VNeIDに5点そろえると手数料ゼロ、外国人はどこまで対象?

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ベトナム政府が7月9日付で出した決議66.22/2026/NQ-CP「デジタル公民の発展について」が、8月15日に発効する。電子身分証アプリVNeIDのレベル2アカウントを持ち、出生証明書・銀行カード等・社会保障口座・携帯電話番号・電子健康手帳の5点を統合した人が、オンラインで手続きした場合にパスポートや運転免許証の再発行手数料などが免除される、という内容だ。ベトナムの各紙には「自動車の登録免許税が50%減」という見出しが並んだが、条文を読むと対象は2回目以降の登録に絞られている。さらに条文が繰り返し使う語は「công dân(公民)」で、在住外国人に同じ恩恵が及ぶとは書かれていない。ハノイやホーチミンで暮らす日本人にとって、期待していい部分と、期待してはいけない部分がはっきり分かれる制度になっている。

目次

決議66.22は8月15日から2027年2月28日までの時限措置

政府公報サイトvanban.chinhphu.vnの登録情報では、この決議の公布日は2026年7月9日、施行日は8月15日。そして失効日が2027年2月28日と明記されている。恒久制度ではなく、半年強で終わる期間限定の措置という点が、まず押さえどころになる。

減免の条件は3つが同時に満たされることだ。ひとつ、VNeIDのレベル2アカウントを保有していること。ふたつ、指定された5点の情報・書類をアプリに統合済みであること。みっつ、その手続きをオンライン公共サービス経由で申請・納付すること。窓口に紙を持って行った場合は、5点をそろえていても対象にならない。制度の主眼が「手数料を安くすること」ではなく「オンラインに移ってもらうこと」に置かれているのが、この条件設計から読み取れる。

統合を求められる5点は、出生証明書、銀行カード/決済口座/電子ウォレット/モバイルマネー口座のいずれかの情報、社会保障口座の情報、携帯電話番号、電子健康手帳。ベトナムで生まれ育った人なら手元にそろうものばかりで、逆にいえば、そろわない人は入り口に立てない設計になっている。

10月15日を「デジタル公民の日」に定めた背景

決議は減免だけを定めた文書ではない。毎年10月15日を「ベトナム・デジタル公民の日」とすること、VNeIDの運用主体を公安省の警察行政管理局(C06)とすること、オンライン行政手続き用のデジタル署名認証を無償で提供することなども盛り込まれている。半年限りの手数料減免は、その全体像のなかの起爆剤という位置づけに見える。

ベトナムの行政デジタル化は、今年に入ってから月単位で進んでいる。外国人在留に直結する入管手続きは6月にVNeIDへ一本化され(ベトナム入管手続きが6月からVNeIDに一本化、駐在員と会社の対応は)、自動車の車検も7月から紙の証明書が不要になった(車検が紙不要に──7月からVNeIDで完結するベトナムの新ルール)。8月の手数料減免は、その延長線上に置かれた一手だ。

免除される手数料と、減額される税の一覧

対象 扱い もとの金額・税率
パスポート新規発行、破損・紛失時の再発行、通行証 免除 10万〜40万VND(約620〜2,470円)
国内・国際運転免許証の切替/再発行 免除 11万5,000VND(約710円)
身分証(Căn cước)の切替・再発行 免除
常住・一時居住登録、一時居住の延長、世帯分離 免除
犯罪経歴証明(lý lịch tư pháp)の情報提供 免除
車両登録証の切替・再発行、登録・ナンバー交付 免除 3万5,000〜10万5,000VND(約220〜650円)
戸籍抄本・出生証明の謄本、学位・資格証明の写し 免除
自動車の登録免許税(2回目以降の登録) 50%減 2%→1%
二輪車の登録免許税(2回目以降の登録) 100%免除 1%→0%
住宅・土地の登録免許税 10%減
消防関連の手数料、担保取引の登録 各50%減

減額側には共通の天井がある。1人あたり年1回限りで、減額幅は申告時点の基礎給与(mức lương cơ sở)の5倍まで。基礎給与は政令161/2026/NĐ-CP(2026年5月15日公布)で7月1日から253万VND(約1万5,600円)に上がったので、上限は1,265万VND、日本円でおよそ7万8,000円になる。高額な物件や車を買っても、戻ってくる額はこの線で止まる。

「新車が半額」という読み違いが現地で広がった

この決議をめぐっては、発表直後から解釈のズレが目立った。反応を立場ごとに並べると、ズレの形が見えてくる。

国営ラジオVOVの自動車面は、「VNeIDレベル2で登録免許税が減免される件を正しく理解する」という趣旨の記事を出し、優遇の対象は「2回目以降に登録免許税を納付する資産の申告手続き」に限られると指摘した。そのうえで、新車を買って初回登録するケースがすべて100%免除や50%減になるわけではない、と明示している。つまり恩恵が届くのは、中古車を買って名義を書き換える人のほうだ。

経済紙VnEconomyの自動車面は、この制度を中古車市場への刺激として読んだ。二輪車の2回目以降の登録免許税がゼロになれば、乗り換えのハードルが下がる。加えてVNeID上で所有情報が突き合わされるため、係争中の車や出所の不明な車が取引から外れやすくなる、という整理をしている。取引の透明性という副次効果に目を向けた見方だ。

制度の主管である公安省C06は、決議案の段階で出た懸念に答えている。公民の権利を狭めるのではないかという指摘に対しては「憲法が定める公民の合法的な権利と利益を、減じたり制限したりするものではない」と説明。デジタル空間での活動記録が差別に使われるのではないかという点には、「公民の積極度の記録は奨励のためだけに用い、差別や処罰には使わない」と述べたと報じられている。

