ベトナム旅行を計画しているとき、多くの人が気になるのが言葉の問題です。
「英語だけで大丈夫かな?」「現地の人とコミュニケーションは取れるだろうか?」そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。実際のところ、ベトナムでの英語事情は場所や状況によって大きく異なります。都市部のホテルでは流暢な英語が通じる一方、地方の屋台では身振り手振りが頼りになることも。
この記事では、ベトナムの英語事情を場所別・状況別に詳しく解説します。どこで英語が通じやすいのか、どんな場面で困りやすいのか、そして英語が通じないときにどう対処すればいいのか。実践的な情報をお届けします。
ベトナムの英語能力は実際どのくらい?
まず知っておきたいのが、ベトナム全体の英語レベルです。
EF EPI(英語能力指数)2025では、ベトナムは123カ国・地域中64位、スコア500で「Moderate」に分類されています。ただし、これは2024年にオンラインのEF SETを受験した人を基にする指標です。インターネットを使わない人や受験に関心のない人は含まれにくく、旅行先で会う個人の会話力を予測する数字ではありません。
国同士の順位だけで「通じる・通じない」を決めず、都市、職種、年齢、相手の経験、場面の専門性で差があると考える方が実用的です。
EF EPI 2025でも地域・都市別の差は見られますが、都市部なら誰にでも英語が通じ、地方なら通じないという意味ではありません。観光業の経験や、扱う用件が日常会話か医療・法律かによっても難しさは変わります。
学校で英語を学んだ経験があっても、会話の使用頻度は人それぞれです。教育制度の説明から、目の前のスタッフが旅行者向けの英語を話せると推測しないようにします。
出典 YOLO JAPAN「ベトナム人に英語は通じる?話せる?英語力や発音の特徴、英語教育を分かりやすく解説」(2025年4月)より作成
都市部とリゾート地:英語が通じやすい場所
ハノイ・ホーチミンの都市エリア
首都ハノイと商業都市ホーチミンでは、比較的英語が通じやすい環境が整っています。
ホテルや旅行者向け飲食店では英語表記や英語対応が見つかりやすいものの、スタッフ全員が同じ水準とは限りません。予約番号、氏名、日付、金額は画面や紙でも示し、復唱してもらうと行き違いを減らせます。
ただし、ローカル食堂や屋台になると状況は一変します。
英語メニューがない店もあります。料理写真やベトナム語名を指し、個数とVND価格を画面で確認します。他のお客さんの料理を指すときは、相手の食事や撮影を妨げない配慮も必要です。
ダナン・ホイアンの観光地
リゾート地として人気のダナンやホイアンでは、観光業に携わる人々の英語力は比較的高めです。
リゾートホテルのスタッフは流暢な英語を話せることが多く、観光案内やアクティビティの予約もスムーズに進められます。カフェやレストランでも基本的な英語でのやり取りは可能でしょう。しかし、タクシードライバーやローカル市場の店員となると、英語が通じないケースが増えてきます。
特に目的地を伝える際、発音の違いで意思疎通が難しくなることがあります。Googleマップや紙に書いた住所を見せる方が確実です。
英語が通じにくい場所と状況
警察署や役所などの公的機関
警察、入管、役所、医療機関では、日常会話より正確な説明が必要です。
英語対応の有無は窓口や担当者で異なります。重要な手続きは、資格や守秘義務を確認できる通訳、保険会社、宿泊先、旅行会社、在外公館などへ連絡し、機械翻訳だけで署名や同意をしないでください。
盗難や紛失の届け出、ビザ関連の手続きなど、重要な用件がある場合は事前に日本語対応可能な旅行会社やホテルのコンシェルジュに相談しておくと安心です。
地方エリアと農村部
都市から数時間移動した地方エリアでは、英語が通じる可能性はぐっと下がります。
観光地化されていない場所ほど、言葉の壁は高くなります。ただし、人との距離は近く、身振りや表情で意思疎通ができる場面も多いのが救いです。地方を訪れる際は、基本的なベトナム語フレーズを覚えておくと、現地の人々との交流がより豊かになるでしょう。
タクシーとGrabドライバー
タクシーや配車アプリの運転手も、英語対応は人によって異なります。
目的地を英語で伝えても、発音の違いで理解してもらえないことが頻繁にあります。最も確実な方法は、Googleマップで目的地を表示して画面を見せること。住所をベトナム語で書いたメモを用意しておくのも効果的です。
ベトナム人の英語発音の特徴を知っておこう
英語が通じる場所でも、聞き取りに苦労することがあります。
聞き取りにくさは、話者双方の発音、語彙、速度、騒音、通信状態など複数の要因で起こります。国籍で一つの発音に括らず、確認方法を増やす方が役立ちます。
子音を省略する傾向
単語が聞き取れなければ、短い文で言い換え、固有名詞や数字を文字で示します。聞き返すときは「ゆっくり話してください」「書いてください」と具体的に頼みます。
