Xanh SMがGrabを抜きベトナム配車1位、観光客の使い方も変わる

VinFastの電気自動車(EV)専用配車サービス「Xanh SM」が、ベトナム国内のライドヘイリング(配車)市場でGrabを抜き首位に立った。複数の調査会社のデータによれば、シェアはおおむね40〜44.7%(指標と四半期で変動)でGrabを上回る。Xanh SMはVinFastのVF5・VFe34などEV専用に約10万台を稼働させ、61省で展開、すでにラオス・インドネシアにも進出している。日本人観光客の間で長く常識だった「ベトナムでの移動はGrab一択」は、2025〜2026年で完全に過去の話になった。本稿ではシェア争いの実態、観光客の使い方の変化、ハノイ・ホーチミンでの料金感を整理する。

目次

Xanh SMがGrabを抜いた瞬間

2023年4月にハノイで運行を開始したXanh SM(運営:GSM Joint Stock Company、出資:Vingroup会長Pham Nhat Vuong氏)は、わずか2年でGrab Vietnam を抜いた。Mordor Intelligence は2025年の年間ベースでシェア44.7%、第三者調査では2025年第1四半期に40%、2025年第4四半期にはGMVベースで51.5%に達した期間もあると報告している。一方Grabはおおむね36〜43%で推移し、Be が約6%、その他配車・タクシーが残りを分け合う構図だ。Xanh SM は2024年だけでベトナムで4億ドル超の売上を計上し、Vingroupに対して2億4,000万ドルの貢献を果たしている。

背景:Vingroupの垂直統合とハノイのEV政策

Xanh SMの強さは、VinFast(製造)→Xanh SM(配車)→VinHomesエリアの充電ネットワークという垂直統合に支えられている。VinFastは2023年にXanh SM向けにEV2万台・電動バイク2.2万台を投入し、自社EV販売の82%がXanh SM経由という時期もあった。さらにハノイ市は2030年までにバイク・車両の段階的EV化を進める方針を打ち出しており、Grab・Beにも将来的なEV移行を要求する流れが見えている。Xanh SMはこの政策追い風を受け、純EVオペレーターとして他社より2〜3年先行するポジションを確保した。

Xanh SM・Grab・Be 比較表

項目Xanh SMGrab VietnamBe
市場シェア約40〜44.7%約36〜43%約6%
車両タイプ100% EV(VinFast)ガソリン中心、EV試験導入ガソリン中心
稼働台数車両約2万台+バイク約8万台非公表(数十万人ドライバー)非公表
料金(バイク・最低2km)13,200VND(約79円)13,500VND(約81円)12,787VND(約77円)
料金(車・最低2km)30,500VND(約183円)29,000VND(約174円)非公開(変動)
料金(車・1kmあたり)11,900〜14,700VND(71〜88円)10,000VND(60円)変動制
ピーク料金加算なし(固定)あり(最大2倍超)あり
展開エリア61省+ラオス・インドネシア全土+東南アジア6カ国主要都市中心
支払いアプリ・現金・カードアプリ・現金・カードアプリ・現金

現地・業界関係者の反応

Xanh SMドライバーは現地紙の取材で「制服・接客マニュアル・車内クリーニング基準が5つ星ホテル並み。違反するとペナルティが厳しい」と語る。ハノイのオフィスワーカーからは「ガソリン臭がせず、運転が穏やか。雨の日でもピーク料金にならないので家計予測がしやすい」という声がSNS上で広がっている。一方Grab Vietnam の関係者は「ピーク料金や食事配達(GrabFood)など複合エコシステムで差別化していく」とコメント。日本の旅行業界からは「観光客は『定額・無臭・対応がジェントル』の3点でXanh SM支持に流れている。ガイドブックの『Grab一択』表記は2026年版で全面的に書き換えが必要」との分析が上がっている。在住日本人の間でも「両方アプリを入れて、空き状況と料金で使い分ける」が標準になった。

日本人観光客の使い方はこう変わる

第一に、空港送迎は固定料金のXanh SMが安心だ。ノイバイ空港〜ハノイ旧市街は約30km・約30分で40〜50万VND(2,400〜3,000円)が目安、Grabのピーク時は2倍近くなる場合がある。第二に、観光地巡りは両アプリ併用で、出てきた料金が安いほうを選ぶのが合理的になった。第三に、雨季や深夜のピーク時間帯はXanh SMのほうが拾いやすい局面が増えている。第四に、Xanh SMは独自の「Green」(高級EV)「Plus」(VF5)「Bike」(電動バイク)の3ラインがあり、4人以上の家族旅行はGreen、コスト重視はBikeの組み合わせが効率的だ。

都市移動の周辺事情は ダナン食ツアースピリチュアル旅ダナンの夏旅トレンド などの記事でも触れている。各地で配車サービスがどう機能するかは現地ガイドの第一歩になる。

業界への波及・関連トレンド

Xanh SM の躍進は、ベトナムの3つの大きな潮流を象徴している。第一に、東南アジアのEV化レースで、シンガポール・タイのEV補助金政策と並びベトナムが「実走行台数」で先行しはじめた点だ。第二に、Vingroupの「製造・流通・サービス垂直統合」モデルが、トヨタや現代のような東アジア型自動車企業のアジア戦略に再考を迫っている。第三に、配車市場で「アルゴリズムの公平性」「ピーク料金の不透明性」を批判してきた利用者層が、Xanh SMの定額制に流れたことで、Grab自身もアルゴリズム透明化を進める方向にシフトしている。日本の自動車・観光業界にとって、ベトナムは「EV配車が主流化した最初の国」として今後数年のケーススタディ対象になる。

主要ルート料金・所要時間(実用情報)

ルート距離Xanh SM Plus(目安)Grab Car(目安)所要
ノイバイ空港→ハノイ旧市街約30km40〜50万VND(2,400〜3,000円)32〜70万VND(変動)30〜45分
ハノイ旧市街→タホー湖約7km9〜12万VND(540〜720円)8〜10万VND(480〜600円)20分
タンソンニャット空港→ベンタイン市場約8km11〜14万VND(660〜840円)10〜15万VND(変動)20〜35分
ホーチミン1区→チョロン地区約6km8〜10万VND(480〜600円)7〜12万VND(420〜720円)20分
ダナン空港→ホイアン旧市街約30km40〜45万VND(2,400〜2,700円)35〜60万VND(変動)40分

注:Xanh SM Plusはセダン4人乗りクラス、料金は2025年下半期〜2026年4月の参考値。雨季・大型連休は変動の可能性がある。

まとめ

「ベトナムではGrabを使う」は2024年までの常識で、2026年以降は「Xanh SM+Grabの2刀流」が標準になる。次のアクションは、(1) 渡航前にXanh SMアプリを App Store / Google Play からダウンロードしSMS認証を済ませる、(2) ノイバイ・タンソンニャットの空港送迎はXanh SM Plusを優先、(3) 街中はGrabと両建て比較で安いほうを選ぶ、の3点だ。EV特有の静かな乗り心地と、料金固定の安心感は、観光客の体験品質を大きく押し上げる。

出典

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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