ベトナムのガソリン価格が、8月6日午後3時から下がった。全国標準となったE10ガソリン(RON95系)の上限価格は1L=22,324ドン、日本円にしておよそ134円。前週から1,035ドン、円にして約6円の値下げだ。1日に何度もタクシーや配車アプリで移動する出張者にとっては、少しずつ効いてくる変化になる。ここでは単なる相場速報にとどめず、なぜこのタイミングで動いたのか、価格はどんな仕組みで決まるのか、そして在住者・出張者の交通費や物価にどう響くのかを整理する。
(円換算は2026年8月時点の為替、1,000ドン≒6.0円で計算。以下同じ。)
E10は1L134円、E5は130円まで下がった
今回の改定で下がったのはガソリンだけではない。工業向けの重油も下がった一方、ディーゼルは逆に上がっている。主要4品目を並べると次の通り。
| 品目 | 改定後の上限価格 | 円換算(目安) | 前週比 |
|---|---|---|---|
| E10 RON95-III(乗用車の主力) | 22,324ドン/L | 約134円/L | ▲1,035ドン(約6円) |
| E5 RON92(旧型バイク向け) | 21,728ドン/L | 約130円/L | ▲1,160ドン(約7円) |
| 0.05Sディーゼル | 27,544ドン/L | 約165円/L | △1,080ドン(約6.5円) |
| 180CST重油 | 16,391ドン/kg | 約98円/kg | ▲587ドン(約3.5円) |
ガソリン満タン40Lで考えると、E10なら1回の給油でざっくり240円ほど安くなる計算だ。レンタバイクやレンタカーで地方を回る人ほど、この差は積み上がる。日本のレギュラー(1L=170円前後)と比べれば、E10の134円という水準はまだかなり割安に映る。
ガソリンは下がり、ディーゼルは1L165円に上がった「逆転」
表を見て意外に思うのは、ディーゼルがガソリンより高いことだ。E10が134円なのに対し、ディーゼルは165円。日本の感覚だと「軽油は安い」だが、いまのベトナムは逆転している。今回もガソリンと重油が下がるなかでディーゼルだけが1,080ドン値上がりした。
背景には、世界市場でディーゼル(中間留分)がガソリンより需給が締まりやすいこと、そしてベトナムのガソリンにはエタノールが混ざっている事情がある。E10は10%が国産エタノール由来で、原油由来100%のディーゼルとは値動きの連動先が違う。トラック輸送や物流はディーゼルで動くため、この上昇はいずれ食品や日用品の物価にじわりと乗ってくる。ガソリンが下がっても現地の物価全体がすぐ軽くなるとは限らない、という点は押さえておきたい。
価格は毎週木曜に動く。次の改定は8月13日
ベトナムのガソリン価格は、月に一度まとめて決まるわけではない。政令80/2023号にもとづき、商工省と財務省が原則として7日ごと、毎週木曜に上限価格を見直す。反映は当日の午後3時から。今回の8月6日も木曜で、この定例改定にあたる。つまり次に動くのは1週間後の8月13日だ。
さらに、基準価格が大きく振れたときは木曜を待たずに動く仕組みもある。下落が10%以上なら即時反映、上昇が15%以上なら翌日反映という例外ルールだ。長期滞在で車やバイクを日常的に使うなら、木曜の発表を軽くチェックする習慣をつけておくと、値下がり局面での給油タイミングを外しにくい。原油が下がっている週は、木曜以降にタンクを満たすほうが得になりやすい。
6月に全国のRON95が消えた──E10時代の給油で迷わないために
「E10って何」と戸惑う人もいるはずだ。ベトナムは2026年6月1日から、従来のRON95を全国でE10へ切り替えた。E10はエタノールを10%混ぜたバイオ燃料で、いまスタンドに並ぶのはE10 RON95系とE5 RON92の実質2択になっている。多くの現行車・バイクはメーカーがE10対応をうたっており、通常の使い方で問題は出にくい。
一方、古い年式のバイク向けにE5 RON92は2030年末まで残る。レンタバイクを借りる出張者は、給油口の色表示や係員の案内に従えばよく、迷ったら車体に対応燃料の記載があるか確認すれば足りる。価格で見ればE5のほうがE10より1L4円ほど安いが、対応車種を優先するのが基本だ。
出張者の足への影響──Grab・タクシー・Xanh SMの読み方
では、この値下げで移動コストは実際どれだけ楽になるのか。正直に言えば、1回のGrab乗車で体感できるほどではない。市内5kmで50,000〜60,000ドン(約300〜360円)というGrab運賃のうち、燃料が占める割合は一部にすぎず、1L6円の下落がそのまま運賃に反映されるわけではない。効いてくるのはむしろ、自分でハンドルを握るレンタカー・レンタバイク移動や、日をまたいで積み上がる配車アプリ利用の総額のほうだ。
もう一つ見逃せないのが、電動化の流れだ。VinFast系の電動配車Xanh SMがGrabを抜いてシェア1位(約40〜44.7%)に立ち、EVタクシーが主役に躍り出た。EVはそもそもガソリン・ディーゼルの価格改定と無縁で、燃料高が続く局面ほど競争力が増す。ディーゼルが165円へ上がるいまの構図は、電動シフトを静かに後押しする材料でもある。出張者としては、ガソリン相場に一喜一憂するより、EV配車も含めて足を選べる状況になってきた、と捉えるのが実利的だ。
原油安の週は木曜以降に給油、足はEVも選べる時代へ
8月6日の改定で、E10ガソリンは1L=22,324ドン(約134円)へ約6円値下がりし、E5は約130円まで下がった。ただしディーゼルは165円へ逆行し、物流経由で物価に響く余地は残る。価格は毎週木曜に動き、次回は8月13日。原油安が続く週は、木曜以降の給油や地方ドライブを少し後ろ倒しにするだけで得をしやすい。EV配車という燃料相場に左右されない選択肢も広がっており、移動手段を一つに固定しないことが、いまのベトナムでは賢い。
参照元
- Vietnam Plus「Vietnam cuts retail fuel prices on August 6」(2026年8月6日)https://en.vietnamplus.vn/vietnam-cuts-retail-fuel-prices-on-august-6-post349607.vnp
- Vietstock「Việt Nam cuts retail fuel prices on August 6」https://en.vietstock.vn/2026/08/viet-nam-cuts-retail-fuel-prices-on-august-6-970-640563.htm
- 政令80/2023号(価格改定の周期=毎週木曜、例外ルール)に関する報道
- E10全国切替(2026年6月1日、通達50/2025/TT-BCT)に関する報道
