ハノイ路地『Café Giang』エッグコーヒー発祥80年――湯煎陶器カップとTikTok行列が同居する1946年の味

ハノイ旧市街グエンフフアン通り39番地『Café Giang』が、エッグコーヒー(cà phê trứng)発祥の店として2026年で創業80年を迎えた。1946年に創業者Nguyen Van Giang氏が牛乳不足を補うために卵黄と練乳を泡立てて作ったレシピは、ホアンキエム湖近くの細い路地裏で受け継がれている。湯煎で温める小さな陶器カップという提供方法も80年間変わらず、TikTokでバイラル化した現在も連日行列が絶えない。The Food ConnoisseurHanoi Timesの現地報道をもとに、80年の歩みと現在の人気を整理する。

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1946年・牛乳不足から生まれた一杯

創業者のNguyen Van Giang氏は、フランス植民地時代の老舗ホテル「Sofitel Legend Metropole Hanoi」の元バーテンダー。当時のベトナムでは牛乳が極端に不足し、カプチーノに使う乳製品の代替が課題だった。Giang氏は卵黄に練乳と砂糖を加え、徹底的に泡立てることで、生クリームに近い濃厚な層を作り出すレシピを完成させた。

このレシピを使い、1946年にグエンフフアン通り39番地の小さな路地に店を構えた。以来、店は家族経営で受け継がれ、現在は息子・孫世代が厨房を切り盛りする。同じ家系が運営する別店舗「Cafe Dinh」も近隣のディンリエット通りにあり、こちらもエッグコーヒー目当ての観光客で連日賑わう。

湯煎陶器カップという80年不変の提供方法

『Café Giang』のエッグコーヒーは、小さな陶器カップを熱湯で満たした碗の中に沈める独特のスタイルで提供される。これは、卵黄カスタードの繊細な泡を冷ましたくないという配慮から生まれた工夫で、80年間ほぼ変わっていない。客はスプーンで少しずつ層を崩しながら、最初はクリーミーな甘み、次第にベトナム産ロブスタ豆の苦味を引き出す段階的な味わいを楽しむ。

厨房では今も、卵黄を金属製のボウルに入れて手動で素早く泡立てる工程が続く。電動ミキサーを使う店もある中、本店は「手で泡立てた方がきめが細かくなる」として手作業を貫いている。Vietnamese drip filter(フィン)でゆっくり抽出するコーヒー部分も、深煎りロブスタを基本に練乳を効かせる伝統的な仕立てだ。

2024年Apple CEO訪越でエッグコーヒーがバイラル化

2024年4月15日のApple CEOティム・クック氏ベトナム訪問では、ハノイ旧市街でベトナム人歌手My Linhとエッグコーヒーを試飲する様子をクック氏自身がX(旧Twitter)に投稿し、世界中のメディアに取り上げられた。これを契機にエッグコーヒー全体の検索量と来店需要が急上昇し、「エッグコーヒー発祥の店」として元祖のCafé Giangにも観光客が押し寄せる構図が定着した。

2024年の波及以降、TikTokでは「#eggcoffeehanoi」「#cafegianghanoi」のハッシュタグで欧米・韓国・日本のクリエイターが本店の路地入口や陶器カップの動画を投稿し続けている。2026年現在も、ハノイ旧市街を歩く観光客がGoogle Maps検索する代表的なカフェの一つとなり、混雑時間帯は連日行列が絶えない。

メニュー・価格データ(円換算 1JPY=170VND)

メニュー 価格(VND) 価格(円) 備考
エッグコーヒー(ホット) 30,000〜35,000 約176〜206円 看板メニュー
エッグコーヒー(アイス) 35,000 約206円 夏期人気
マッチャ・エッグコーヒー 40,000 約235円 スペシャル
シナモン・エッグコーヒー 40,000 約235円 スペシャル
アーモンド・エッグコーヒー 40,000 約235円 スペシャル

本店の路地入口は分かりにくく、看板も小さい。Googleマップで「Cafe Giang 39 Nguyen Huu Huan」と検索して、奥に進む細い通路を見つける必要がある。価格はホアンキエム湖周辺の観光地としては良心的で、ベトナム人客と観光客が同じ価格で同じ陶器カップを共有している。

