「全員健康申告」は誤解でした──ベトナム入国、平時は何も不要

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「7月1日からベトナムに出入国する人は全員、健康申告をしなければならない」──6月末、こんな情報がSNSや一部の旅行系サイトで一気に広まりました。根拠とされたのは、7月1日に施行された政令165/2026号です。ところが施行直前の6月30日、ベトナム保健省が「全員に常時義務づけるものではない」と公式に説明を出しました。当サイトでも6月末に「7月からベトナム入国に健康申告が復活する」という趣旨でお伝えしていたので、この記事はその続報にあたります。何が誤解で、何が本当なのか。そして旅行や出張を控えた人がいま何をすべきなのか──結論から言うと、平時は何も要りません。順番に整理します。

目次

「全員申告必須」はどこから広まったのか

発端は、5月15日に公布された政令165/2026号(Nghị định 165/2026/NĐ-CP)です。国境での医療検疫の手続きを定めたもので、7月1日に施行されました。この中に出入国・通過する人の健康申告に関する条文が含まれていたため、「7月1日から全員が申告必須になる」「申告サイトはtokhaiyte.vn」という情報がSNSで拡散。一部の航空系メディアや航空券販売代理店も「必須」と案内し、出発を控えた旅行者の間で混乱が広がりました。

これに対して保健省疾病予防局のヴォー・ハイ・ソン副局長が公式に説明した要点は2つです。第一に、健康申告は全員に常時義務づけるものではないこと。政令が定めたのはあくまで法的な枠組みで、実際に申告が求められるのは「特定の感染症について、世界の流行状況とベトナムへの侵入リスクを踏まえ、保健相が具体的なガイダンスを出した場合」に限られます。第二に、拡散された申告サイトtokhaiyte.vnを保健省は現在使っていないこと。新しい申告システムは構築中で、旧サイトへの入力は個人情報を盗まれるフィッシング詐欺につながるリスクがあると警告しています。

政令165/2026の正しい読み方──「器」と「スイッチ」は別物

誤解の核心は、「ルールができた」ことと「ルールが発動する」ことの混同にあります。政令165/2026は、感染症が国境を越えて入ってくる事態に備えて、健康申告という手段をいつでも使えるようにしておく「器」です。一方、実際に申告を義務づける「スイッチ」を押せるのは保健相だけで、対象となる感染症・期間・対象者はその都度のガイダンスで指定されます。つまり施行日の7月1日にスイッチが自動で入ったわけではなく、2026年7月上旬時点で保健相のガイダンスは出ていません。

仮に将来スイッチが入った場合の実務も、政令に書かれています。対象者は出入国・通過の7日前以内に健康申告を行い、方法は電子か紙のどちらでもよく、様式はベトナム語と英語で用意されます。感染症の状況によっては、ワクチン接種証明などの提示が求められる場合もあるとされています。

項目 拡散された情報 保健省の公式説明
対象者 出入国する全員 平時は対象なし。流行時に指定された感染症のみ
開始時期 7月1日から一律 保健相がガイダンスを出した時点から
申告サイト tokhaiyte.vn 現在は未使用。新システムを構築中
いまやること 出発前に申告 何も不要

現地では「義務化」報道が先行していた

今回の混乱は、根も葉もないデマというより、条文を字面どおりに読んだ報道が積み重なった結果に見えます。

  • 中部の地方テレビ局VTV8は政令公布直後の5月下旬、「7月1日から入国者は新規定に従い健康申告」と施行を予告する記事を配信
  • 航空券販売代理店のサイトには「7月1日から出入国者は健康申告が義務」とうたう案内ページが登場
  • 法律情報サイトも「出入国の7日前以内に申告を」と、発動条件に触れないまま注意喚起

いずれも政令の条文そのものは正しく紹介しているのですが、「保健相のガイダンスが出た場合に限る」という適用条件が抜け落ちていました。結果として「全員必須」という理解が独り歩きし、大手紙タインニエンが「真偽」と題したファクトチェック記事を出し、政府系メディアが保健省の説明を一斉に伝える、という展開になりました。制度の建て付け上、条文だけ読めば「義務化」と書けてしまうところに落とし穴があったわけです。

