フォー、ユネスコ無形文化遺産に正式申請——発祥地ナムディン省「ヴァンクー村」の職人技が世界に挑む

ベトナムの国民食フォー(pho)が、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指して正式に動き出した。申請の中心となるのは、フォー発祥の地とされるナムディン省(現ニンビン省に編入)のヴァンクー(Van Cu)村だ。2024年にナムディン式フォーとハノイ式フォーが国の無形文化遺産に認定されたのを足がかりに、世界遺産への格上げを狙う。

目次

申請の経緯と推進体制

ヴァンクー村が属するナムドン社の人民委員会委員長グエン・ヴァン・シン氏は、ユネスコ申請に向けた追加資料の収集と科学的な書類作成を進めていると明かした。2026年3月のフォーフェスティバルでは専門家やフォー職人を集めたセミナーを開催し、申請書類の精度を高めるための実践的な議論が交わされた。

ニンビン省だけでなく他の省や市とも連携し、ユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」への記載を目指す。申請書類はヴァンクー村の伝統技法だけでなく、ザオクー(Giao Cu)村やタイラック(Tay Lac)村など複数のフォー職人村の技術を包括的に記録する方針だ。

フォー発祥の地「ヴァンクー村」の歴史

ヴァンクー村は何世代にもわたってフォー作りを受け継いできた。元々は米の麺やライスシートの生産で知られていたが、冬場に麺を干す条件が悪くなる時期に、温かいスープ麺としてフォーの原型が生まれた。

20世紀初頭、フランス植民地時代の都市開発にともない、ヴァンクー村の職人たちはフランス人の味覚に合わせた牛骨ブロスのバリエーションを考案。これが「フォー・コー(pho Co)」と呼ばれ、コー家の名を冠した元祖フォーとして知られるようになった。

フォーの系譜 特徴 代表的な地域
ナムディン式(pho Nam Dinh) あっさりした透明な牛骨スープ、細めの麺 ニンビン省ナムドン社
ハノイ式(pho Ha Noi) 澄んだブロスに牛肉または鶏肉、薬味は控えめ ハノイ旧市街
サイゴン式(pho Sai Gon) 甘めのスープ、もやし・バジル・ライム等の薬味を大量に添える ホーチミン市全域

2026年フォーフェスティバルの全容

2026年3月20日に開幕したフォーフェスティバル2026は「ベトナムフォー——現代に生きる遺産」をテーマに、ニンビン省で3日間開催された。約50のブースが出展し、フォーの歴史展示、職人による実演、文化交流イベントが行われた。

項目 詳細
開催期間 2026年3月20〜22日
会場 ニンビン省
テーマ 「Vietnamese Pho — A Living Heritage in the Modern Era」
出展ブース数 約50
主なプログラム フォー起源の再現劇、「ヴァンクー祠堂に帰る」イベント、職人実演

ベトナム料理文化協会のレ・ティ・ティエット副会長は「旧ナムディン省のフォー作りの技術は、全国に広がり、世界の友人たちにも届くよう進化してきた」と語った。

ヴァンクー・フォー協会と職人ネットワーク

2022年に設立されたヴァンクー・フォー協会は、全国各地で技術を継承する50人の職人を束ねる。フェスティバルを通じて若手職人の育成や伝統レシピのデジタルアーカイブ化にも取り組んでいる。

フォーはミシュラン・ビブグルマンに選ばれたベトナム料理店でも定番メニューだ。ロンドンのHOP VietnameseNYのAfter Edenなど海外のベトナム料理店でもフォーは看板メニューとして提供されており、ユネスコ登録が実現すれば国際的な認知度がさらに高まる。

現地の反応——メディアとSNS

ベトナム国営通信VietnamPlusは「フォーは単なる食べ物ではなく、ベトナムの文化的アイデンティティそのもの」と報じた。Nhan Dan紙は「フェスティバルが遺産の価値を確認し、世界的な認知を目指す具体的なステップ」と位置づけている。

SNSでは「フォーが世界遺産になるのは当然」という応援の声が大多数を占める一方、「商業化が進みすぎて伝統の味が失われないか」という懸念もベトナム人ユーザーから挙がっている。「ナムディン式が”本物”でハノイ式は違うのか」という発祥地論争も再燃し、活発な議論が続いている。

日本人観光客への影響——アクセスと費用

ニンビン省はハノイから車で約2時間、世界遺産チャンアンの景勝地としても知られる。ハノイからの日帰りツアーも多く催行されており、フォーの聖地巡礼と景勝地観光を組み合わせたプランが組みやすい。

フォーの価格は路上屋台で35,000〜50,000VND(約205〜295円)、レストランで70,000〜120,000VND(約410〜705円)。ハノイ旧市街のフォー専門店は早朝6時から営業する店が多く、朝食に本場のフォーを食べるのがベトナム旅行の定番体験だ。

食品業界への波及——ユネスコ登録がもたらすもの

ユネスコ無形文化遺産に登録されれば、フォーの国際的なブランド価値は大幅に上昇する。即席フォーの輸出市場は拡大が見込まれ、ベトナム政府が推進する「美食外交」戦略とも合致する。フェスティバルの主催者は、遺産保護とニンビン省の文化観光開発を連動させる方針を示している。

実用情報まとめ

項目 詳細
ユネスコ申請状況 書類作成・追加資料収集中(2026年中の提出を目指す)
フォー発祥地 ニンビン省ナムドン社ヴァンクー村
アクセス(ヴァンクー村) ハノイから車で約2時間
フォー価格帯 屋台: 35,000〜50,000 VND(205〜295円)
フォーフェスティバル 毎年3月(2026年は3月20〜22日、ニンビン省)
ヴァンクー・フォー協会 会員50人、全国の職人ネットワーク

まとめ——フォーの故郷を訪ねる旅

フォーがユネスコ無形文化遺産に登録されるかどうかは、早ければ2027年にも結論が出る。登録が実現すれば、ヴァンクー村は「フォーの聖地」として世界中から注目を集めるだろう。登録前の今こそ、観光客で混み合う前にナムディンの本場フォーを味わいに行く好機だ。

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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