メコンデルタの中心都市カントーで、夜の河岸が食の祭りに変わっている。2026年7月18日から26日まで、ニンキエウ河岸(ベン・ニンキエウ)で食の祭典「フオン・サック・タイドー2026(西都の香りと彩り)」が開かれている。「タイドー(西都)」はメコンデルタの盟主カントーの古い雅称だ。7月にベトナム南部を旅する人、あるいは南部在住で週末の行き先を探している人にとって、この9日間はカントーの夜が一年でもよくにぎわう時期にあたる。開催中の今なら、旅程に一晩差し込むだけで祭りの熱気に間に合う。
ニンキエウ河岸に40のブース、9日間の食の祭り
祭りの会場は、カントーの象徴として知られるニンキエウ河岸。ここに約40のブースが並び、ベトナム各地の料理、伝統工芸の村(ランゲ)の実演展示、そして各地のOCOP(一村一品)商品の紹介コーナーが集まる。主催は地元のチュックギー貿易観光振興有限会社で、7月18日の開幕式には、カントー市人民委員会のグエン・ティ・ゴック・ジエップ副主席をはじめ市の関係部局や地元行政が顔をそろえた。開幕にあわせて、地域の功労者家族20世帯への記念品贈呈も行われた。
目玉は料理そのものだけではない。毎晩、会場では芸能公演が組まれ、南部の女性の普段着「アオ・バーバー」をまとったファッションショーなど、メコンの暮らしを見せる演目が続く。食べて、見て、歩く。夜のニンキエウをまるごと使うつくりになっている。
なぜ今カントーが「夜」に力を入れるのか
この食フェスは単発の物産市にとどまらない。カントー市が夏の観光を底上げしようと進める夜間経済(キンテー・デム)振興の一手で、ニンキエウの歩行者エリアを「安全で洗練された、地域色のある夜の観光空間」に育てる狙いが開幕式でも語られている。
夜の消費を取り込む動きはベトナム各地で進み、首都でも夜間の営業時間を延ばす施策が出ている(ハノイの夜がもっと長くなる、旅行者が夜に使うお金を市が狙う)。ハノイが街全体で夜を延ばそうとするのに対し、カントーはニンキエウ河岸という一点に店と人を集め、期間を区切って夜のにぎわいを作る。地方都市が身の丈で夜経済を試すやり方だ。
カントーの夜は「三部構成」で回っている
旅程を組むうえで押さえておきたいのは、カントーの見どころが時間帯できれいに分かれていることだ。フェス期間中はこの三つを一日でつなげられる。
| 時間帯 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 早朝(5:00〜8:00) | カイラン水上市場 | 約100年の歴史を持つメコン最大級の水上市場。ニンキエウ河岸から船で約30分(約6km) |
| 夕方〜夜(18:00〜23:00頃) | ニンキエウ・ナイトマーケット | 屋台グルメの通りと買い物の通りが隣り合う夜市(ファンチューチン/ファンボイチャウ通り一帯) |
| 夜(7/18〜26限定) | 食フェス会場(ニンキエウ河岸) | 40ブース+毎晩の芸能公演。フェス期間だけの上乗せ |
ニンキエウ河岸そのものは19世紀に開かれ、いまは約7,000平方メートルのニンキエウ公園として整備されている。ふだんから夕方に人が集まる場所に、今は祭りの40ブースが乗っている状態だ。
メコン旅の一日をこう設計する
ここからがこの祭りを旅に生かす本題になる。カントーはホーチミン市から陸路で日帰りも不可能ではないが、この時期は一泊するだけで一日の使い方がまるで変わる。おすすめは逆算だ。
- 初日の夜:ニンキエウ河岸に直行し、食フェスの40ブースで各地の料理を食べ歩く。芸能公演の時間に合わせて河岸に立てば、演目と屋台を一度に楽しめる。
- そのまま夜市へ:フェス会場のすぐそばがナイトマーケット。ファンチューチン通りで軽く追加の夜食、ファンボイチャウ通りで土産や衣類を見て回る。
- 翌朝は水上市場:早朝5時台に船を出し、カイランの水上市場へ。日が高くなる前に戻れば、午前中にはカントーを発てる。
祭りが立つのは7月26日まで。この期間は河岸の40ブースと毎晩の公演が乗るぶん、夜のにぎわいが普段の週末を上回る。27日以降に行くと、ふだんのニンキエウ河岸と夜市に戻る。訪問日を一日ずらせるなら、26日までに寄せる価値がある。
OCOPと工芸が並ぶ、地方の売り場としての祭り
食フェスはグルメイベントであると同時に、メコンデルタの一次産品と加工品の見本市でもある。OCOP商品の紹介コーナーには、各地の農家や小規模事業者が手がける乾物・調味料・菓子といった品が並ぶ。伝統工芸の村の実演も加わり、来場者はその場で作り手と話しながら買える。
こうした「食×地方色×夜」の組み合わせは、メコンデルタの観光振興と相性がいい。同じデルタには扶南の古代港オケオのように歴史の層も残り(メコンの地に1500年、扶南の港町オケオが世界遺産へ動く)、食と歴史を束ねて旅行者に見せる素材はそろっている。カントーの食フェスは、その地域資源を夜の売り場に変える試みだ。作り手と直接話して買える場は、土産選びの実利にもつながる。
訪問メモ(住所・時間・アクセス)
| イベント名 | 食の祭典「フオン・サック・タイドー2026(西都の香りと彩り)」 |
|---|---|
| 会場 | ニンキエウ河岸(ベン・ニンキエウ)/カントー市ニンキエウ区 |
| 期間 | 2026年7月18日〜26日 |
| 内容 | 約40ブース(料理・伝統工芸・OCOP)+毎晩の芸能公演 |
| 主催 | チュックギー貿易観光振興有限会社 |
| 近くの夜市 | ニンキエウ・ナイトマーケット(屋台街と買い物通りが隣接、ファンチューチン/ファンボイチャウ通り一帯)、夕方〜23時頃 |
| 翌朝の寄り道 | カイラン水上市場(早朝5〜8時、河岸から船で約30分) |
| アクセス | ホーチミン市から陸路。会場はカントー中心部、宿の多くから徒歩圏 |
まとめ:7月26日までに、夜のニンキエウへ
カントーの食フェスは、河岸に集めた40ブースと毎晩の公演で、9日間だけ夜のにぎわいを引き上げる催しだ。旅行者の動き方は決めやすい。7月26日までにカントーで一泊を取り、初日の夜をニンキエウ河岸の祭りと夜市に、翌朝をカイランの水上市場にあてる。これでメコンの一日を朝から夜まで無駄なく使える。南部在住で週末が空いているなら、土曜の夕方に河岸へ向かうだけでいい。祭りが畳まれても河岸と夜市は残るが、40ブースと毎晩の公演が並ぶのは26日まで。この期間はカントーの夜歩きにいちばん向く。
