ダナンといえばミーケビーチとバーナーヒルズ――そんなイメージが変わりつつある。2026年、このビーチリゾート都市にサードウェーブコーヒーの「第三の波」が本格的に押し寄せている。ハンドドリップの飛行機便(フライト)で3温度帯を飲み比べるXLIII Coffee、自家焙煎ハニープロセスのLighthouse Coffee、おまかせスタイルのO2o First Roast。ベトナム産ロブスタやアラビカをスペシャルティグレードで提供する店が集積し、ダナンは「コーヒー目的で訪れる街」に変貌しつつある。
ダナンのサードウェーブ事情――なぜ今、ここで起きているのか
ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国だが、長らく輸出用ロブスタの大量生産が中心で、国内消費はコンデンスミルク入りの「カフェ・スア・ダー」が主流だった。ホーチミンやハノイでは2010年代後半からスペシャルティコーヒーの店が増え始めたが、ダナンは少し遅れてその波を受け取った。
2019年にXLIII Coffee(旧43 Factory)がミーアン地区にオープンしたのが転機だ。以降、Son Tra半島のLighthouse Coffee、バクミーアンのO2o First Roastと、自家焙煎・シングルオリジン・ハンドドリップを軸にした店が点在するようになった。ダナンの地理的な利点もある。カウダット(Cau Dat)やラムドン省のコーヒー産地から比較的近く、新鮮な豆が入手しやすい。
ダナン・サードウェーブカフェ7選
以下の7店は、それぞれ異なるアプローチでダナンのコーヒーシーンを牽引している。価格帯は2026年初頭の情報で、1ベトナムドン=約0.006円(1万ドン≒約60円)で換算している。
| 店名 | エリア | スタイル | 看板メニュー | 価格帯 | 価格帯(円換算) |
|---|---|---|---|---|---|
| XLIII Coffee | ミーアン(ミーケビーチ徒歩10分) | ハンドドリップ・フライト | Cau Datアラビカの3温度帯飲み比べ | 120,000〜180,000 VND | 約720〜1,080円 |
| Lighthouse Coffee Roaster | ソンチャ(An Hai Bac) | 自家週次焙煎 | ラムドン産ハニープロセス・ロブスタ | 75,000〜95,000 VND | 約450〜570円 |
| O2o First Roast | バクミーアン(Phan Tu通り) | おまかせプアオーバー | エチオピア・エアルーム+ベトナム産 | 90,000〜130,000 VND | 約540〜780円 |
| The Cups Coffee | 市内3店舗 | ダナン発チェーン | 塩コーヒー(ca phe muoi) | 45,000〜65,000 VND | 約270〜390円 |
| NAM House Coffee | ハイチャウ(Le Hong Phong通り) | 伝統フィン・ドリップ | 5分間フィン抽出のカフェ・スア・ダー | 25,000〜35,000 VND | 約150〜210円 |
| Cong Caphe | ハン川西岸(ドラゴンブリッジ近く) | ココナッツコーヒー | ロブスタエスプレッソ×冷凍ココナッツ | 55,000〜75,000 VND | 約330〜450円 |
| Caribou Food Truck | ミーケビーチ沿い(Vo Nguyen Giap通り) | テイクアウト | ビーチ朝コーヒー+バインミー | 100,000 VND以下 | 約600円以下 |
注目3店の詳細レビュー
XLIII Coffee(旧43 Factory)――ダナンのサードウェーブを語るなら、この店を避けて通れない。Mahlkonig K30、Ditting 807、La Marzocco Linea Xといったプロフェッショナル機材を揃え、カウダット産アラビカをストーンフルーツとホワイトフラワーのノートで引き出す。店内は「ミニマリストで図書館のように静か」。2019年のオープン以来、ダナンのスペシャルティコーヒー基準を引き上げ続けている。
Lighthouse Coffee Roaster――Son Tra地区のレンガ造り2階建て。毎週自家焙煎を行い、ラムドン省産のハニープロセス・ロブスタをダークチェリーとパイプタバコのノートで仕上げる。夕暮れ時の光が店内に差し込む「ゴールデンアワー」は格別で、写真好きにもたまらない空間だ。75,000 VND〜という価格はXLIIIよりリーズナブルで、初めてベトナム産スペシャルティロブスタを体験するなら最適の一杯。
