直径10センチ近いマグロの目玉が、まるごと器に沈んでいる。ベトナム語で「đèn pha đại dương(海のヘッドライト)」と呼ばれるこの一皿を、ホーチミン在住のイタリア人男性が実食する動画が、7月に入って150万回以上再生された。地元ベトナム人でも「見た目がこわい」と敬遠する珍味に、外国人が真っ先に手を伸ばして「うまい」と言い切る——この逆転が受けた。
在住イタリア人ジョーの実食動画が150万再生された
Dan Tri(2026年7月23日付)が伝えたのは、42歳のイタリア人ジュゼッペ・ディ・ナターレさん、通称ジョーの体験だ。彼はホーチミン市内の食堂で、器の中央に据えられた巨大なマグロの目玉と対面した。最初はためらったものの、ひと口食べて評価が一変したという。「目の周りの身はやわらかく脂がのっていて、コラーゲンのような食感。スープは熱々でスパイスとハーブが香り、まったくしつこくない」——ジョーがそう語る場面が、再生数を押し上げた。地元で敬遠されがちな料理を外国人が絶賛する構図は珍しくない。カントーの激辛麺が海外の動画で火がついた例を涙の激辛7段階ラーメンの元祖はカントーのOmegaだったで取り上げたが、共通するのは「見た目や刺激の強さがSNSで拡散フックになる」点だ。写真一枚で会話が生まれ、旅の思い出として語りやすい。
ナツメ・クコで臭みを抜き、眼球まわりのゼラチン質まで味わう
この料理の正式名称は「mắt cá ngừ đại dương(大目マグロの目玉)」。丸ごとの目玉を薬膳の材料とともに土鍋でじっくり煮込む。ナツメ(táo đỏ)やクコの実(kỷ tử)、生姜やスパイスを加えて臭みを抜き、身と眼球まわりのゼラチン質を一体で味わう。目玉煮込みは薬膳スープの料理であって、生臭さを想像して身構える必要はない。この点を知っているだけで注文のハードルは下がる。見た目のインパクトが強い一方、食べれば濃厚な旨みと薬膳スープの相性のよさに驚く、というのが実食者の共通した反応だ。
フーイエン発祥、2025年の再編で現ダクラク省の名物に
マグロの目玉煮込みは、もともと中南部フーイエン省、とくに港町トゥイホア一帯の名物として知られてきた。フーイエンはベトナム有数のマグロ延縄漁の拠点で、水揚げされたマグロを解体する過程で出る目玉を、捨てずに料理へ回す食文化が根づいている。頭一つ分から取れる目玉は限られ、鮮度が落ちやすいため、産地に近いほどおいしく食べられる。注意したいのは行政区分だ。2025年の全国的な省・市の再編で、フーイエン省はダクラク省に統合された。トゥイホアの市場や食堂は「旧フーイエン」の名物として案内されることもあれば、現在の住所表記では「ダクラク省」となっている場合もある。地図アプリで検索する際は両方の呼び方を頭に入れておくと迷いにくい。
1杯80,000〜150,000VND、産地なら気軽に食べ比べできる
価格帯を、確認できた数値だけで整理する。1杯あたり80,000〜150,000VNDが目安で、目玉の大きさや店の立地で幅が出る。1円=170VND換算だと、およそ470〜880円にあたる。日本のマグロ専門店で希少部位を頼むことを思えば、産地でこの値段は挑戦のハードルが低い。派手な見た目の郷土料理は広告費をかけずに拡散する力を持ち、旧フーイエンのように主要観光ルートから外れた地域ほど、こうした一皿が来訪動機を作る余地は大きい。マグロの解体という一次産業の現場と、それを食べに行く観光が地続きな点も産地の強みだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料理名 | mắt cá ngừ đại dương(マグロの目玉煮込み)/通称「海のヘッドライト」 |
| 主な産地 | 旧フーイエン省トゥイホア一帯(現ダクラク省) |
| 価格帯 | 80,000〜150,000VND(約470〜880円) |
| 調理法 | 土鍋煮込み。ナツメ・クコ・生姜・スパイスで薬膳仕立て |
| 話題の起点 | 在住イタリア人ジョーの実食動画が150万再生(2026年7月) |
トゥイホアで「mắt cá ngừ」と伝えれば通じる
トゥイホア一帯で探すなら、マグロ料理を看板に掲げる食堂で「mắt cá ngừ」と伝えれば通じる。土鍋でひとり分から出す店が多く、白飯や香草と合わせるのが一般的だ。目玉は加熱に時間がかかるため、提供まで待つことを見込んで注文したい。ホーチミン市内でも中南部料理を扱う店で出す場合があり、ジョーが体験したのもこのパターンだった。産地まで行かずに試したい人は、市内での提供店を事前に調べておくとよい。珍しい海鮮を市場や漁村で安く味わう楽しみ方は、コンダオ島の例を月ガニにヴーナン貝、コンダオ島の珍海鮮を朝市と漁村で安く食べるでも紹介している。昼の時間帯に景色とともに郷土料理を楽しむ動きは各地で広がっており、この夏通いたい食スポットは懐かしさと絶景、この夏ベトナムで通いたい昼の食スポットにまとめた。中南部を旅程に組むなら、1杯500円前後のこの一皿を一度の食事に加える価値はある。
