クイニョンのビーチ沿いに、赤い鳥居をくぐると露天風呂と本マグロの刺身が待つ日本風の施設がある。「ゆらぎ茶屋クイニョン(Yuragi Chaya Quy Nhon)」だ。2026年7月9日、ザライ省の観光当局がここを正式な「観光地」として認定した。日本人にとっては見慣れた鳥居や温泉が、ベトナム中部の海辺で公認の目的地になった格好で、クイニョン旅行にもう一つ立ち寄る理由が増えた。
ザライ省が7月9日に「観光地」認定
認定を出したのはザライ省の観光文化スポーツ当局で、2026年7月9日付。ゆらぎ茶屋クイニョンのほか、コンカキン国立公園、ハムホー・ロサアルバ、FLCクイニョン野生動物園なども同時に観光地として公認された。背景には、ザライ省が主管する「2026年ベトナム国家観光年(Nam Du lich Quoc gia 2026)」があり、省をあげて新しい目的地を掘り起こす動きが続いている。2025年の省再編でビンディン省がザライ省に統合されたため、海のないイメージのあった同省が、クイニョンという海辺の観光都市を抱えることになった点も見逃せない。
赤い鳥居に露天風呂、「小さな日本」の中身
施設が開いたのは2024年10月10日。ニョンホイ地区ホイソンにあり、地元では「小さな日本」と呼ばれている。敷地には赤い鳥居と竹の小径が続き、軒先には風鈴が下がる。中心にあるのは温泉で、露天風呂と家族風呂、サウナ、そして裸足で歩く小径がそろう。浴衣のレンタルや茶道体験もでき、写真映えする和の空間として現地SNSで広がってきた。
食事の柱は施設内の日本食レストラン「Tuna House」。本マグロの刺身のほか、鹿児島産和牛や溶岩焼きの和牛が並ぶ。カフェ&朝食エリア「RIKIRIKI」ではBBQも楽しめる。宿泊施設はないが、朝湯と朝食のサービスがあり、朝の時間帯から夜まで通しで滞在できる作りになっている。
運営はマグロの日本企業、鮮度が武器
この茶屋を運営するのは、ベトナムでマグロの加工と輸出を手がける日本企業エバートラストフーズ(EverTrust Foods)とされる。レストランの名前が「Tuna House」で、本マグロを前面に出しているのは、自社で水産を扱う会社ならではの発想だ。観光施設でありながら、原料と鮮度に強みを持つ食のプレイヤーが手がけている点は、単なる「和風テーマパーク」とは一線を画す。ベトナム中部の海辺で、日本式の温泉文化と自社マグロを掛け合わせた体験を売る——食と観光を地続きで設計した、実務家らしい作りといえる。
日本人旅行者にとっての意味
正直に言えば、日本から来た旅行者がわざわざ「日本風」を目当てに行く動機は弱い。むしろ価値があるのは、クイニョンという街の回遊性が一段上がることのほうだ。ゆらぎ茶屋はエオザオ観光地まで15分、クイニョン双塔まで15分と、周辺の見どころとまとめて回れる位置にある。断崖の絶景で知られるエオザオでは夜に大輪の花火が上がる海のショーも始まっており、昼はビーチと絶景、夕方に温泉でひと風呂、という組み立てが現実的になった。長距離移動で疲れた体を、露天風呂でほぐしてから次の街へ向かう。そんな使い方なら、日本人旅行者にも十分刺さる。
もう一つは、ベトナム在住の日本人にとっての「近場の避難所」としての価値だ。ホーチミンやハノイから国内線一本で来られる海辺で、湯船と朝食が用意されている場所は多くない。週末に家族で、というリピート需要のほうが、実は太いのではないか。
行き方と、料金の目安
クイニョンの空の玄関はフーカット空港(UIH)。ホーチミン、ハノイ、ダナンなどから国内線が就航しており、日本からは各都市で乗り継ぐのが基本になる。空港から市街地までは車でおおむね30〜40分。この夏はベトナム国内線が大きく増便されているため、以前より席は取りやすい。鉄道派なら、南北線のジウチ駅が最寄りで、夏の鉄道運賃が10%オフになる期間を狙えば寝台での長距離移動も安く上がる。
料金面で公表されているのは月額の会員プランで、300万ドン(1万ドン≒60円換算で約1万8,000円)。チケットが50%割引になり、露天風呂を1日最大2回まで使える内容だ。単発の入場料や食事の価格は公式に明記されていないため、訪問前に施設へ直接確認したい。営業は早朝の朝湯から夜まで通しとされ、19時から21時の時間帯には割引も設定されている。
まとめ
ゆらぎ茶屋クイニョンは、日本人が「日本」を見に行く場所というより、クイニョン旅行の合間に温泉でひと息つける実用的な立ち寄り先だ。エオザオの花火や双塔とセットで半日プランに組み込み、国内線の増便期を狙って足を運ぶ——それが今の楽しみ方に合う。単発料金が非公開の点だけ、事前確認を忘れずに。