SNSと現地客の反応

「祖父の代から通っているけど、80年経ってもこの路地と陶器カップが変わらないのが嬉しい。観光客が増えても味は同じ」(Facebook、Hanoi在住・60代男性の投稿意訳)

「TikTokで見て来た。陶器カップがお湯に浮かんでいるのが本当に可愛くて、最後の一滴まで温かい。35,000ドンは安すぎる」(TikTok、ソウル在住・20代女性の投稿意訳)

「2024年のApple CEO訪問報道を見て興味を持ち、ようやく本店にたどり着いた。路地が狭くて並ぶのは大変だが、それも含めてハノイの体験。手で泡立てた卵黄の質感が機械とは違う」(X、Tokyo在住・フードライターの投稿意訳)

TikTokやInstagramでは「世代を超えて通うベトナム人と、初訪問の外国人観光客が同じ路地で席を待つ」風景が頻繁に投稿される。観光地化を懸念する声よりも、「家族経営の透明性が80年保たれている」という肯定的な反応が目立つ。

日本人観光客への影響

ハノイ旧市街は韓国大統領が訪れたフォー店と同じくホアンキエム湖から徒歩圏内に集まり、エッグコーヒーは日本人観光客にとっても定番の体験になっている。本店の営業時間は朝7時から夜10時頃で、混雑のピークは午前10時〜12時と夕方17時〜19時。混雑時間帯は20分以上の待ち時間が発生するため、午前9時前か15時台の訪問が比較的スムーズだ。

支払いはVND現金が基本で、最近はQR決済(VietQR)にも一部対応。座席は2階のテラス席が人気だが、急な階段を登る必要があるため大きな荷物がある日には1階利用がおすすめ。ハノイのスペシャルティコーヒーシーンとは別軸の「伝統エッグコーヒー」として、両方を1日で巡る旅程も人気だ。

業界・観光への波及

『Café Giang』本店の人気拡大に加え、Lotte Mall Tay Hoの2号店も観光客の選択肢として定着した。家族経営の本店が混雑する時間帯にモール店で代替する流れが生まれ、ベトナム人地元客と外国人観光客の動線が分散している。

ハノイの観光業界では、80年続く小さなカフェが「地域の食文化遺産として持続的に集客する」モデルケースとして注目を集める。一方で、SNSバイラル化に伴う卵の生食衛生リスクへの懸念もCommsTraderなどが報じており、家庭で再現する観光客には注意が必要だ。本店では卵黄を加熱しない伝統製法を続けるが、品質管理の徹底でリピーターの信頼を積み重ねている。

訪問前に押さえる実用情報

項目 詳細
店名 Café Giang(カフェ・ジャン)
住所 39 Nguyễn Hữu Huân, Hoàn Kiếm, Hà Nội
2号店 Lotte Mall Tay Ho(ロッテモール タイホー)
営業時間 07:00〜22:00頃
看板メニュー エッグコーヒー(30,000〜35,000VND)
創業 1946年(創業80年)
創業者 Nguyen Van Giang氏(元Sofitel Legend Metropoleバーテンダー)
支払方法 VND現金 / 一部QR決済
アクセス ホアンキエム湖から徒歩約5分
近隣スポット ハノイ大教会、Đồng Xuân市場、ハンガイ通り

まとめ:80年変わらない陶器カップが世界の観光客を引き寄せる

『Café Giang』は、戦時中の物資不足から生まれた一杯のレシピを、80年にわたり同じ路地で提供し続けている。湯煎の陶器カップ、手作業の卵黄カスタード、ロブスタの深煎り――すべてが時代に流されない選択の積み重ねだ。Apple CEO訪問やTikTokバイラル化で観光客は急増したが、店の運営方針は変わらない。

日本からハノイを訪れる際は、混雑時間を避けた朝の早い時間帯か15時台の利用がおすすめだ。狭い路地を奥に進み、湯煎カップに揺れる小さな白い泡を、80年続く店主家族の手仕事の延長線で味わってほしい。

引用元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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