ベトナム中部高原のジアライ省が、2026年の観光施策の目玉としてコンカーキン国立公園(Kon Ka Kinh)を正式な観光地に認定した。これでジアライ省が公式に認定した観光地は4カ所となる。手つかずの原生林に絶滅危惧の霊長類が暮らし、周囲にはバナ族(Bahnar)の村が点在する——観光地図に載ったばかりのこの森は、ビーチやテーマパークとは違う「自然と対話する旅」を探す人にとって、行き先の候補になる。
コンカーキンとはどんな場所か
コンカーキン国立公園は、ジアライ省の北東、省都プレイク(Pleiku)から約50kmの山あいにある。総面積はおよそ4万2,000ヘクタール(約419平方キロメートル)で、その大半にあたる3万9,300ヘクタール超が天然林だ。行政区分としてはクロン、ダクロン、ダクソメイ、アユンの4つのコミューンにまたがる。
この森が研究者や環境保護団体から注目されてきた理由は、生き物の多様さにある。動物だけで351種が確認され、うち47種がベトナムのレッドブック(絶滅危惧種リスト)に載る希少種だ。今回の観光地認定は、その価値を「守りながら見せる」段階に踏み出したことを意味する。
ここでしか会えない霊長類
コンカーキンの看板的な存在が、ハイイロドゥクラングール(Pygathrix cinerea)だ。ベトナム固有種で、世界的に絶滅寸前(critically endangered)に分類される希少なサルだが、この公園はその現存最大級の生息地とされる。あわせて、絶滅危惧種のキタキバナホオジロテナガザル(Nomascus annamensis)も暮らす。地元で「Khướu Kon Ka Kinh」と呼ばれる固有の鳥(ガビチョウの仲間)や、トゥルオンソン・ホエジカ(Mang Trường Sơn)の名も、公園の紹介で挙げられている。
野生動物が相手なので出会いは運次第だが、朝夕に樹冠を移動する群れの声を聞きながら森を歩く時間そのものが、この場所の価値だといえる。派手なアトラクションではなく、静けさと偶然を楽しむ旅先だ。
滝と稜線、歩いて味わう自然
景観の見どころは、原生林を縫って流れる滝と、高原の稜線から望むパノラマにある。園内にはフォートゥオン滝(Thác Pho Tượng)、ップネ滝(Thác P’ne)、そして「95号滝」と通称される滝(Thác 95)が点在する。稜線歩きの目標地点として挙がるのが、標高1,330mの白岩峰(Đỉnh Đá trắng)だ。
さらに健脚向けには、公園名の由来にもなった標高1,748mのコンカーキン山の登頂ルートがある。ジアライ高原(プレイク高原)を見下ろす山頂からの眺めは、この地域のエコツーリズムを代表する体験として紹介されている。広葉樹と針葉樹が混じる混交林は樹齢の高い木も多く、植生を観察しながらの散策にも向く。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | ジアライ省北東部・プレイクから約50km |
| 面積 | 約4万2,000ha(うち天然林3万9,300ha超) |
| 確認動物種 | 351種(うち希少種47種) |
| 主な見どころ | ドゥクラングール、テナガザル、滝群、白岩峰(1,330m)、コンカーキン山(1,748m) |
森の外に広がるバナ族の暮らし
コンカーキンの旅を厚みのあるものにしているのが、周囲に暮らすバナ族の文化だ。デックイェン(ĐêkYêng)、ヒエル(Hyêr)、デーブトゥック(ĐêBTức)といった村々では、新米祭や銅鑼(ゴング)の祭り、伝統的な葬送儀礼など、独自の年中行事が今も営まれている。森歩きと村の文化に触れる体験を組み合わせられるのが、この地域ならではの魅力だ。北部サパ近郊で紅ザオ族の薬草風呂と刺繍に泊まる村ツーリズムが人気を集めているように、少数民族の暮らしを訪ねる旅は、中部高原でも旅の主役になりうる。
旅先として考えるときの現実的なポイント
まず押さえておきたいのは、拠点がプレイクだという点だ。空路でプレイク入りし、そこから車で約50kmの山道を進むのが基本の動線になる。観光地として認定されたばかりで、ビーチリゾートのように整った施設が並ぶわけではない。だからこそ、山歩きや野生動物観察を目的に、装備と時間に余裕を持って計画したい旅先だといえる。
ジアライ省は今回、コンカーキン以外にも複数の新スポットを打ち出しており、日本文化をテーマにしたユガリ茶屋(Yugari Chaya)など性格の異なる施設も含まれる。自然志向ならコンカーキン、街歩きや食を楽しみたいなら別のスポット、と組み合わせを変えられるのは、目的地が増えたこの省の強みだ。手つかずの自然を巡る旅としては、メコンデルタのオウギヤシの森に泊まる村ツーリズムや、採石跡が翡翠色に変わったアンザン七山の絶景湖巡りと並べて検討すると、ベトナムの「自然の旅」の選択肢がぐっと広がる。
まとめ
コンカーキン国立公園の観光地認定は、絶滅危惧種の霊長類と原生林、そしてバナ族の文化が一度に味わえる新しい目的地が地図に加わったことを意味する。定番のビーチや都市観光をひと通り巡った旅慣れた層や、生き物と自然を主目的に旅を組みたい人にとって、次の候補地になる。プレイクを起点に、滝と稜線と村を数日かけて歩く——そんな旅程を、次のベトナム行きの選択肢に加えてみてはどうだろう。
