ベトナム観光総局が2026年4月末に発表したQ1統計で、韓国からの訪越客が約133万人(前年同期比+17%)に達したことが明らかになった。中国本土の140万人超とあわせて、両国だけで国際客全体676万人の40%強を占める計算だ。3月単月でも約210万人を集客し、12.4%増という二桁成長が続く。フライト網の濃密化、Korean Air・Asiana・大韓航空・VietJet・Vietnam Airlinesの大増便、そしてダナン・ニャチャン・フーコックを「ソウルから3〜5時間で行ける海外」と位置づけるマイクロトリップ需要が組み合わさった結果だ。日本人読者にとっては「ダナンに行くと韓国語のほうが通じやすい場面がある」「日本人と韓国人が好むビーチ・カフェ・スパが微妙に住み分けられている」という変化が顕著になっている。
『中韓2国で40%』――Q1で何が起きたか
サイゴン・ジャイモン紙(en.sggp.org.vn)が4月末に伝えた統計によれば、2026年1〜3月の韓国からの訪越者は約133万人で、前年同期比17%増。中国本土の140万人超と合わせ、両国だけで全体国際客676万人の42%を占める計算となった。3月単月では国際客が210万人に迫り、月次でも過去最高水準を更新中だ。日本(第4位)、台湾(第3位)、米国を大きく引き離し、韓国がベトナム観光の「最重要送出国」のひとつであり続けていることが裏付けられた。
韓国観光公社の関係者はベトナム現地紙のインタビューで、2025年通年でベトナムが韓国から海外に出た約2,960万人のうち430万人超を引き受け、海外旅行先として上位3位に常に入っていると説明。ソウル・釜山発のフライト網がハノイ、ホーチミン、ダナン、ニャチャン、フーコックの5都市を結び、片道3〜5時間というアクセスの良さが「マイクロトリップ(短期回数旅行)」のトレンドにぴったり合致したと語る。ダナンが「アジア夏の旅先TOP9」で2位に選ばれた背景にも、この韓国側の超強気な需要がある。
ダナンが『ミニソウル化』――Bach DangからAn Thuongまで
South China Morning Post(SCMP)が2026年春に詳しく報じたとおり、ダナンは韓国客にとって「もはやベトナムというより釜山の延長線」と呼ばれる現象が起きている。海岸沿いのBach Dang通りからミーケビーチに至るAn Thuong地区は、ハングル看板の韓国焼肉店「Hwaro House」「Meat Plus Da Nang」、韓国式チキン店BHC、CHIRというソウルそのままのチェーンが並び、夜になると韓国人観光客とオーナーの韓国語で街が満たされる。
SCMPは現地のベトナム人事業者の声として「韓国語ができないとAn Thuongでは商売にならない」「ダナンに永住する韓国人は、ハノイやニャチャンも合わせて2万人を超える」と紹介。学校・病院・美容クリニック・チムジルバン(韓国式サウナ)まで揃い、観光のついでに不動産を見学する韓国人富裕層も増えている。ダナンFood Tour 2026の「五感で食べる」新コンセプトでも、韓国人ガイド・韓国語メニューが標準化しつつある。
数字で見る韓国客マーケット
| 項目 | 韓国(2026年Q1) | 日本(参考) | 備考 |
|---|---|---|---|
| Q1来訪者数 | 約133万人 | 約25万人 | 韓国が日本の5倍 |
| 前年同期比 | +17% | +9%程度 | 韓国が大幅高 |
| 主な目的地 | ダナン、ニャチャン、フーコック、ハノイ | ハノイ、HCMC、ホイアン | ビーチ志向 |
| 1人あたり消費 | 約1,000-1,500ドル/週 | 約800-1,200ドル/週 | ショッピング多 |
| 平均滞在日数 | 4-5日(短期回数) | 5-7日 | 韓国は短頻度 |
| 主要直行便 | 大韓航空、アシアナ、VietJet、Vietnam Airlines、Jin Air、T’wayなど30社超 | JAL、ANA、VN航空、VietJetなど | 韓国は週300便超 |
| ピーク月 | 3〜5月、10〜12月、1月旧正月 | 3-4月、9-12月 | 長期休暇連動 |
| 定番リピーター層 | 家族(3世代)、新婚、ゴルフ | 夫婦、女性グループ | 家族構成違い |
韓国客は「短く・頻繁に・近場に行く」マイクロトリップ志向が強く、年に2〜3回ベトナムを訪れる人も珍しくない。仁川・金浦・釜山発のLCC(Jin Air、T’way、Jeju Air)が片道300〜500ドルでダナン直行を提供し、3泊4日のリゾート滞在+ゴルフ(Ba Na Hills GC、Montgomerie Links)というパッケージで動く層が厚い。日本人の「年1回・1週間滞在」とは対照的なリズムだ。
