ホーチミン市1区、グエンフエ歩行者天国のど真ん中に、9階建ての「垂直カフェ村」がある。42 Nguyen Hue――通称Cafe Apartment。1950〜60年代に建てられた居住用アパートが、2015年のグエンフエ歩行者天国化を機に50店舗以上のカフェ・ショップ・クリエイティブスペースに生まれ変わった。Lonely Planet、CNN Travelにも取り上げられ、TikTokでは5階「Saigon Oi Cafe」のバルコニーからの夕景が定番コンテンツになっている。階段を上がるたびに違う世界が広がるこのビルを、フロアごとに案内する。
Cafe Apartmentの歴史――米軍将校の宿舎からカフェ村へ
42 Nguyen Hueの建物は1950〜60年代に建設された。当初はアメリカ軍将校の宿舎として使われ、戦後はベトナム政府関係者の家族が居住した。築半世紀を超える建物は老朽化が進んでいたが、2015年にグエンフエ通りが歩行者天国に再整備されたことで状況が一変する。
取り壊すのではなく、風化したレンガやむき出しの配管をそのまま残し、各部屋を独立した店舗に転換した。サイゴンのヘリテージを保存しながら新しい用途を与えるというアプローチは、ホイアンの旧市街保存にも通じる考え方だ。結果として生まれたのが、1つのビルの中に50以上のカフェが共存する「垂直カフェ村」だ。
フロア別ガイド――9階建ての全貌
| 階 | 注目スポット | ジャンル | 価格目安 | 価格(円換算) |
|---|---|---|---|---|
| 1F | Fahasa Bookstore | 書店(入場無料) | ― | ― |
| 2F | Gom x Nicotin Cafe & Workshop | カフェ+陶芸ワークショップ | 50,000〜100,000 VND | 約300〜600円 |
| 3F | Meraki Cafe / Dosh Donuts | カフェ・ドーナツ | 40,000〜80,000 VND | 約240〜480円 |
| 4F | % Arabica Coffee | 日本発スペシャルティコーヒーチェーン | 65,000〜120,000 VND | 約390〜720円 |
| 5F | Saigon Oi Cafe | バルコニー席・ココナッツコーヒー | 60,000〜100,000 VND | 約360〜600円 |
| 6F | Madam Quyen / Good Day Coffee | レストラン・カフェ | 50,000〜120,000 VND | 約300〜720円 |
| 7F | Thinker & Dreamer | アートカフェ・エッグコーヒー | 50,000〜90,000 VND | 約300〜540円 |
| 8F | Po Coffee | レトロカフェ(戦後風インテリア) | 55,000〜60,000 VND | 約330〜360円 |
| 9F | The Letter / Good Day Coffee | ルーフトップビュー | 50,000〜100,000 VND | 約300〜600円 |
各フロアには南向き(グエンフエ通りを見渡すバルコニー側)と北向き(静かな裏手側)の2ウィングがある。写真映えを狙うなら南側、ゆっくり作業したいならWi-Fi完備の北側の店を選ぶといい。
注目カフェ3選の詳細
Saigon Oi Cafe(5F)――Cafe Apartmentの「顔」とも言える存在。木のフロア、鉢植え、ランタンが並ぶ店内から一歩バルコニーに出ると、グエンフエ歩行者天国の全景が広がる。TripAdvisorで600件以上のレビュー(4.1〜4.2点)を集め、ゴールデンアワー(16:00〜18:00)のバルコニー席はTikTokの「ホーチミン定番ショット」になっている。看板メニューはココナッツコーヒー。バルコニー席は追加10,000〜30,000 VND(約60〜180円)のチャージがかかる場合がある。
% Arabica Coffee(4F)――京都発のスペシャルティコーヒーチェーンがベトナム初出店(2024年)。北部ベトナムの竹を使ったオリジナル内装が特徴で、日本人旅行者にはなじみの味を異国の空間で楽しめる面白さがある。営業時間は7:00〜22:00。ハノイのCafe Giangのエッグコーヒーとは対照的なクリーンなテイストで、両方飲み比べるのも一興だ。