そして最も広く流れたのが、一般メディアの見出しだ。「自動車購入で登録免許税50%減、二輪は100%免除」という書き方が横並びで出回り、2回目以降という条件は本文の奥に置かれた。条文と要約媒体の落差は、日本語で追うときにも同じ形で再生産される。

在住外国人はどこまで対象になるのか

ここが日本人読者にとっての本題になる。結論から書くと、外国人に適用されるかどうかは条文の公開部分から断定できない。決議が一貫して使う語は「công dân」で、ベトナムの法令用語ではベトナム国籍者を指す。政府公報の全文はPDFで公開されているが、施行細則にあたる別紙の適用範囲まで日本語で確認できる形にはなっていない。ベトナムの法律情報サイトの解説も「レベル2アカウントを持つベトナム公民」と書いており、外国人を含むという記述は見当たらなかった。

実務の側から見ても、壁は低くない。統合が求められる5点のうち、出生証明書はベトナムの戸籍制度で発行されるもので、社会保障口座と電子健康手帳もベトナムの社会保険・医療制度に紐づく。外国人がこの3点をVNeIDに統合できるという公式案内は、確認できなかった。銀行口座と携帯電話番号は問題なく持てるが、5点そろえることが条件である以上、そこで止まる可能性が高い。

とはいえ、VNeIDのレベル2アカウントそのものは外国人も取得できる。2025年7月1日から、政令69/2024/NĐ-CPに基づいて、有効な常住カード(thẻ thường trú)または一時居住カード(thẻ tạm trú)を持つ在住外国人の申請受付が始まっている。運転免許の切替のように外国人が実際に使う手続き(90日ビザで運転できる──ベトナム免許切替、出張者にも門戸)でも、レベル2があるかどうかで手間が変わる場面は増えている。手数料減免の対象にならなくても、口座開設時の本人確認や賃貸契約の届出でアカウントを求められるケースは現実に起きている。

中古車の名義変更と、行政窓口の混み方に出る影響

制度が実際に効くのは、まず中古の二輪車だ。ベトナムで中古バイクを買った日本人が名義変更を後回しにする話は珍しくないが、ベトナム人の売り手側にとっては、2026年8月15日から2027年2月末までに名義を移すほうが有利になる。売買契約の場で「いつ登録するか」を売り手から持ち出される場面は増える。

もうひとつは窓口の混み方だ。免除対象がパスポート、運転免許、身分証、居住登録と生活手続き全般に広がるため、8月中旬以降はオンライン申請が一気に増える。物理的な窓口は空くという読み方もできるが、レベル2アカウントの新規取得は対面が必要で、出入国管理の窓口には逆に人が集まりやすい。外国人の一時滞在申告の受付先も今年に入って再編されており(外国人の一時滞在申告が新サイトに一本化、在住者が困る場面)、入り口が動く時期が重なる。急ぎでない申請は8月第1週までに済ませておきたい。

VNeIDレベル2を外国人が取るときの実務情報

項目 内容
根拠 政令69/2024/NĐ-CP。2025年7月1日から外国人の申請受付を開始
対象 有効な常住カード(thẻ thường trú)または一時居住カード(thẻ tạm trú)を持つ在住外国人
申請先 公安省の出入国管理局、または各省・市公安の出入国管理課(対面のみ)
ハノイの窓口 ハノイ市公安 出入国管理課/44 Phạm Ngọc Thạch, phường Kim Liên
ホーチミンの窓口 196 Nguyễn Thị Minh Khai(Xuân Hòa坊)/239 Ngô Gia Tự(Thủ Dầu Một坊)/120 Phạm Hùng(Bà Rịa坊)
受付時間 月〜金の執務時間内(祝祭日を除く)
必要書類 有効なパスポート(または国際旅行証明書)、常住/一時居住カード、申請書TK01(窓口に用意あり)
必要な情報 ベトナムで使用中の本人名義の携帯電話番号、メールアドレス
窓口での作業 顔写真の撮影、指紋採取、生体情報の照合
処理期間 生体情報がデータベースにある場合は3営業日以内、ない場合は最長7営業日
手数料 無料
結果の通知 VNeIDアプリ、SMS、またはメール
統合できるもの 電子居住カードなど。5点セット全部を統合できるかは公式案内で確認が必要

まとめ:減免より、アカウントを先に取る

決議66.22/2026/NQ-CPは、2026年8月15日から2027年2月28日までの時限措置で、VNeIDレベル2+5点統合+オンライン申請という3条件を満たしたときに手数料を免除・減額する。減額の上限は年1回・1,265万VND(約7万8,000円)まで。自動車と二輪の登録免許税の優遇は2回目以降の登録が対象で、新車の初回登録は含まれない。

在住外国人については、条文に適用の明示がなく、5点のうち3点は制度上そろえにくい。減免を前提にした計算はしないほうがいい。それでも動く価値があるのは、レベル2アカウントの取得のほうだ。パスポートを持って最寄りの出入国管理窓口へ行き、TK01に記入して指紋と顔写真を登録すれば、無料で3〜7営業日。そのうえで、自分の在留区分で5点統合と手数料減免が使えるかを、その場で職員に確認しておく。半年で終わる制度に振り回されるより、行政手続きがオンラインへ移り続ける流れに先回りするほうが、結果として得になる。

参照元:ベトナム政府公報(vanban.chinhphu.vn)LuatVietnamXây dựng chính sách(政府)Dân tríVOVVnEconomyVietnamPlusBáo Chính phủThanh NiênSức khỏe & Đời sống(基礎給与・政令161/2026/NĐ-CP)

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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