ビンスピードがシーメンスと最大10億ユーロ契約、ハロンは23分の見込み

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ベトナムの鉄道会社ビンスピード(VinSpeed)が、ドイツのシーメンス・モビリティと最大10億ユーロ(約11.5億ドル、約1,820億円)の一括契約を結んだ。ロイターが9月22日に伝え、ビングループ側も報道内容と金額を認めている。対象はハノイ〜クアンニン(ハロン)と、ホーチミン市のベンタイン〜カンゾーを結ぶ2路線で、シーメンス・モビリティが列車を供給し、ビンスピードが線路を敷く分担になる。ハノイからハロン湾まで約23分という数字を掲げてきた路線の、列車の出どころがこれで決まった。週末にハロン湾へ出る在住者向けに、決まった数字とまだ見込みの数字を分けて並べる。

目次

最大10億ユーロの契約でドイツ側が出すのは列車と電化設備

列車はドイツ製、線路はビンスピードが敷く

VnExpressのベトナム語版は今回の契約を「一括(trọn gói)契約」と書き、金額を「最大10億ユーロ(約11.5億ドル)」としている。上限つきの表記であり、確定額ではない。両社は2025年12月17日にハノイで戦略提携と技術移転の合意に署名しており、そこではシーメンス・モビリティが列車に加えて信号・通信・電力供給といった中核システムの設計・供給・統合まで担うとされていた。今回の契約は、その枠組みの上に金額を乗せたものだ。

車両として名前が挙がっているのはヴェラロ・ノーヴォ(Velaro Novo)。動力分散式で最高速度350km/h、旧世代比で消費電力が約3割低いとされ、信号はETCSレベル2に自動運転(ATO)を組み合わせる想定だ。9月23日の記事は、枠組み合意の供給内容を「ヴェラロ・ノーヴォ10編成と、通信システム・電化設備」と書く。技術移転そのものは今回の契約ではなく、2025年12月の合意の側にある。

南北高速鉄道の契約ではない

ビンスピードは2025年5月に、南北高速鉄道への投資も別途提案している。総額約613.5億ドルで、8割は国から35年間の無利子で借りるという内容だった。今回シーメンスと署名されたのは、あくまでハノイ〜ハロンとベンタイン〜カンゾーの2路線向けである。南北縦貫線が発注段階に入った、という話ではない。

ハノイ側は121kmに5駅、ホーチミン側は開業時2駅

北部路線はコーロアからハロンまで、ほぼ高架

ハノイ〜クアンニン線は、2026年1月30日にクアンニン省人民委員会が投資方針を承認し、投資家としてビンスピードを受け入れた。承認時点では延長120km、複線、軌間1,435mm、電化。2026年8月29日に意見公募にかけられた環境影響評価(ĐTM)報告書では延長は約121kmとなっている。設計速度は本線350km/h、ハノイ市内区間は120km/h。

駅はコーロア(ハノイ市ドンアイン、ベトナム展示センター内)、ザービン(バクニン省ラムタオ)、ニンサー(ハイフォン市バクアンフー坊)、イエントゥ(クアンニン)、ハロン(クアンニン省トゥアンチャウ坊)の5つ。約121kmのうち116kmほどが高架で、地上は4km程度だ。ビンスピードは完成後のハノイ〜ハロン間の所要を約23分と見込む。事業者が環境影響評価報告書に書いた見込み値であって、確定した所要時間ではない。

カンゾー線は2駅で始め、4駅は需要次第

ベンタイン〜カンゾー線は、2025年11月7日公表の環境影響評価報告書で本線延長が約53km、ベンタインからカンゾーまで8つの坊・社を通る。9月23日の記事では54kmで、資料の時点で数字が動いている。

駅の置き方が独特だ。第1段階はベンタインとカンゾーの2駅のみ。タントゥアン、タンミー、ニャーベー、ビンカインの4駅は、需要が高まった第2段階で追加しうる、という書き方だ。なおVnExpressはこの路線を「メトロ」と呼ぶ記事と「高速鉄道」と呼ぶ記事の両方を出しており、呼称は固まりきっていない。

2路線の距離も事業費も資料ごとに数字が違う

147兆ドンと86兆ドン、足すと202兆ドンにならない

9月23日の記事は、2路線あわせた総額を約202兆ドン(約77.8億ドル、約1兆2,350億円)としている。一方、各路線が個別に公表してきた事業費はハノイ〜クアンニン線が147兆3,700億ドン、ベンタイン〜カンゾー線が86兆6,500億ドンで、足すと234兆ドン強になる。足し算が合わない以上、どちらかが古いか範囲の取り方が違う。ハノイ側の147兆3,700億ドンには、国費で負担する用地補償費10兆2,700億ドンが含まれていない。ここでは両方を並べ、片方に寄せない。

