市の冠水マップが14日で消えたハノイ、4日で作られた地図を開く

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ハノイで雨が強まると、道が通れるかどうかは着いてから分かる。VnExpressが9月23日に伝えた記事では、9月17日の朝にハドンから出た大学1年生のDuy Phucさんが、いつもの道を選んでトーフー通りで水に入り、バイクのエンジンが止まって押して戻った。通り過ぎた車が立てた波で本人ごと転倒している。「冠水しているとわかっていたら別の道にしたか、休講を頼んでいた」と話している。

この「着いてから分かる」を埋めようと、日本の大学院に籍を置くベトナム人エンジニアが4日で地図サイトを作った。旅行者や出張者が雨の午後にバイクやGrabで動くかを決める材料にもなる。9月26日時点でどこまで使えるのか、実際に開いて確かめた。

目次

9月17日のハノイで、住民が見ていた画面はばらばらだった

SNSのグループは道路より先に溢れていた

ロンビエン区のVu Anhさん(52)は、大雨のときはSNSのグループを確認するようになった。ただ同じ区間について、深く冠水していると書く人と、普通に流れていると書く人が並ぶ。「情報は多いが、どれが正確なのか分からない」。以前はハノイ下水道会社が作った冠水地図アプリのHSDC Mapsを使っていたが、新しく水が出た場所の反映が間に合わなかった。

市の公式アプリの冠水マップは14日で消えた

Anhさんが次に試したのが、市の総合アプリiHanoiに載った「雨と冠水のマップ」機能だった。9月17日の雨のあいだ、雨も冠水も起きている地域が地図上では乾いた表示になっていると複数の利用者が指摘した。このミニアプリは公開から14日でiHanoiから削除されている。VnExpressの記事は削除の理由を書いていないので、精度への指摘と削除を因果でつなぐことはできない。

配車ドライバーが頼るのはラジオと仲間のチャット

配車アプリのドライバーXuan Ninhさん(23)にとって役に立つのは、交通情報ラジオのVOV Giao thôngと、ドライバー同士のグループチャットだという。誰かが冠水区間に出くわすと位置と写真を流し、後続が避ける。通報のない冠水地点で動けなくなり配車をキャンセルして以降、Ninhさんは依頼を受ける前にチャットか現地のライブ配信を見るようになった。

4日で作られた「Nước Lên」は何を表示していたか

作ったのはJAISTのAIエンジニア

作者のNguyen Dinh Mauさんは、日本の北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)のAIエンジニアだ。9月初めの大雨の時期にハノイへ戻り、タイハー通りから19-8病院へ親族を見舞いに行く途中、ズボンをまくって膝までの水を歩いた。渋滞は既存の交通アプリが警告してくれるのに、冠水の情報は報道とSNSに散っていた。そこから4日で、冠水情報を集約するサイト「Nước Lên(水が上がる)」を組み立てた。公開したのは9月17日、ハノイが大雨に入った日で、Mauさんによれば数十万回のアクセスがあった。

同じ地点の複数通報を突き合わせて偽情報を落とす

データは報道、VOV Giao thông、気象、SNS、利用者の投稿から集める。AIが文面から場所と冠水の深さを読み取り、地図に置く。古い写真や誤報をふるうために、同じ地点の複数の通報を突き合わせ、報道と照合し、行政機関や専門機関のデータを優先する、とMauさんは説明している。本人も、現在の版は冠水地点を示すだけで代替ルートの自動提案には至らず、市民やSNSの情報には誤りが混じるため参考にとどまる、と認めている。

9月26日に開いたら、冠水回避ナビが試験で動いていた

データ源は5つ、深さは3段階で色が変わる

実際にnuoclen.comを開くと、サイト自身がデータ源を挙げている。国家気象予報センター(VNMHA)の速報とレーダー、市の観測点と冠水地点、VOV Giao thông、報道、そして走っている人の通報。地図の下地はOpenStreetMapで、雨雲レーダーは1時間から24時間まで切り替えられる。通報は「くるぶしまで」「膝まで」「車輪を超える」の3段階で、深いほど色が濃い。今日まだ通報がないが冠水しやすい地点は別の色の点で置かれる。予報はせず、いま起きていることだけを出す設計だ。

