フーコックがExpedia世界9位、上半期570万人とAPEC2027が押し上げた離島

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米旅行大手Expediaが2026年の「Island Hot List」を7月21日に公表し、ベトナム南部のフーコック島が世界9位に入った。上位はセントルシア、ポルトサント、プララン、シロス、ロフォーテン諸島、フィジーと欧州・カリブの常連が並び、東南アジアからはフーコック(9位)とフィリピンのパラワン(10位)が食い込んだ。ホーチミンから飛行機で1時間、日本人にはまだ馴染みの薄いこの島が、なぜ世界の島ランキングに顔を出したのか。ランキングの理由をたどると、旅先としての「今の実力」と「まだ発展途中の顔」が同時に見えてくる。

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Expediaが9位に置いたのは完成度ではなく伸びしろ、島の検索は55%増えた

Expediaはこのリストをどう作ったか。同社は選定基準を「検索トレンド、旅行者の関心、島嶼デスティネーションの成長ポテンシャル」と説明している。つまり完成された名所ランキングではなく、これから伸びる場所を拾う設計だ。プラットフォーム上で島への検索は前年同期比で約55%増え、SNSでの言及も2割ほど増えたという。旅行者が「手つかずの自然と地元文化、ゆっくりした時間が残る新興リゾート」を選び始めた流れの中で、フーコックは価格と距離の面で欧州の島より手が届きやすい候補に位置づけられた。

この評価を裏づける数字がある。フーコックを2026年上半期に訪れた観光客は570万人で前年同期から30%増、うち外国人は132万人で50%増と、伸び率が突出している。第三者評価はExpedia1社にとどまらない。旅行検索のSkyscannerも2026年の世界トレンド入り先にフーコックを挙げており、複数の海外プラットフォームが同じ方向を指している。

約2兆2千億ドンの空港拡張とAPEC2027が、離島を国家プロジェクトに変えた

伸びの背景には、島単独の観光努力を超えた国家事業がある。ベトナムは2027年のAPEC首脳会議をフーコックで開くと決め、それに合わせてフーコック国際空港の拡張が動き出した。投資額は約2兆1,998億ドン(1円≒170ドンの目安で概算およそ1,300億円)で、2027年までに年間旅客2,000万人規模へ引き上げる計画だ。首脳や要人機を受け入れるためVIPターミナルや駐機スポットの増設も盛り込まれ、運営はサングループ傘下が担う。

空の玄関そのものも整いつつある。島では3,300mの第2滑走路が校正飛行を終え、大型機ボーイング787が就ける状態になった(フーコック第2滑走路3300mが校正飛行完了、B787就航が可能に)。首脳会議という「締め切り」が付いたことで、観光インフラの整備が通常より速く進んでいる点が、この島の特殊なところだ。

2026〜27年に開くMoxy・W・ウェスティン、客室は数千室単位で積み上がる

宿の供給も一気に増える。2026年にはホントム地区でMoxy Phu Quoc Hon Thom(501室)とFairfield by Marriott(353室)が開業予定。島南部のルビービーチでは約88万㎡の敷地にW(526室)、マリオット(826室)、ウェスティン(527室)、ル・メリディアン(432室)、コートヤード(300室)の5棟が2027年にかけて集中開業する計画で、合計で二千数百室が新たに加わる。サンセットタウンではAscottが複数ブランドで1,500室超を運営する見込みだ。

ホテル 地区 客室数 開業目安
Moxy Phu Quoc Hon Thom ホントム 501 2026年
Fairfield by Marriott ホントム 353 2026年
W Phu Quoc ルビービーチ 526 2027年
Marriott Resort & Spa ルビービーチ 826 2027年
The Westin Phu Quoc ルビービーチ 527 2027年

見どころ側も動いている。ホントム島へ渡る世界最長級の3線式ロープウェイ、ギネス認定のショー「Kiss of the Sea」、CNNが取り上げたキスブリッジ、サンセットタウンの毎晩の花火に加え、11月1日からは飲食ストリート「Sunset Bazaar」が開く。文化イベントも育っており、2026年にはベトナム初の国際フルート音楽祭VIFFが6日間開かれた(フーコックで6日間、ベトナム初の国際フルート音楽祭VIFF 2026)。ビーチと箱物だけでなく、滞在中に足を運ぶ理由が少しずつ増えている。

日本からの直行便はまだない、ホーチミン乗り継ぎと30日ビザ免除の実務

ここまで前向きな材料が続くが、日本人旅行者にとっての現実的なハードルはアクセスにある。羽田・成田からフーコックへの定期直行便は2026年時点で就航していない。基本はホーチミンかハノイでの国内線乗り継ぎで、ホーチミン経由の場合はスルーバゲージが効かないことが多く、到着後に入国審査を受けて預け荷物を一度受け取り、国内線ターミナルで再チェックインする手間がかかる。第三国のハブ経由という手もあり、シンガポールからは機内食つきの直行便が毎日1便飛んでいる(サンフーコック航空がシンガポール〜フーコック直行便を就航、毎日1便・7月25日から)。島全体では1日約30便の国際線が発着する規模まで来ている。

入国面はむしろ追い風だ。フーコックはベトナムで唯一、全ての外国人に30日間のビザ免除を認めている。日本人はもともと45日以内のベトナム入国はビザ不要だが、島単体の免除枠は長期滞在や周遊の自由度を広げる。距離のわりに手続きの負担が軽い点は、この島を選ぶ実利的な理由になる。

今行くなら工事中の島だと承知の上で、混雑と評価の温度差を計算に入れる

第三者ランキングは強い追い風だが、鵜呑みにはできない。Expediaの評価軸は「これから伸びる島」であって「今が完成形」ではない。現地は2027年のAPECに向けて大規模工事が同時進行しており、区画によっては建設現場やクレーンが視界に入る。上半期に570万人・前年比30%増という数字は、裏を返せば人気スポットの混雑や価格上昇が進んでいるということでもある。

それでも「今行く価値」を突き詰めると、二つの層に分けて考えられる。ビーチとリゾートで完結する滞在を求める人には、直行便がない不便を差し引いても宿の選択肢が急拡大している今は追い風だ。一方で静かな離島の空気を期待するなら、開発が一段落する2028年以降のほうが像に近い。世界9位という見出しは、この島を旅程に入れるかどうかを考え始める合図であって、答えそのものではない。自分の旅の狙いと、まだ発展途中というフーコックの現在地を突き合わせて判断したい。

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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