スマホの充電が心もとない海外旅行で、モバイルバッテリーは手放せない相棒です。ところが2026年7月1日から、ベトナムを発着・通過するすべての便で、その持ち込みルールが一段と細かくなりました。ベトナム民間航空局(CAAV)が定めた新基準は、1人あたりの個数・容量・置き場所・使用可否まで踏み込んだ内容で、日越間のフライトはもちろん、ハノイからダナンといった国内線に乗る旅行者全員が対象です。知らずに保安検査へ進むと、荷物を開けさせられたり、最悪その場で預けられなかったりします。日本から遊びに行く人が空港で足止めされないために、要点を整理しました。
7月1日に何が変わったのか
CAAVが7月1日に施行した新ルールの柱は、大きく4つです。第一に、乗客1人が機内に持ち込めるモバイルバッテリーは最大2個まで。第二に、容量は定格エネルギーで100ワットアワー(Wh)以下が原則。第三に、必ず機内持ち込み手荷物に入れること(預け荷物に入れるのは不可)。そして第四に、飛行中はバッテリー本体の使用も、それを使ったスマホなどへの充電も禁止です。
容量が100Whを超え160Wh以下のバッテリーは、飛行前に航空会社の事前承認を得れば持ち込める余地があります。リチウム金属電池タイプの場合はリチウム含有量2グラム以下という別基準が適用されます。CAAVはこの措置を、国際民間航空機関(ICAO)が定める危険物航空輸送の指針を反映したものと説明しています。
「使用禁止」は実は去年から、今回は個数と置き場所まで
飛行中にモバイルバッテリーを使えないこと自体は、目新しい話ではありません。ベトナム航空やベトジェットエアなどの主要各社は、2025年3月の時点で機内での使用・充電をすでに禁止していました。発端は各国で相次いだリチウムイオン電池の発火トラブルで、頭上の収納棚の中で発煙すれば発見が遅れる、という懸念が背景にあります。
7月からの新ルールは、この流れを一段進め、航空会社ごとにバラつきのあった運用を当局基準として一本化した格好です。持ち込める個数を「2個まで」と数字で区切り、預け荷物への収納を明確に禁じ、さらに「座席の周りなど見える場所に置く」ことまで求めた点が新しさです。頭上の棚にしまい込むのではなく、前の座席下のポーチや自分の膝の上など、乗務員がすぐ確認できる位置に置いておく運用になります。
手持ちのバッテリーは何Wh?換算の目安
「100Wh以下」と言われても、市販のモバイルバッテリーはミリアンペア時(mAh)で表記されているものが多く、ぴんとこないかもしれません。おおまかな目安として、一般的な出力電圧3.7Vで計算すると、Wh=mAh×3.7÷1000で概算できます。この式に当てはめると、下表のようになります。
| 容量(mAh) | おおよそのWh換算 | 持ち込み可否の目安 |
|---|---|---|
| 10,000mAh | 約37Wh | 問題なし |
| 20,000mAh | 約74Wh | 問題なし |
| 26,800mAh | 約99Wh | ぎりぎり100Wh以内 |
| 27,000mAh超 | 100Wh超 | 航空会社の事前承認が必要な領域 |
市販の大容量モデルでよく見る「26,800mAh」は、この換算だと約99Whで、100Whの上限にほぼ張り付く水準です。実際にはメーカーが本体にWh表記を併記している製品も多いので、旅行前に手持ちのバッテリー裏面の刻印を一度確認しておくと安心です。数値が読み取れない、あるいは剥がれて分からないバッテリーは、トラブルの元になりかねません。
現地・旅行者の受け止め
ベトナム在住の日本人コミュニティでは、施行前から「2個までなら普段の旅行で困らない」という声が目立つ一方、家族旅行で1人が全員分のバッテリーをまとめて持つスタイルの人からは「分散して持たせないと」との戸惑いも上がっています。国内線を乗り継ぐ旅慣れた旅行者からは、「使用禁止はもう定着しているので、あとは容量表記を確認するだけ」と冷静な受け止めも聞かれます。
ベトナムの航空会社側も、搭乗前に要件を乗客へ周知するよう当局から指示を受けており、チェックイン時や搭乗口でのアナウンスが増えると見られます。現地メディアも、頭上の棚での発火リスクを繰り返し報じており、「見える場所に置く」ルールを安全対策として前向きに伝える論調が中心です。
日本人旅行者が空港で止められないために
この新ルールは、罰金うんぬんより先に「保安検査や搭乗口での足止め」という形で旅行の出鼻をくじきます。日本から向かう場合に押さえておきたい実務ポイントは次の通りです。
- 手持ちのモバイルバッテリーは2個までに絞り、容量表記(Whまたはmah)を出発前に確認する。
- スーツケースなど預け荷物には入れず、必ず機内持ち込みのバッグに移す。
- 端子の短絡防止のため、購入時の箱に入れる・端子をテープで覆う・個別のビニール袋やポーチに分ける、のいずれかで保護する。
- 機内では棚の奥にしまわず、座席前のポケットや膝上など見える位置に置く。飛行中の充電はしない。
この見直しは、7月に入ってからベトナムの旅行環境で相次いだ制度変更のひとつでもあります。入国時の手続きや税制など、旅行者・在住者の実生活に効く変更が同時期に重なっているため、渡航前にまとめて確認しておくと段取りが楽になります。健康申告の復活については7月からベトナム入国に健康申告が復活、出発前にやることが1つ増えますで、入管手続きのVNeID一本化はベトナム入管手続きが6月からVNeIDに一本化で詳しくまとめています。
航空業界と市場への波及
リチウムイオン電池の航空輸送規制は、ベトナムだけの動きではありません。ICAOの指針を軸に、アジア各地の空港・航空会社が相次いで持ち込み条件を厳格化しています。ベトナムが個数と容量、置き場所を当局基準として明文化したことは、この地域全体で進む標準化の流れに沿ったものです。旅行者にとっては、行き先ごとにルールが微妙に違うという煩わしさは残るものの、「2個・100Wh・手荷物・見える場所」という組み合わせを一つ覚えておけば、当面のベトナム便では困りにくくなります。
この夏はベトナム国内線の増便も見込まれており、複数都市を周遊する旅行者が増えれば、その分だけ国内線でのバッテリーチェックに触れる機会も増えます。周遊プランを組む人は、乗り継ぐ便すべてで同じルールが適用される前提で荷造りしておくと安心です。夏の便の動向はこの夏ベトナム国内線が大増便、席が取りやすくなる時期と予約のコツも参考になります。
まとめ・次の一歩
2026年7月1日からのベトナムの新ルールは、「モバイルバッテリーは1人2個・100Wh以下・手荷物に入れて・機内では見える場所に・飛行中は使わない」の5点に集約できます。難しい手続きは不要で、渡航前に手持ちのバッテリーの数と容量表記を確認し、預け荷物から機内バッグへ移し替えておくだけで、ほとんどの旅行者はそのまま通過できます。旅の直前ではなく、荷造りの段階でバッテリー裏面のWh表記を一度チェックすること。これが空港で足止めされないための、いちばん確実な備えです。
