涙の激辛7段階ラーメン、真の元祖はカントーのOmegaだった

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汗と涙をぬぐいながら真っ赤なスープをすする——ベトナムのSNSでおなじみになった「7段階の激辛麺(ミーカイ)」。その火付け役といえば俳優クオック・チュオン氏が手がけた「Sasin(サシン)」の名がまず挙がる。ところが最近、ベトナムのTikTokユーザーが「本当の元祖はサシンではない」と投げかけ、ちょっとした論争になっている。名指しされたのは、メコンデルタの中心都市カントーで2012年から営業する「Mì cay Omega(ミーカイ・オメガ)」。サシンが全国区の人気になるより4年も早く、この激辛麺を出していたという。旅行者にとっては、行列の観光店ではない「もう一つの元祖」を探す楽しみが増えたことになる。

目次

そもそも「7段階の激辛麺」とは何か

ミーカイは、韓国のインスタント麺文化とベトナムの屋台麺が交わって生まれたローカルフードだ。太めの麺を唐辛子のきいた真っ赤なスープで煮込み、辛さを段階制で選べるのが最大の特徴。店によって刻みは違うが、目安は7段階で、下の段階は日本人でも心地よいピリ辛、上の段階になると一口ごとに汗が噴き出す「挑戦枠」になる。ベトナムでは、上限の辛さに挑む様子をスマホで撮り、涙目で食べる映像をFacebookやYouTubeに投稿する遊びが広がった。これがミーカイを一過性のブームから定番へと押し上げた原動力だった。

牛肉、エビ、イカ、エノキ、魚のすり身、揚げつみれ、ソーセージ、キムチ、ブロッコリー、漬け大根——こうした具材がたっぷり乗るのも、この麺が食事として満足度が高い理由だ。安く、腹が満ち、しかもSNS映えする。ベトナムの若者にとって、これほど三拍子そろった外食は多くない。

ブームの「顔」だったサシン

ミーカイが全国的に爆発したのは2016年から2018年ごろ。この波を象徴したのが、人気俳優クオック・チュオン氏が展開したサシンだった。芸能人ブランドという分かりやすさもあり、都市部の学生街を中心に店舗が一気に増え、「激辛麺=サシン」というイメージが定着した。多くの人にとって、ミーカイの原体験はサシンの赤いスープだったといっていい。

「元祖」を巡る問いかけ

この定説に一石を投じたのが、TikTokユーザーのクオイ氏だ。彼が示したのは単純な時系列だった。サシンが有名になる約4年前、2012年の時点で、カントーではオメガがすでに同じ7段階の激辛麺を出していた——という指摘である。全国区の知名度で「元祖」を名乗るのではなく、実際に先に始めていたのはどちらか、という問い直しだ。

面白いのは、オメガが今も細々と消えずに続いている点だ。青と黒を基調にした地味な外観で、きらびやかな芸能人ブランドと比べると目立たない。それでも味の評価は根強く、「スープが濃くて、こちらの方が好み」という声も少なくない。派手さで負けても、味と歴史で語れる店として再評価が始まっている。

数字で見るオメガ

項目 内容
創業 2012年(カントー)
サシンとの差 約4年早い
一杯の目安 約7万VND(約420円)
辛さ 7段階から選択
現在の展開 カントー、ホーチミン、ソクチャン、ヴィンロンなど南部各地

※円換算は1万VND≒60円で計算(2026年7月時点の目安、為替は変動)。7万VNDは全部乗せ(タップカム)の価格帯で、具材を絞ればもう少し安く食べられる。

旅行者はどう楽しむか

オメガの魅力は、観光地価格でない「地元の日常食」をそのまま味わえる点にある。一杯約420円という値付けは、日本のラーメンの半額以下だ。注文時に辛さの段階を聞かれるので、初めてなら2〜3段階から始めるのが無難。物足りなければ次回に一段上げればいい。いきなり最上級を頼んで完食できず残す、というのはベトナムでもよくある失敗で、無理に挑む必要はない。辛さに強い人でも、5段階あたりから一気に体感温度が変わるので、水とティッシュは手元に置いておきたい。

店を選ぶときは、地元客で埋まっているかどうかがひとつの目安になる。ベトナムでは、客のほとんどが地元民という店ほど当たりが多いという良店選びの黄金律があり、激辛麺の店探しでも同じことがいえる。芸能人の名前より、目の前の店内の混み具合を信じたほうが失敗は少ない。カントーはドリアンビュッフェのような産地ならではの食体験も濃い街なので、激辛麺と組み合わせて「メコンの食い倒れ」を一日で味わうのも楽しい。

ミーカイが映すベトナム外食のいま

この「元祖論争」がSNSで盛り上がること自体、ベトナムの外食シーンの成熟を映している。かつては「有名な店=正解」だったのが、いまは発祥や物語まで掘り下げて楽しむ層が育ってきた。日本でも、行列店より地元に愛される一杯を探す旅の面白さは知られている通りだ。ホーチミンでも地方の味を探して路地に分け入る食べ歩きが支持を集めており、ミーカイの再評価もその流れの一部といえる。派手なブランドの陰で静かに続いてきた店に光が当たるのは、旅する側にとっても悪くない変化だ。

まとめ

7段階の激辛麺は、サシンが広めたのは確かだ。ただ、実際に先に始めていたのはカントーのオメガだった——というのが今回の論点だ。次にメコンデルタを訪れる機会があれば、青と黒の地味な看板を探してみてほしい。一杯約420円、辛さは自分で選べる。涙を流すかどうかは、あなたの段階次第だ。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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