「tr」の発音が「チャ」に
地名や駅名は英語読みとベトナム語読みで音が違うことがあります。
音だけで推測せず、地図のピン、正式なベトナム語表記、施設写真を併用してください。
Sの発音が不明瞭
個数、日付、時間、金額は文脈で補わず、画面に入力して双方で確認します。
ゆっくり、短く、一度に一つの用件を伝えます。大声にするより、別の単語へ言い換え、文字や画像を添える方が伝わりやすくなります。
英語が通じないときの実践的対処法
翻訳アプリの賢い使い方
Google翻訳やその他の翻訳アプリは強力なツールです。
ただし、ハノイやホーチミンではスマホのひったくり被害が頻発しています。怪しさを感じたら、街中でスマホを取り出すのは避けた方が賢明です。安全な場所、例えばホテルのロビーやレストランの中で使用するようにしましょう。
アナログツールの活用
実は、アナログな方法が最も確実だったりします。
- 日本語表記付きのベトナム語フレーズブック
- ガイドブックに付属の指差し会話表
- あらかじめメモ帳に書いた住所やメニュー名
これらを準備しておくと、スマホが使えない状況でも安心です。特に料理名や住所は、事前にベトナム語表記をスクリーンショットやメモに残しておくと便利でしょう。
ジェスチャーと笑顔の力
ジェスチャーや穏やかな表情は補助になりますが、意味が文化によって異なることもあります。金額、同意、医療、契約は表情だけで判断しません。
相手の性格を国籍で一般化せず、急かさない、分からないまま同意しない、伝わった内容を双方で確認する、という手順を意識します。
覚えておきたい基本的なベトナム語フレーズ
最低限のベトナム語を覚えておくと、現地の人々との距離がぐっと縮まります。
挨拶と基本表現
- Xin chào(シンチャオ):こんにちは(万能な挨拶)
- Cảm ơn(カムオン):ありがとう
- Tôi không hiểu(トイ・コン・ヒウ):わかりません
この3つだけでも覚えておくと、印象が大きく変わります。
レストランと買い物で使えるフレーズ
- Cho tôi(チョー・トイ):〜をください(料理名の前に付ける)
- Tính tiền(ティンティエン):お会計お願いします
これらのフレーズを使うだけで、ローカル食堂での注文がスムーズになります。
数字の基本(0〜10)
値段交渉や数量を伝える際に役立ちます。
- 0:không(コン)
- 1:một(モッ)
- 2:hai(ハイ)
- 3:ba(バー)
- 4:bốn(ボン)
- 5:năm(ナム)
- 6:sáu(サウ)
- 7:bảy(バイ)
- 8:tám(タム)
- 9:chín(チン)
- 10:mười(ムォイ)
完璧な発音でなくても、数字を覚えておくと市場での買い物が楽しくなります。
ベトナム旅行を成功させるための心構え
大切なのは、英語だけに頼らず確認手段を複数用意することです。
この心構えがあれば、英語が通じたときは嬉しいサプライズになりますし、通じなくても慌てることはありません。ベトナムを旅すると、効率よく回ろうとするほど、魅力を取りこぼしてしまうことがあります。予定通りにいかないこと、思い通りにならないことが多いからこそ、印象に残る場面が生まれるのです。
道に迷う、予定がずれる、偶然誰かと話す。その積み重ねが、ベトナムという国への理解を深めていきます。
言葉の壁は確かに存在しますが、それを乗り越えようとする過程こそが旅の醍醐味。完璧なコミュニケーションよりも、誠意と笑顔を持って接することが、ベトナムでの素晴らしい体験につながります。
英語が通じない場面の確認手順
- 住所はベトナム語表記、地図ピン、入口写真の3点を用意する
- 金額、通貨、個数、日付、時間は画面に文字で入力して確認する
- 翻訳データを事前保存し、路上でロック解除した端末を相手に渡さない
- 食物アレルギーや持病は、ベトナム語の説明カードを準備する
- 警察・入管・医療・契約では、適切な通訳や保険会社、在外公館へ連絡する
- 「分かったつもり」を避け、最後に合意内容をもう一度示す
旅行会話で大切なのは流暢さより、重要事項を間違えずに共有することです。緊急連絡先、宿泊先住所、保険証券番号をオフラインでも見られる形で保存しておくと、通信障害時にも動きやすくなります。
まとめ:準備と柔軟性が鍵
ベトナムでの英語事情は、場所と状況によって大きく異なります。
都市部の観光地やホテルでは英語が通じやすい一方、地方やローカルな場所では通じないことが多いのが現実です。重要なのは、「通じない前提」で準備をしておくこと。翻訳アプリ、指差し会話帳、基本的なベトナム語フレーズ、そして何より柔軟な姿勢。これらがあれば、言葉の壁を乗り越えて、ベトナムの魅力を存分に味わえるはずです。
完璧なコミュニケーションを目指すのではなく、不完全さを楽しむ。それがベトナム旅行を成功させる秘訣です。