前回記事からのアップデート──いまやるべきことは「何もない」

当サイトが6月末に公開した記事では、この政令を根拠に「出発前にやることが1つ増える」とお伝えしました。政令の存在と施行日は事実ですが、その後保健省が適用条件を明確にしたため、本記事をもって内容をアップデートします。整理すると、平時のベトナム渡航に健康申告は不要です。出発前に申告サイトへ入力する必要も、書類を準備する必要も、専用アプリを入れる必要もありません。

あなたの状況 やること
これからベトナム旅行・出張(平時) 健康申告は不要。何も準備しなくてよい
tokhaiyte.vnへの入力を促す投稿や案内を見た 入力しない。保健省は現在このサイトを使っていない
感染症流行時(保健相ガイダンス発出後) 大使館・航空会社の案内に従い、出発7日前以内に電子か紙で申告
会社で出張者の渡航を管理している 渡航前チェック項目に「保健省の申告ガイダンスの有無」を1行追加

むしろ警戒すべきは偽サイトのほうです。コロナ期に実際に使われていたtokhaiyte.vnの知名度を逆手に取り、パスポート番号や連絡先を入力させる詐欺の入口になりうると、保健省自身が注意を促しています。「ベトナム 健康申告」で検索して出てきたページに個人情報を入れるのは避け、義務化の有無は大使館や航空会社の公式案内で確認してください。

なお、この7月のベトナムは新ルールの施行が集中していて、旅行者に本当に影響するものと混同しやすい時期です。機内持ち込みのモバイルバッテリーが2個までに制限された新ルールや、在住者・駐在員に関わる入管手続きのVNeID一本化は実際に準備が要る変更ですし、年末に向けてはホーチミン発国際線のロンタイン新空港への移管も控えています。心配する対象を取り違えないことが、この夏のベトナム渡航準備のコツです。

「枠組みだけ先に作る」ベトナム行政の読み方

今回の政令は、コロナ禍で急ごしらえだった水際対応を、平時のうちに恒久的な法制度として整えておくという性格のものです。流行が起きてから慌てて根拠規定を作るのではなく、器を先に用意しておき、必要になったら保健相の一存で素早く発動する。この設計自体は合理的で、日本のVisit Japan Webが平時の入国手続きを任意でオンライン化しているのとは方向性が異なります。ベトナムの健康申告は「感染症対応に限定した条件付きの義務」であって、日常の入国手続きが一つ増えたわけではありません。

もう一つの教訓は、ベトナムの「7月施行ラッシュ」では条文の存在だけで判断しないことです。今年の7月1日前後には、健康保険の給付拡大、交通の新規則、ネット販売の本人確認義務化など多くの制度が同時に動き出しました。「施行された=全員に即適用」とは限らず、発動条件や経過措置が付いているものが少なくありません。SNSで断定調の情報を見かけたら、政府系メディアか大使館の一次情報で適用条件まで確かめる。この習慣があるだけで、今回のような空騒ぎには巻き込まれずに済みます。

まとめ──覚えておくのは3つだけ

  1. 平時のベトナム出入国に健康申告は不要。2026年7月上旬時点で保健相のガイダンスは出ていない
  2. 義務化されるのは感染症流行時に保健相がガイダンスを出した場合のみ。その際は出発7日前以内に電子か紙で申告する
  3. tokhaiyte.vnは現在使われていない。入力を促す案内はフィッシング詐欺を疑う

次にベトナム行きの航空券を取るときは、健康申告の心配はいったん脇に置いて大丈夫です。浮いた時間は、モバイルバッテリーの個数確認や発着空港のチェックなど、実際に効いてくる新ルールの確認に回してください。状況が変わって申告が発動された場合は、当サイトでも続報をお伝えします。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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