記事の時点と今の画面には差がある

9月23日の記事は「代替ルートの自動提案はまだできない」としていたが、9月26日の画面には「Dẫn đường tránh ngập(冠水を避ける案内)」というボタンがあり、試験(Thử nghiệm)の表示付きで、バイク・車・徒歩を選んで目的地を入れられる状態になっていた。通報地点を避けて経路を引き、走行ルートに冠水が出たら通知する設定もある。開発が数日単位で動くので、記事で読んだ機能と実際の画面はずれる前提で開いたほうがいい。個人利用は無料で、広告もアクセス解析も置かないと明記されている。

雨の日にハノイで動く前、どの画面を見るか

4つの窓口の役割は重なっていない

見るもの 分かること 入口
Nước Lên いま通報がある冠水地点と深さ、雨雲レーダー nuoclen.com(ハノイのみ・ベトナム語)
VOV Giao thông 走行中の人からの交通・冠水情報 vovgiaothong.vn/ハノイ 024 3791 9191
国家気象予報センター 大雨と浸水の公的な警報 nchmf.gov.vn
iHanoi 市の総合アプリ(冠水のミニアプリは削除済み) ハノイ市の公式アプリ

Nước Lênの対象はハノイに限られる。ホーチミン市やダナンで同じ画面は出てこないので、南部にいるときはVOV Giao thôngのホーチミン窓口(028 3991 9191)やメコン向けのMekong FM(028 3830 9090)に切り替える。VOV Giao thôngはハノイのクアンスー通り58番地10階に編集部を置き、記事と音声の両方を出している。

画面に出るベトナム語だけ覚えておく

サイトはベトナム語だけで動く。機械翻訳に通すと地名が崩れるので、次の語を覚えて原語のまま見るほうが速い。

表示 意味
Ngập 冠水している
Ngang mắt cá くるぶしまで
Ngang gối 膝まで
Quá bánh xe 車輪を超える
Đã hết ngập 水が引いた
Dẫn đường tránh ngập 冠水を避ける経路案内
Cây đổ / Đóng đường 倒木/通行止め
Mưa radar 雨雲レーダー

ブラウザで開く地図なので、回線がなければ何も映らない。到着日に通信を確保しておく話は、ベトテルのeSIMが30日125,000ドンになった件にまとめた(1円=約160ドン換算で約780円)。冠水地図と雨雲レーダーは通信量を食うので、1日あたりの高速枠に余裕がある契約のほうが向く。

手続きのアプリと道路のアプリは担当が違う

ベトナムの公的アプリで9月に話題になったのはもう1つあり、9月28日施行の政令320号で外国人にも開放される国民デジタル認証アプリVNeIDだ。在住外国人もVNeIDが持てる件で扱ったのは在留・行政手続きを束ねる機能で、本記事の冠水マップとは担当する用件が別になる。役所の書類はVNeID、道路が通れるかはNước LênやVOVという住み分けで覚えておくと、雨の日に開くアプリを間違えにくい。

空港へ向かう道は速度側のルールも変わる

ハノイでは走り方のルール自体も動く。9月27日からは空港へ続くニャッタン橋の中央分離帯側の1車線が時速80キロに下がる試行が始まる。冠水で迂回した日に空港へ向かうなら、回避にかかる時間と速度規制の両方を足して出発時刻を決めたい。

個人サイトが埋めている穴を、行政はどう埋めるのか

准教授が足りないと挙げたのはセンサーとデータ連携

都市研究・インフラ開発研究所所長のLuu Duc Hai准教授は、大雨のたびに市民が情報を探し回る状態そのものが、リアルタイムのデータと行政間の連携の不足を示していると述べている。冠水の監視にセンサーが足りず、機関ごとにデータが同期されず、住民の通報が活用されていない。准教授は市の建設局に、冠水マップと高度交通システムを統合した共有データ基盤を求めた。下水道会社は降雨量・水深・水が引くまでの時間を出し、交通警察は冠水データとカメラを組み合わせ、ドライバーが現場に着く前に警告と迂回誘導を出すべきだという。

個人開発では届かないのは地図APIとサーバー

Mauさん自身は、早期警告と代替ルートを自動で出せる技術、冠水データを交通・都市インフラと接続すること、行政・技術企業・コミュニティの協力の3つが揃う必要があると話す。そして、オープンデータ・地図API・サーバー基盤がなければ個人プロジェクトでそこまでは届かないと付け加えた。いま動いているサイトは、行政のデータが開くまでの仮設の橋に当たる。架け替わればブックマークも変わるので、1つに固定しないほうがいい。

次にできることを1つだけ挙げる。ハノイ滞在の初日に、nuoclen.comを開いて宿と職場(または主な訪問先)を検索し、経路の冠水通知をオンにしておく。雨が降ってから探し始めるより、通知が先に来る。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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