食文化評価サイトTasteAtlasが2026年4月28日付で更新した「Top 66 meat soups in Asia(アジアの肉スープTOP66)」に、ベトナムの麺・スープ料理が5品ランクインした。中華圏の牛肉麺やラーメンが上位を独占する中、ベトナム勢はPhở bò(牛フォー)6位を筆頭に、北部式のPhở bò tái chín 11位、Phở gà(鶏フォー)15位、Miến gà(鶏×春雨)32位、サパのLẩu gà đen(黒鶏鍋)53位まで、北部・南部・山岳地帯にわたる地域差をそのままランキングに反映させた形となった。VnExpress InternationalとVietnam+の現地報道をもとに、5品の特徴と地域性を整理する。
Phở bò 6位――南北で異なる「牛フォー」の世界基準
1位ではないが、6位という上位に食い込んだPhở bò(フォー・ボー、牛フォー)はベトナム料理の象徴。TasteAtlasは「シナモン・八角・カルダモン・コリアンダーシードを効かせた牛骨スープ」と紹介し、ハノイ式の北部スタイルとサイゴン式の南部スタイルでトッピングが大きく異なることを明記している。
南部ではもやし・タイバジル・ライム・ホイシン・スリラチャが別添えで提供され、客が好みで調整するのが標準。北部ではトッピングを最小限に抑え、出汁の繊細さを楽しむのが流儀だ。韓国大統領が訪れたPhở Lý Quốc Sưのような家族経営店から、サイゴンの大型チェーンPhở 24まで、地域・店舗による多様性も評価ポイントになっている。
Phở bò tái chín 11位――ハノイ式「半生+ウェルダン」の二刀流
11位のPhở bò tái chín(フォー・ボー・タイ・チン)はハノイのシグネチャースタイル。「tái(薄切りレア肉)」と「chín(よく煮込んだウェルダン肉)」の2種類の牛肉を1杯に盛り、客の目の前で熱々の出汁を注いでレア肉を半生に火入れする提供方法だ。
ハノイのフォー店ではquẩy(クアイ、揚げパン)を別皿で添えるのが定番。出汁に浸して食べる文化は北部独特で、南部では一般的でない。TasteAtlasは「テーブルサイドで完成させる調理体験」を高く評価し、フォー全体の中でも別格として独立カテゴリでランクインさせている。
Phở gà 15位――1930年代の市場休業日に生まれた「鶏フォー」
15位のPhở gà(フォー・ガー、鶏フォー)は、生姜・エシャロット・魚醤を効かせた「あっさりとマイルドな鶏出汁」が特徴。TasteAtlasの解説によれば、1930年代に「牛肉が市場で買えない曜日があった」ことから、代替として鶏フォーが普及したとされる。
ハノイの『Phở Gà Lâm』『Phở Gà Mai Anh』などが伝統店として知られ、トッピングは茹で鶏のスライス、ライムの葉、フライドエシャロット。牛フォーに比べて出汁が透明で、朝食メニューとして地元客に愛されている。日本人観光客にも「翌朝の二日酔いに優しい」と支持が広がっている。
Miến gà 32位――鶏×春雨×しいたけの北部冬料理
32位のMiến gà(ミェン・ガー)は、春雨(緑豆春雨)と鶏を主役にしたスープ料理。スープにはレモングラス・玉ねぎ・生姜・魚醤を加え、具材として鶏肉、しいたけ、たけのこを乗せる。北部の冬の朝食料理として家庭でもよく作られる。
麺は米粉ではなく緑豆から作る春雨で、つるりとした食感が特徴。ハノイの市場や食堂では1杯40,000〜60,000ドン(約235〜353円)と安価で、観光客向けの店よりも地元の朝食店で出会う方が本格的な味わいに近い。
Lẩu gà đen Sa Pa 53位――山岳地帯の「黒鶏鍋」がアジア入り
53位のLẩu gà đen Sa Pa(ラウ・ガー・デン・サパ)は、ベトナム北部山岳地帯サパ(Sa Pa)の名物「黒鶏(H’Mong族が飼育する地鶏品種)」を使った鍋料理。テーブルで火にかけ、たけのこ・しいたけ・生姜・山菜を一緒に煮込みながら食べる。
黒鶏は皮と肉が黒く、ふつうの鶏より歯ごたえが強く滋味が深いのが特徴。サパの『Hong Anh』『A Quynh』『Anh Dau』などのレストランで提供され、観光客は寒冷な山岳の夜に体を温める料理として注文する。サパのトレッキングと組み合わせるのが定番旅程だ。
5品の比較データ(円換算 1JPY=170VND)
| 順位 | 料理名 | 主原料 | 本場エリア | 1杯の相場(VND) | 1杯の相場(円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 6位 | Phở bò(牛フォー) | 牛骨・八角・米麺 | 全国 | 50,000〜80,000 | 約294〜471円 |
