ミシュランガイド ベトナム2026で、ホーチミンの「Tales by Chapter」がグリーンスターを獲得した。徹底したゼロウェイストの哲学と、ダラットの提携農園や屋上菜園から仕入れる季節の植物性メニューが評価され、ベトナム初のゼロウェイスト植物性ファインダイニングとして注目を集めている。
グリーンスターを獲得した新顔
2026年6月4日に発表されたミシュランガイド ベトナム2026で、Tales by Chapter はグリーンスターのコミュニティに新たに加わった。グリーンスターは、味の評価とは別軸で、持続可能な取り組みに優れた店に贈られる。今回ベトナムのグリーンスターは計3軒で、その最新の一軒が Tales by Chapter だ。
調理くずを発酵に変える「閉じた循環」
同店は、ベトナム初のゼロウェイスト植物性ファインダイニングをうたう。野菜の切れ端は発酵によってマッシュルームのガルムやコーン麹(コーンコウジ)へと作り変え、有機の副産物は堆肥にして土へ戻す。食材はダラットの提携エコ農園と、店の屋上菜園から仕入れる。仕入れから廃棄までを一つの循環として設計している点が特徴だ。
客はこの仕組みを「見て体験」できる。シェフズカウンターで調理の過程を見られるほか、店内のインタラクティブな展示や種を当てるゲームを通じて、食事と環境のつながりを実感できる。静かなヴィラの空間で、季節の素材と発酵を軸にしたテイスティングメニューが供される。
代表的な一皿
| 料理 | 内容 |
|---|---|
| コーン・パイティー | 大豆とコーンのピューレ、焦がしコーン、キムチ、発酵唐辛子を詰めたカップ |
| 再構築バインボッロック | ポルチーニを包んだもちもちの米団子で、伝統菓子を植物性に再解釈 |
ベトナムの定番点心バインボッロックを植物性に置き換えるなど、伝統料理を素材から見直す姿勢が一皿ごとに表れている。
業界の主な反応
- 味の評価軸とは別に、持続可能性そのものが集客力になりつつある
- 地産地消と発酵技術の組み合わせが、植物性料理の奥行きを広げた
- ダラットの農園と都市の店をつなぐ仕入れ設計が注目された
日本の読者への影響
サステナブルな食への関心は日本でも高い。Tales by Chapter は、ゼロウェイストや発酵という文脈を、ベトナム料理の枠組みで体験できる稀有な店だ。植物性中心でも物足りなさを感じさせない構成は、菜食志向の旅行者にも、好奇心で訪れる人にも入りやすい。
ベトナムのファインダイニング全体の評価が上がるなか、ミシュラン掲載の貝専門店「Ốc Đào」のようなローカル名店から、こうした概念先行の店まで、選択肢の幅は広い。
食文化への波及
グリーンスターの広がりは、ベトナムの食が「おいしさ」だけでなく「どう作るか」で評価される段階に入ったことを示す。コーヒー首都ブオンマトゥートの世界選出や、テイスターズ世界王者の誕生と並び、生産から消費までの物語を売る発信が観光の核になりつつある。
まとめ
Tales by Chapter は、ゼロウェイストと植物性という二つの軸で、ベトナム料理の新しい形を示した。調理くずを発酵で生かす循環や、種を当てるゲームなど、食事を体験に変える仕掛けが詰まっている。サステナブルな食に関心があるなら、次の旅の予約候補に加えたい一軒だ。