Po Coffee(8F)――ベトナム戦後のレトロな美学を内装に再現した個性派カフェ。塩ミルク抹茶(55,000 VND)やパイナップル人参コーヒー(60,000 VND)など、ここでしか飲めないオリジナルメニューが揃う。古いポスターや年代物の家具に囲まれた空間は、ホーチミンの時間を数十年巻き戻したような感覚になる。
訪問者・SNSの反応
Cafe Apartmentは、Instagram・TikTok・小紅書(RED)で「ホーチミンに行ったら絶対」と語られるスポットだ。外観が特にフォトジェニックで、夜になるとLEDで照らされた各部屋の窓がカラフルに光り、ビル全体がアートインスタレーションのようになる。
旅行者のレビューでは「3〜4時間は余裕で過ごせる」「1つのビルで複数のカフェをハシゴできるのが楽しい」という声が多い。一方で「週末の夕方はかなり混む」「エレベーターが遅い(1回3,000 VND)ので階段推奨」という実用的なアドバイスも。
日本のメディアでも『地球の歩き方』やトラベル系YouTuberが紹介しているが、フロアごとの詳細な情報はまだ少ない。筆者としては、定番のSaigon Oi Cafeだけでなく、8FのPo Coffeeや7FのThinker & Dreamerまで足を延ばすことを強くおすすめする。
日本人旅行者への実践的アドバイス
Cafe Apartmentを最大限楽しむなら、時間帯の使い分けがカギだ。
午前(9:00〜11:00)はどのフロアも空いていて、写真撮影にも理想的。4Fの% Arabicaで朝のフラットホワイトを飲んでから、各階を散策するルートがおすすめだ。午後(16:00〜18:00)はゴールデンアワー。5FのSaigon Oi Cafeのバルコニーから夕日を眺めるのが最大のハイライトになる。夜(19:00〜22:00)はビル外観のLEDライティングが始まり、歩行者天国側からの撮影が映える。
1区の中心にあるため、KKV旗艦店やPier Dessertと組み合わせた半日ルートが組みやすい。予算はドリンク2〜3杯で200,000〜400,000 VND(約1,200〜2,400円)が目安だ。
「垂直カフェ村」モデルの波及
Cafe Apartmentの成功は、ホーチミンの都市開発に一つのモデルを提示した。古い建物を壊すのではなく、カフェやクリエイティブスペースとしてリノベーションする動きは、2区や3区にも広がっている。
旅行産業の視点では、「1つのビルで半日楽しめる」というコンパクトな観光資源は、短期滞在の旅行者にとって非常に効率的だ。東京の裏原宿や台北の華山1914のような「集積型カルチャースポット」のベトナム版として、ダナンやハノイにも同様のコンセプトが波及する可能性がある。
アクセス・実用情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 住所 | 42 Nguyen Hue, District 1, Ho Chi Minh City |
| 建物 | 9階建て、50店舗以上 |
| 入場料 | 無料(エレベーター利用時 3,000 VND ≒ 約18円) |
| 営業時間 | 各店舗により異なる(多くは7:00〜8:00開店、22:00〜23:00閉店) |
| 平均予算 | ドリンク2〜3杯で200,000〜400,000 VND(約1,200〜2,400円) |
| おすすめ時間帯 | 午前 9:00〜11:00(空いている)/ 夕方 16:00〜18:00(ゴールデンアワー) |
| アクセス | タンソンニャット空港からGrabで約30分(150,000〜200,000 VND) |
| 最寄り | グエンフエ歩行者天国沿い、ベンタイン市場から徒歩10分 |
| 注意点 | 週末夕方は混雑。バルコニー席は追加チャージの場合あり |
まとめ
42 Nguyen HueのCafe Apartmentは、1960年代の居住用アパートが50以上のカフェに変貌した「垂直カフェ村」だ。京都発の% Arabica、TikTok聖地のSaigon Oi Cafe、レトロ空間のPo Coffee――階段を上がるたびに異なる世界が広がる。ゴールデンアワーのバルコニーからグエンフエ通りを見下ろす瞬間は、ホーチミン旅行のハイライトになるだろう。入場無料、ドリンク1杯300円台から。ホーチミンに来たら、まずここで1杯。