| 11位 | Phở bò tái chín | 牛骨・レア+ウェルダン肉 | ハノイ | 55,000〜90,000 | 約324〜529円 |
| 15位 | Phở gà(鶏フォー) | 鶏出汁・米麺 | ハノイ | 40,000〜70,000 | 約235〜412円 |
| 32位 | Miến gà | 鶏出汁・春雨・しいたけ | ハノイ・北部 | 40,000〜60,000 | 約235〜353円 |
| 53位 | Lẩu gà đen Sa Pa | 黒鶏・山菜・たけのこ | サパ(北部山岳) | 500,000〜800,000(鍋) | 約2,941〜4,706円(2〜3人分) |
※価格はハノイ・サパ市内の標準的な店舗の目安。観光地中心部や高級店ではこれ以上の場合あり。
SNSと現地客の反応
「Phở bò 6位は順当。次の旅行では11位のtái chínをハノイで本場体験する」(Threads、シンガポール在住・フードブロガーの投稿意訳)
「Miến gàが32位に入ったのは嬉しい。地味な家庭料理が世界に評価されると、ベトナム北部の朝食文化が誇らしく感じる」(Facebook、ハノイ在住・主婦の投稿意訳)
「サパの黒鶏鍋が53位というのは過小評価。あの鶏の旨味は通常の鶏とは別物」(X、ホーチミン在住・料理研究家の投稿意訳)
SNSでは「5品もランクインしたベトナム料理の懐の深さ」を誇る投稿と、「次の旅行で何位の料理を食べるか」のリスト化動画が拡散している。サパの黒鶏鍋は外国人観光客には馴染みが薄かった料理だが、ランキング掲載で海外メディアの言及機会が増え、ハノイ発のサパツアーで「黒鶏鍋を食べる」体験コースを提示する事業者が出てきている。
日本人観光客への影響
日本からベトナムを訪れる旅行者にとって、TasteAtlasのランキングは「本場で食べるべき5品リスト」として現実的に機能する。ハノイ滞在では3〜4日あればPhở bò、Phở bò tái chín、Phở gà、Miến gàの4品を制覇可能。サパの黒鶏鍋を加えるなら、夜行寝台列車またはハノイ発の高速バス(片道5〜6時間)でサパに北上する旅程を1泊組み込むのが現実的だ。
ハノイ旧市街ではエッグコーヒー発祥のCafé Giangやトレインストリートと組み合わせ、午前にフォー、午後にカフェ、夕食にMiến gàという食べ歩き旅程が組みやすい。
業界・観光への波及
TasteAtlasランキングの公表は、ベトナム観光業界の「食を目当てに訪れる旅行者」を呼び込む追い風として機能する。とくにサパのLẩu gà đenはランキング掲載前まで主に国内旅行者向けの料理だったが、世界の食通向けランキングに掲載されたことで海外旅行者の関心を集める素地が整った。ハノイ発のサパツアーや黒鶏鍋を含む山岳料理コースの認知度向上に寄与する位置付けだ。
ベトナム国内のフード系メディアもランキングの英語原文を翻訳して流通させており、海外メディア向けに本場店リストを発信する流れができつつある。韓国大統領のPhở Lý Quốc Sư訪問と並び、「ベトナム料理の世界発信」を後押しするフックとして語られている。
5品を食べ歩くための実用情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ランキング発表日 | 2026年4月28日 |
| 発表元 | TasteAtlas「Top 66 meat soups in Asia」 |
| ベトナム勢順位 | 6位 / 11位 / 15位 / 32位 / 53位の5品 |
| ハノイで食べるべき4品 | Phở bò、Phở bò tái chín、Phở gà、Miến gà |
| サパで食べるべき1品 | Lẩu gà đen Sa Pa(黒鶏鍋) |
| ハノイ滞在推奨日数 | 3〜4日 |
| サパ往復 | 夜行寝台列車(約8時間)/高速バス(約5〜6時間) |
| 関連メディア | VnExpress、Vietnam+、TasteAtlas公式 |
まとめ:南北・山岳まで多層の食文化が世界の評価に乗る時代
TasteAtlasアジア肉スープTOP66にベトナム麺5品が並んだ事実は、ベトナム料理の「南北・山岳の地域差」がそのまま世界の評価軸に乗ったことを意味する。Phở bòだけでなく、ハノイのtái chín、Miến gà、サパのLẩu gà đenまで、地域固有の食文化が個別カテゴリで評価される時代に入った。
日本からベトナムを訪れるなら、ランキングの順位を「食べ歩きチェックリスト」として活用するのが現実的だ。ハノイ4日+サパ1日の5日間あれば、6位から53位まで現地の本場で順を追って制覇できる。順位の数字より、地域ごとに変わる出汁の輪郭を体感する旅にしてほしい。
