌクマムを使った定番ベトナム料理


ヌクマムが活躍する、代表的なベトナム料理をいくつかご紹介しましょう。
ブンチャー


ブンとよばれる米粉麺と野菜、グリルした肉を一緒に食べるベトナム料理は、甘じょっぱいたれが特徴です。
店舗にもよりますが、ブンチャーのタレは、ヌクマムをベースに、酢・砂糖・にんにく・唐辛子を加えて作られます。
フォー(Pho)


ベトナムを代表する麺料理、フォー。米粉からできた平打ちの麺に、鶏肉や牛肉からダシを取ったスープを合わせます。
卓上に置かれたヌクマムを少し加えることで、自分好みの味に調整できます。塩味や旨味をプラスしたいときに、ぜひ試してみてください。


バインセオ(Banh xeo)


ベトナム風お好み焼きとも呼ばれるバインセオ。米粉とココナッツパウダーで作った生地に、豚肉ともやしなどの具材を包んで焼き上げます。
こちらもヌクマムベースのつけダレ「ヌクチャム」と一緒にいただきます。レモン汁と砂糖、にんにく、唐辛子を加えた甘酸っぱいタレが、パリッとした生地と絶妙にマッチします。
バインミー(Banh mì)
バインミーの味の決め手となるのが、ヌクマムを使ったつけダレやマヨネーズ。レバーペーストと組み合わせることで、複雑で奥深い味わいが生まれます。
暑い国で生まれた料理だけあって、日本の夏にもぴったり。生野菜と肉類がバランスよく組み合わされているのも魅力ですね。
お土産としてのヌクマム:購入と持ち帰りの注意点
ヌクマムをお土産に買って帰る場合は注意が必要です。
機内持ち込みは禁止
ヌクマムは香りが強いため、機内への持ち込みが禁止されています。荷物チェックで没収されてしまうケースも少なくありません。
保存方法
開封後のヌクマムは、冷蔵庫で保存するのが基本です。発酵食品なので比較的日持ちしますが、風味を保つためには早めに使い切ることをおすすめします。
まとめ:ヌクマムで広がるベトナム料理の世界
ヌクマムは、ベトナム料理に欠かせない調味料です。
カタクチイワシと塩を発酵させて作られるこの魚醤は、力強い旨味と独特の香りが特徴。タイのナンプラーと似ているようで、実は製法も味わいも異なります。
つけダレとして、加熱調理の調味料として、そして料理の隠し味として。使い方は無限大です。最初は独特の香りに戸惑うかもしれませんが、不思議なことに、何度か使っているうちに虜になってしまう魅力があります。



ベトナム料理の奥深さを知りたい方、新しい調味料に挑戦したい方はぜひ一度、ヌクマムを手に取ってみてください。


