ベトナム政府観光総局が、国連の観光機関UNツーリズムの「世界最優秀観光村(Best Tourism Villages)」2026年版に、国内5つの村を推薦した。北部の山岳、中部の高原、南中部の海辺と、選ばれた土地は地形も暮らしも重ならない。ハロン湾やフエをめぐる王道ルートから一歩外れて、次にどの村へ足を延ばすか。カットカット、フーリエン、バイマウ、マンデン、ロー村の5つについて、魅力と日本から訪ねるときのアクセスを整理する。
推薦された5村と、UNツーリズムの選定
UNツーリズムの「世界最優秀観光村」は、農山漁村の景観・文化・生業を保ちながら観光を成り立たせている村を選ぶ取り組みで、地域資源の保全と住民の関わりが審査の柱になる。今回ベトナムが名前を挙げたのは、少数民族の棚田集落から400年続く漁村まで幅が広い。5村に共通するのは、大型の観光施設ではなく、そこに住む人の日常そのものを見せる構えだ。
カットカット(ラオカイ)—サパから3km、黒モン族の棚田と手仕事
サパ中心部から南へ約3km、谷側へ下る道の先にある黒モン族の集落。石畳の小道が斜面を谷へと下り、その両側を棚田が覆う。亜麻を織り、銀を彫る手仕事が今も暮らしの中に残っている。
行き方は、下り坂を30〜40分歩くルートのほか、タクシーやバイク、トレッキングツアーでも入れる。晴れた日は道すがら棚田の全景が開ける。ハノイからはラオカイまで列車、あるいは車やバスで5〜6時間かけてサパに入る。サパ周辺の村に腰を据える旅の空気は、フィリピン人画家がサパの村に10か月滞在した記録にもにじむ。
フーリエン(ランソン)—雨季は湖、乾季は草原に変わる谷
ランソン省フールンのフーリエン自然保護区にあり、ランソン・ユネスコ世界ジオパークの中に位置する。高床式の造りをまねた40軒ほどの民宿が受け皿で、ノンズン湖でのカヤックや、谷でのキャンプが楽しめる。宿は素朴なホームステイが中心で、個室が1泊10ドル前後から見つかる。
近くのドンラム草原は、7〜10月の雨季になると水位が上がって一面の湖に変わり、「東北のハロン湾」と呼ばれる。乾季は草原に戻り、乗馬や野営の場になる。ハノイから車で約3時間。同じランソンの山あいでは、秋にブドウや栗を摘む味覚の旅も広がっている(ハノイから3時間、ランソンで摘む味覚旅)。
バイマウのニッパヤシ林(ホイアン近郊)—竹籠舟で分け入る水路
ホイアン旧市街から約3〜4km、トゥボン川の河口の汽水域に広がるニッパヤシ(水椰子)の林。行政区分では現在ダナンに属する。細い水路が迷路のように入り組み、その間を竹籠舟(トゥンチャイ)で進む。
籠舟観光は2009年に始まり、船頭が舟を独楽のように回す実演が名物になっている。所要は30〜45分ほどで、料金は入場30,000ドン(約180円)に加え、舟1艇150,000ドン(約880円、2人乗り+漕ぎ手1人)が目安。日差しが弱く水路が涼しい午前中が過ごしやすい。ホイアン旧市街の散策と半日で組み合わせられる近さも使いやすい。
マンデン(中部高原)—木の上に眠るツリーハウスと霧の松林
中部高原の旧コントゥム、行政再編でクアンガイ省に属することになった高原の村。標高はおよそ1,100〜1,200mで、松林と湖と滝が続く冷涼な気候から「第二のダラット」と呼ばれる。
ダッケ湖のほとりには、木の幹や柱の上に建てたツリーハウスが並ぶ。ジップライン、サイクリング、森の中での瞑想などが用意されている。最寄りはプレイク空港で、そこから約120kmの山道をたどる。暑さを避けて標高の高い森で過ごしたい旅程に向く。
ロー村(ダクラク/旧フーイエン)—椰子並木の路地が海へ続く漁村
ダクラク省(旧フーイエン)のホアヒエップ地区、トゥイホアの南約13kmにある築400年の漁村。182ヘクタールほどの土地に赤瓦の家が並び、椰子の木が続く細い路地がそのまま砂浜と海へ抜ける。色鮮やかな籠舟と静かなビーチが村の顔だ。
宿泊施設は72軒ほど。2023年から住民主体の観光整備が進み、海辺の民宿や小さなカフェが少しずつ増えた。旧フーイエンの海の食は個性が強く、マグロの目玉を煮込んだ一皿が在住外国人の動画で話題になったこともある(海のヘッドライトと呼ばれるマグロの目玉煮込み)。最寄りはトゥイホア空港。
5村をつなぐのは、暮らしをそのまま差し出す観光
顔ぶれを並べると、山の棚田、ジオパークの谷、河口のヤシ林、高原の森、海辺の漁村と、景色はばらばらだ。ただ、観光客に見せる中身はどこも似ている。舟を漕ぐ、織りをのぞく、赤瓦の路地を歩く——完成された施設ではなく、住民の手仕事や生業が主役に据えられている。受け皿も大型リゾートではなく民宿やホームステイが中心で、UNツーリズムが保全と住民参加を重んじる選定基準とかみ合う。日本の旅行者にとっては、眺めるより手足を動かして加わる旅の相手として読める。
日本から組み込むなら—起点と季節の目安
北部のカットカットとフーリエンはハノイが起点になる。サパへは列車かバスで5〜6時間、フーリエンへは車で約3時間なので、ハノイ発の数泊で山と草原をまとめられる。中部のバイマウはダナン空港からホイアンへ入り、旧市街とあわせて半日。マンデンはプレイク空港から山道を走る行程になる。南中部のロー村はトゥイホア空港が近く、市街から南へ13kmで海に出る。
季節は土地で分かれる。フーリエンの草原は雨季(7〜10月)に湖景、乾季に乗馬と、見え方が入れ替わる。海辺のロー村やバイマウは雨の少ない時期が動きやすく、マンデンは標高が高く通年で涼しい。行きたい風景に合わせて時期を選ぶと外れが少ない。
参照元
VnExpress International — Vietnam nominates 5 candidates for World’s Best Tourism Village
VOV World — 5 Vietnamese villages to apply for UN Tourism’s Best Tourism Villages 2026
Tuoi Tre News — Fishing village in Vietnam’s Dak Lak nominated for world’s best tourism village award
