モダニズム建築の愛好家グループが15万人に、ベトナムの古い家を探す

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ホーチミンやダナンの路地を歩くと、灰色のコンクリートに細い日よけ格子や穴あきブロックをまとった住宅が目に入る。看板も案内板もないので、たいてい通り過ぎる。その建物群が2026年の半ばから急に語られはじめた。サイゴニアが9月20日に載せた記事は、Facebookの愛好家グループ「Vietnamese Modernist Architecture」の会員が昨年の約4万人から現在およそ15万人まで増えたと書いている。原文はこれを「ほぼ4倍」と書く。伸びが急になったのはここ数か月だという。

旅行者にとっては、行き先ではなく街の見方が一つ増えた話だ。以下では元記事とベトナム語の一次資料で確認できた建物だけを現況つきで並べる。

目次

愛好家グループが4万人から15万人へ、9月20日の記事が伝えた中身

2015年に4人が始めた記録の場が、10年たって混み合いはじめた

グループは2015年に、メル・シェンク、トム・リッコ、ティム・ドーリング、ホアン・トランの4氏が立ち上げた。消えていく建物を写真で記録し、ゴ・ヴィエット・トゥ(Ngô Viết Thụ)、レー・ヴァン・ラム(Lê Văn Lắm)、グエン・クアン・ニャック(Nguyễn Quang Nhạc)ら設計者の名前を残す少人数の場だったが、10年目に入って「Đẹp quá!(きれいだ)」が並ぶ場に変わった。記録する人たちが土台をつくり、建て替えの速さから生まれる郷愁が乗り、最後に雑誌やチェーン店が商品化した三段の重なりだと元記事は整理する。

1975年以前の建物は全体の15%、2024年の研究が出した数字

1975年以前に建てられた建物は、ベトナムの建築ストック全体の15%にすぎない。サイゴニアは建設省データに基づく2024年の研究を出所に挙げる。これは「モダニズム建築の比率」ではなく「1975年以前の建物の比率」である。建て替えの速さは、地下鉄工事でホーチミン中心部の通行が長期に変わる話(ホーチミン中心部が3年間の一方通行へ)と並べると体感しやすい。

独立宮殿の2階を囲む石のすだれが、見分け方の手本になる

1962年7月着工・1966年10月落成、設計はゴ・ヴィエット・トゥ

格子や穴あきブロックを見分ける練習をするなら、最初に入るべきはホーチミンの独立宮殿(Dinh Độc Lập)だ。公式サイトの建築解説によると、設計は建築家ゴ・ヴィエット・トゥ、着工1962年7月1日、落成1966年10月31日で、4年余りかかっている。公式の説明では「phong cách hiện đại」(現代様式)を東アジアの伝統的な建築精神と組み合わせたものとされ、英語の元記事は Vietnamese modernism と呼ぶ。

「rèm hoa đá」は竹の節を写した日よけで、光を調節するためにある

2階をぐるりと囲む石の格子を、公式サイトはrèm hoa đá(石の花すだれ)と呼ぶ。竹の節を細長く並べた形で、フエの王宮の「cửa bàn khoa」を図案化したもの、装飾と同時に自然光を和らげる装置だと説明されている。同じ「日よけのために壁を抜く」発想が、路地の住宅の格子にも出てくる。部屋数は公式サイト内で食い違い、トップページは施設全体で150室以上、建築解説は主棟で100室近くとする。下表には主棟の数字を採った。宮殿内で食事つきで過ごす選択肢は独立宮殿で昼にアート×6品コースも見ておきたい。

項目 公式サイトの記載
住所 135 Nam Kỳ Khởi Nghĩa, P. Bến Thành(入口は106 Nguyễn Du 側にも)
開館 月〜日 7:00〜18:00。祝祭日も開館
入場料 大人 80,000ドン/学生・高齢者 40,000ドン/6歳以上16歳未満 20,000ドン
主棟 建築面積4,500平方メートル・高さ26メートル・延べ床20,000平方メートル・100室近く

カフェになった本物と、2024年に建てられたそっくりさんの違い

カフェ・リンは古い家に見えて新築、2店目はサイゴンに出た

2024年にスアンホアで開業したCà Phê Linhを、元記事の筆者は最初、修復された1950〜60年代の建物だと思ったという。実際は新築で、洗い出し仕上げのđá rửa、星と月と太陽をかたどったパーゴラ、風通しブロックのgạch hoa gió、ダイヤ形の意匠まで当時の記号を写している。読みは当たって店は満席が続き、2店目が2025年後半にサイゴンで開いた。同じ路線の店にMai An 1983、ロンスエンのTibon by Jaydenがある。写真を撮って「古い家を見た」と思うのは早い。