項目 ハノイ〜クアンニン線 ベンタイン〜カンゾー線
延長 約121km(1月承認時は120km) 約53km(9月の記事は54km)
設計速度 本線350km/h、ハノイ市内120km/h 350km/h
駅 5駅 第1段階2駅、第2段階で最大4駅追加
事業費(個別公表値) 147兆3,700億ドン 86兆6,500億ドン
商業運行の目標 2028年 2028年第1四半期
資料の時点 2026年1月承認/8月ĐTM 2025年11月ĐTM

本数も乗客数もすべて事業者の見込み

円換算は2026年9月25日時点の1ドル=25,950.54ドン、1ドル=158.69円による。運行計画も環境影響評価報告書にある。ハノイ〜クアンニン線は1編成7〜8両・定員600人、運行は6時から24時。運行間隔は開業年の2028年がピーク時60分で、2030年に30分、2040年に15分、2045年に12分へ詰める段取りだ。利用は延べで2028年に66万8,000人超、2040年に338万人と見込む。

ベンタイン〜カンゾー線は8両・定員600人、6時から23時、20分間隔。1日43,680人、年間で延べ1,590万人超という計算が示されている。どれも投資家が自分で置いた前提であって、当局が保証した数字ではない。

ハロン湾とカンゾーへの行き方は開業すれば組み替わる

日帰りの成立条件が変わるのはハノイ側

在住者に効いてくるのは、まず北部だ。ハノイ〜ハロンが事業者の見込みどおりに動くなら、ハロン湾は「朝出て夜戻る」を前提に組める距離感に入る。終点のハロン駅が置かれるトゥアンチャウ坊は、ハロン湾のクルーズ船が発着する桟橋のある一帯で、船に乗るまでの動線は短くなる方向だ。

ただし始発駅はハノイ中心部ではなく、ドンアインのベトナム展示センター内に置かれる。中心部から始発駅までの移動が別途必要で、約23分は都心発の所要時間ではない。バクニン、ハイフォン、イエントゥにも駅が置かれるため、ハノイ発の週末の行き先がハロン一択ではなくなる可能性もある。ただし運賃は、ここで参照した資料のいずれにも示されていない。所要時間だけで旅費を見積もれる段階ではない。

ホーチミン側はカンゾーだけでなく工事の影響を見ておく

ベンタイン〜カンゾー線は、開業時点では途中に駅がない。ニャーベーやビンカインで降りる使い方は第2段階待ちになる。カンゾーへ日帰りで出る使い方が先に立ち上がる。

足元のベンタイン周辺は別の工事の影響下にある。ホーチミン中心部では地下鉄工事にともなう3年間の一方通行規制が入り、車での動線が変わっている。将来の高速鉄道より、この迂回のほうが日々の移動に効く。市は別にメトロ3路線・254兆ドン超の計画も進めており、市内で複数の鉄道事業が同時に動いている。

2028年の商業運行目標をどこまで信じるか

試運転は2027年後半、まだ工事の途中

ベンタイン〜カンゾー線は、2027年第3四半期まで施工と機器据付、第4四半期に試運転、2028年第1四半期に商業運行という並びで示されている。ハノイ〜クアンニン線は、8月の記事が「4月から事業に着手している」と書いている。クアンニン省の党委書記クアン・ミン・クオン氏は1月29日の会議で、ハノイ〜ハロン線を3月初旬に着工するよう投資家と関係機関に求めた。要請として出された期限であって、着工が公表されたという話ではない。

2路線とも、着手から2年前後で商業運行に持ち込む設定だ。クアンニン省は承認にあたり、用地の引き渡しや賃借、地目変更、環境手続きの完了を投資家に求めている。

ロンタイン空港は最終盤、この2路線は入口に立ったところ

ホーチミン近郊のロンタイン新空港は試験飛行から12月の開港へ向かい、工程が最終盤に来ている。対してビンスピードの2路線は、列車の供給元が契約で固まったところだ。旅行や出張の予定を2028年に紐づけて組むのは、まだ早い。

いま予定に落とすなら、着工と停車駅の2点だけ追えばいい

今回の契約で固まったのは、列車と電化設備をシーメンス・モビリティが出すことと、その金額が最大10億ユーロ規模であることだ。開業日、運賃、停車パターンは、ここで確認した資料の範囲では決まっていない。

追跡ポイントは2つだ。1つはハノイ〜ハロン線の着工がいつ公表されるか。2つめはベンタイン〜カンゾー線の第2段階4駅が動くかどうか。次にこの2路線のニュースを見かけたら、「契約」「承認」「着工」「試運転」のどの段階の話なのかを最初に確かめてほしい。今回のように、列車の契約が着工と読み替えられて伝わることがある。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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