O2o First Roast――アパートメントの一室を改装した約8席の小さな店。バリスタが「おまかせ」でその日のベストなプアオーバーを淹れてくれるスタイルだ。エチオピア・エアルームとベトナム産シングルオリジンを交互に提供し、会話をしながらゆっくりコーヒーと向き合う。効率より体験を優先する姿勢は、ハノイのCafe Giangでエッグコーヒーを待つ時間に似た豊かさがある。
現地コーヒー業界の声
ダナンのコーヒー業界では、サードウェーブの到来を歓迎しつつも、ローカルの味覚との調和が課題として挙がっている。
The Cups Coffeeはダナン初の「地元発スペシャルティチェーン」として、塩コーヒー(ca phe muoi)というダナン名物をスペシャルティグレードのブレンドで提供する。ローカルの支持を得ながら品質を上げるアプローチは、海外のサードウェーブとは異なる進化の形だ。
一方、NAM House Coffeeの存在は、伝統的なフィンドリップ文化がサードウェーブと共存していることを示す。黄色い壁、タイル張りの床、青い鎧戸というコロニアル建築の中で、5分間かけてフィンから落ちるコーヒーを待つ体験は、ダナンの「もうひとつのコーヒーカルチャー」そのものだ。
Cong Capheのハン川沿い店舗は、土曜夜にドラゴンブリッジが火を噴く光景を眺めながらココナッツコーヒーを飲めるロケーション。チェーン店ながら、この1店舗だけは訪れる価値があるとローカルも認めている。
日本人旅行者へのおすすめルート
ダナンのカフェ巡りは半日あれば充実したルートが組める。午前中にXLIII Coffeeでハンドドリップのフライトを体験し、Grabで6分移動してLighthouse Coffeeのテラスでロブスタのハニープロセスを試す。午後はハイチャウ地区のNAM Houseで伝統フィンドリップに触れ、夕方にCong Capheのハン川テラスでドラゴンブリッジの夕景とココナッツコーヒーを楽しむ。
ミーケビーチ滞在なら、早朝にCaribou Food Truckでコーヒーとバインミーを調達してビーチを散歩し、The Cups Coffeeの塩コーヒーでブランチというコースもいい。フーコック島のニョクマムを訪ねるような食の探究心があるなら、ダナンのコーヒー巡りは間違いなくフィットする。
ベトナムコーヒー産業への波及効果
ダナンのサードウェーブは、ベトナムコーヒー産業全体にとっても意味がある。従来、ベトナム産ロブスタは「安価な大量生産品」というイメージが強かったが、Lighthouse CoffeeやThe Cups Coffeeのように、ハニープロセスやライトロースト手法でロブスタのポテンシャルを引き出す動きが広がっている。
ダナンが「コーヒー観光都市」として認知されれば、周辺産地であるラムドン省やソンラー省の農家にもフェアトレード的な恩恵が及ぶ。ビーチリゾートとスペシャルティコーヒーの組み合わせは、バリ島(インドネシア)やチェンマイ(タイ)と並ぶ東南アジアのコーヒーツーリズムの新しい拠点になる可能性がある。
実用情報まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| XLIII Coffee | ミーアン地区、ミーケビーチ徒歩10分 / 120,000〜180,000 VND |
| Lighthouse Coffee | 12 Đình Nghệ, An Hai Bac, Son Tra / Grabで6分 / 75,000〜95,000 VND |
| O2o First Roast | Phan Tu, Bac My An / Grabで8分 / 90,000〜130,000 VND |
| The Cups Coffee | 233 Nguyen Van Thoai / 42 An Thuong 30 / 183 Le Duan / 45,000〜65,000 VND |
| NAM House Coffee | 15/1 Le Hong Phong, Hai Chau / 25,000〜35,000 VND |
| Cong Caphe | 39-41 Nguyen Thai Hoc(ドラゴンブリッジ近く)/ 55,000〜75,000 VND |
| Caribou Food Truck | ミーケビーチ沿い Vo Nguyen Giap通り / 100,000 VND以下 |
| 移動手段 | Grab推奨(市内移動5〜15分、20,000〜40,000 VND) |
| 通貨目安 | 1万VND ≒ 約60円(2026年初頭) |
まとめ
ダナンは、ビーチリゾートにサードウェーブコーヒーという新しいレイヤーを加えた街だ。XLIII Coffeeの精密なハンドドリップ、Lighthouse Coffeeのハニープロセス・ロブスタ、O2oのおまかせプアオーバー、The Cups Coffeeの塩コーヒー、NAM Houseの伝統フィン。1つの都市の中にベトナムコーヒーの過去・現在・未来が共存している。ビーチとコーヒー、両方楽しめる街は東南アジアでもそう多くない。