NEO-HBTは構造の約9割が当時のまま、3.Coffeeはゴミ25台分を運び出した

本物の住宅をそのまま使う店も増えている。元記事の筆者が経営者に書面で理由を尋ねると、どの答えにも郷愁が出てきた。NEO-HBTのチームは1990年代のサイゴンで育った世代で、見えている部分の約9割が元の構造だと答えている。ダナンのBảy Coffeeは1986年の住宅を、歴史的価値と堅牢な構造、装飾の線の正確さを理由に残し、クチのCăn Nhà Cũ Coffeeの店主は自分が育った家の感覚を若い世代に渡したいと述べる。3 Hào Cà Phêが開いた3.Coffeeでは初日だけでゴミをトラック25台分以上運び出し、短期の賃借契約のまま踏み切ったという。いずれも営業中のカフェで、見学施設ではない。

ハイランズの1号ドライブスルーは249ホアンヴァントゥ通り

規模で目立つのは、ベトナム最大のコーヒーチェーン、ハイランズ・コーヒーだ。サイゴニアは、ホアンヴァントゥ通りのモダニズム邸宅を同社が初のドライブスルーに転用したと書く。トゥオイチェー紙の同社発表ベース記事では、1号店は249 Hoàng Văn Thụ、開業は2025年7月1日。開業に合わせたTikTokの起用で100万回再生を超えた動画もあった。

建物・店 場所 竣工・開業 現況
独立宮殿 ホーチミン市ベンタン坊 1962年着工/1966年落成 国家特別遺跡。毎日7:00〜18:00公開
ハイランズ ドライブスルー1号店 249 Hoàng Văn Thụ 2025年7月1日 営業中。元記事はモダニズム邸宅の転用と記す
Cà Phê Linh スアンホア/サイゴン 2024年/2025年後半 営業中。古い建物ではなく新築
NEO-HBT サイゴン —(確認できず) カフェとして営業中。見える部分の約9割が元の構造
Bảy Coffee ダナン 住宅は1986年 カフェとして営業中
クイホア村 クイニョン・クイニョンナム坊 1929年開村 約300世帯が居住中。区画計画の検討対象

クイホア村にはまだ人が暮らしている、観光地として行く場所ではない

1929年に開かれた療養の村と、フランス期の教会・修道院

元記事が再評価の引き金かもしれないと挙げるのが、クイニョンのクイホア村(Làng phong Quy Hòa)の移転計画だ。VnExpressの現地ルポによると、村はクイニョンナム坊のスアンヴァン山のふもとにあり海に面する。1929年にフランス人司祭パウル・アンドレ・マウー(Paul André Maheu、1869〜1931)が谷を開き、ハンセン病の療養所を置いた。詩人ハン・マク・トゥが療養し1940年に没した場所で、最初の埋葬地と遺品の記念室も村内にある。教会と修道院はフランス期の建築を保っているとVnExpressは記す。家屋とインフラについては「フランス建築とインドシナ様式を組み合わせたもの」と書き、英語の元記事は同じ村のモダニズム住宅を写真で紹介する。呼び方は資料によって違う。

5月に承認されたのは約2,900ヘクタールの区画計画の「任務」まで

段階の読み違いを避けたい。VnExpressによると、5月にギアライ省人民委員会が承認したのは、ゲンラン〜ヴンチュア海岸国際観光リゾート都市区の1/2,000分区計画の「任務(nhiệm vụ)」で、研究対象区域は約2,900ヘクタール、クイニョンナム・バック・タイの3坊にまたがる。中央クイホア・ハンセン病皮膚病院のトゥイフオック村(xã Tuy Phước)への移転案は、診療が途切れないよう慎重に検討することを省が求めている段階で、着工の決定でも移転日の決定でもない。約300世帯が現に暮らし病院が機能している場所なので、撮影目的の立ち入り先として勧められる状態ではない。

半日と一日、時間別にどこから回るか

半日なら独立宮殿とタンディン周辺で目を慣らす

半日なら、独立宮殿で石のすだれと格子を実物で見て、その形を覚えたまま外に出る。近くのタンディン地区は住宅と商店が混ざり、路地に入れば格子や穴あきブロックの住宅が残っている可能性が高い(タンディン地区が世界で12番目にクールな街に)。見るのは3点。壁面の日よけ格子、風通しの穴あきブロック、表面の洗い出し仕上げだ。

一日あればカフェに転用された家を1軒だけ選ぶ

一日使えるなら、そこにカフェ1軒を足す。249 Hoàng Văn Thụのドライブスルーは住所と開業日が確認できているので外しにくい。本物の住宅を使った店に入るなら、店名で地図を検索し、営業日と現在地を確かめてから向かう。古い建物を使う店は賃借条件が短いこともある。次にベトナムへ行くなら、ホテルから最寄りの店までの数百メートルで、日よけ格子のある家を1軒撮ってみてほしい。1軒撮れば、その通りにあと何軒あるかが自然に目に入る。

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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