フエ発フォンニャ行き、世界遺産を1本で結ぶ遺産列車が就航

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ベトナム中部の古都フエと、洞窟群で知られるフォンニャを1本の列車で結ぶ「遺産列車」が、2026年9月1日に運行を始めた。運行するのはベトナム鉄道公社(VNR)。フエ発の下り便(HQ2)は朝7時15分に出発し、フォンニャの玄関口トーロック駅に11時55分着。折り返しの上り便(HQ1)はトーロック13時15分発、フエ17時25分着で、片道の所要はおよそ4時間半になる。運行開始は建国記念日(9月2日)の連休直前にあたり、8月29日〜9月5日の就航週は全席種が最大50%引きで売り出された。これまで車かバスが中心だった中部の世界遺産巡りに、車窓を眺めながら移動そのものを楽しめる選択肢が加わった格好だ。日本人旅行者にとっては、ダナン・ホイアン起点の南側ルートに続いて、フエ以北の世界遺産をまとめて回る導線になる。

目次

360度回る座席と車内シアター、8両編成の中身

編成は8両で、定員はおよそ304人。うち5両が360度回転するソフトシート車で、1両あたり56席。座席の向きを自由に変えられるため、山側・海側どちらの景色も逃さずに眺められる。

残りの3両が、この列車の性格を決めている。24席のVIP車はドリンクや軽食を備えた個室感のある空間。地域文化車(コミュニティ車)では民謡の生演奏や、フエ・クアンチの郷土料理、各地のOCOP認証(一村一品)特産品の販売が行われる。そしてベトナムの鉄道では初という娯楽車には、映画を上映する車内シアター、マッサージチェア、写真撮影用のアオザイレンタル、その場で採寸するスーツの仕立てサービスまで載る。目的地を音声で案内する仕組みも組み込まれ、移動中に次の観光地を予習できる。

運賃の具体額は公表されていないが、割引の枠組みははっきりしている。就航週(8月29日〜9月5日)は全席種が最大50%引き。9月6日から2026年末までは往路が15%引きで、復路にはさらに10%が上乗せされる。乗車券を持っているとクアンチ省などの提携店で5〜15%の割引も受けられる。予約はベトナム鉄道の公式サイトか、専用サイト「Journey to Wonders(世界遺産の旅)」から行う。

フエ〜フォンニャ約190km、5駅を1本で結ぶ鉄路

約190kmの線路は、フエ、ドンハー、ミーチャック、ドンホイ、トーロックの各駅を結ぶ。沿線に並ぶのは、フエの建造物群(1993年世界文化遺産)、クアンチ古城、南北分断の跡が残るヒエンルオン橋・ベンハイ川、地下要塞のビンモックトンネル、そして終点側のフォンニャ・ケバン国立公園だ。

フォンニャ・ケバンは2003年に世界自然遺産へ登録された石灰岩カルストの一帯で、世界最大の洞窟ソンドンを含む300以上の洞窟を抱える。フエやホイアン、ミーソンとあわせて「中部世界遺産ロード」として紹介されてきた地域で、その背骨を鉄道が一本で通したことになる。ベトナム中部では歴史遺産を観光資源として磨き直す動きが続いており、バオダイ帝が避暑したニャチャンの丘、仏式別荘「望月」「迎風」が再公開のように、往時の建築を再び開く事例も相次いでいる。

バス・車チャーターと何が違うのか

フエ〜フォンニャ間はこれまで、オープンツアーバスか専用車のチャーターが主流だった。移動手段ごとの性格を整理すると次のようになる。

手段 所要(片道の目安) 便数・自由度 車窓・車内 向いている人
遺産列車(HQ1/HQ2) 約4時間半 1日1往復・時刻は固定 360度座席・車内シアター・食事や物販 移動そのものを楽しみたい人
オープンツアーバス 約4〜5時間 複数便・比較的安価 座席からの車窓のみ 費用を抑えたい人
専用車チャーター 約3.5〜4時間 出発時刻・途中下車が自由 ドア・トゥ・ドア 少人数・家族連れ

列車の強みは、時刻が固定される代わりに、車内で過ごす4時間半が退屈にならない点にある。逆に、朝7時15分発・13時15分発の1日1往復に予定を合わせる必要があり、途中で気になった場所へ立ち寄る自由はない。フォンニャの洞窟を早朝から回りたい人や、帰りに寄り道したい人には、依然として車チャーターが向く。

地元と旅行者の受け止め

就航週には、車内での郷土料理づくり体験や、景品付きのゲームといった催しも組まれた。地元にとっては、これまで通過されがちだったクアンチ省が停車駅として観光動線に組み込まれる意味が大きい。VNRは今回の運行を「地域観光の連携を強め、より環境負荷の低い鉄道観光を広げる」取り組みと位置づけている。回転座席から中部の田園と海岸線を眺められる点や、車内でアオザイに着替えて撮影できる趣向に、旅行者の関心が集まっている。

日本人旅行者はどう使うと得か

使い方を具体的に考えると、狙い目は往復とも列車に乗ることだ。9月6日以降は往路15%・復路さらに10%の割引が効くため、同区間を往復するほど1回あたりの負担は下がる。フエで1〜2泊して市内の建造物群を回り、下り便でフォンニャへ移動、洞窟観光で1泊してから上り便で戻る、という2〜3泊の行程がはまりやすい。

時刻の面では、フエ7時15分発は前泊が前提になる。フエは空港のあるダナンから車で約2〜3時間なので、日本からの旅行者はダナン入り→フエ前泊→翌朝の列車、という組み立てが現実的だ。11時55分にトーロック着なら、その日の午後からフォンニャ洞窟やティエンドゥオン(天国洞)の見学に充てられる。荷物が多くなりがちな洞窟観光でも、座席が広く車内で休める列車は、長距離バスより体力を残しやすい。円換算できる運賃はまだ公表されていないため、費用は現地で最新の販売額を確認したい。

フォンニャの洞窟と、南のホイアン・ミーソンをつなぐ

フォンニャ側では、ボートで入るフォンニャ洞窟や、遊歩道の整うティエンドゥオンが代表的な見どころ。体力に余裕があれば、より奥のダークケーブでのアクティビティも組める。フエ側へ戻ったあとは、そのまま南下してダナン・ホイアン方面へ足を延ばす人も多い。連休期間は各地でイベントが重なり、ミーソン遺跡で9月2日だけ、チャム族の歌と舞の特別公演や、ホイアン旧市街で8/28開幕の創作週間、連休は工房と作り手をめぐる6日間のように、遺産と結びついた催しが同時期に開かれる。フエ以北を列車で、以南を車で、と役割を分けると、中部を無理なく縦断できる。

まとめ:狙うなら9月6日以降の平日

就航直後の連休は割引率こそ高いが、記念日と重なって混み合いやすい。落ち着いて乗るなら、割引が続く9月6日以降で、かつ観光地が空く平日を選ぶのが無難だ。フエとフォンニャという2つの世界遺産を、車窓と車内体験ごと1本の線でつなぐ新顔である。1日1往復という制約はあるが、移動を「消化」から「目的」へ変えたい旅行者には、有力な一手になる。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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