K-pop誘客が本格化――ハノイLotte Mall Tay Hoの『ハリュー・ファンツアー』
韓国観光公社(KTO)ベトナム支局は2026年4月23〜26日にハノイのLotte Mall Tay Hoで「Korean Culture and Tourism Festival 2026」を開催。テーマは「Hallyu Fan Tour」で、K-popミュージックビデオのロケ地を巡るパッケージや、韓国食・コスメ・K-ドラマ衣装体験が集結した。ベトナムの建築再生カフェ10選に韓国人クリエイターが多く絡んでいるのも、この文化交流の延長線にある。
業界関係者の反応も活発だ。KTOベトナム支局長はVietnamPlusに「ベトナム人がK-popに惹かれるのと同じくらい、韓国人はベトナムの『ローカルなのに洗練されたカフェ・食』に惹かれている」とコメント。SCMPは現地ホテル支配人の声として「ピークの土曜は韓国語コールが7割、ベトナム語が2割、英語1割という日もある」と紹介し、現場のオペレーション言語が事実上ハングル化していることを伝えた。Xでも日本人旅行者から「ニャチャン中心部の韓国語表記比率が高い」「韓国人グループのリゾート貸切で日本人がプール使えない時間帯がある」といった投稿が散見される。
日本人読者への影響――『ベトナムなのにソウル感』をどう活かすか
韓国客の集中はダナン、ニャチャン、フーコックの3都市で特に顕著で、日本人旅行者は3つの選択肢を持つ。①あえて韓国コミュニティに乗っかる:An Thuongの韓国焼肉、Lotteマートの韓国食材、24時間営業のチムジルバン(Sunrise Sauna、Saigon Sauna)を「韓国旅行を兼ねたベトナム旅行」として楽しむ。②住み分ける:ダナンならフラン人街のフレンチ系ビストロ、ニャチャンなら旧市街のローカル海鮮、フーコックなら南部の静かなリゾート(JW Marriott、Premier Village)を選ぶ。③別都市を選ぶ:韓国客がまだ少ないクイニョン、ダラット、ホイアン旧市街、ハノイ郊外の『撮影スタジオ化』カフェ群を中心に組む。
もう1つ大きなメリットは「韓国人客が落としていく多国籍化された街並み」を享受できることだ。ダナンのスーパー「Big C」「Co.opmart」では韓国インスタントラーメン(辛ラーメン、ジンラーメン、プルダックポックンミョン)、CJ Bibigo製のキムチ、Pulmuoneの豆腐が定番化し、日本食材店と並んで「日韓越」の選択肢が広がっている。ニャチャンのSailing Club、Skylight Rooftopなど夜遊び系も韓国人客向けにK-popプレイリストが標準化し、若い日本人客にも違和感なく溶け込める。
業界波及――ホテル・航空・小売の3つの構造変化
韓国客400万人超の安定流入はベトナム観光業界の構造を変えている。第一に5つ星ホテル運営。ハイアット・リージェンシー、シェラトン、インターコンチネンタルは韓国語スタッフを最低3〜5人常駐させ、朝食ビュッフェに韓国式お粥(チュク)・キムチ・キムチチゲを並べることが標準化された。第二に航空。仁川〜ダナン路線だけで日本〜ホノルル路線に匹敵する週300便超を運航し、LCC4社の競争で片道300ドル前後まで価格が下がった。第三に小売。ダナン・ニャチャンの韓国系スーパー「K-Market」「Korea Mart」がフランチャイズ展開を加速し、現地ベトナム人客にもキムチ・コチュジャンが浸透している。
ベトナム人旅行者の78%がスピリチュアルアドバイザーの助言で旅先を変更するというベトナム側の心理トレンドと並行して、韓国側でもMBTI診断や占星術と連動した旅行プランが増えており、両国でスピリチュアル+アジアビーチという新しい旅行カテゴリが立ち上がっている。
実用情報――ダナン・ニャチャンで韓国客と『楽しく住み分ける』
| カテゴリ | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 韓国食材スーパー | ダナン K-Mart (Phan Chau Trinh)、ニャチャン Korea Mart | キムチ・ラーメン充実 |
| 韓国式チムジルバン | Sunrise Sauna(ダナン)、Saigon Sauna(HCMC) | 24時間営業 |
| 韓国焼肉 | Hwaro House、Meat Plus、CHIR | An Thuong中心 |
| K-popカフェ | Hello Kitty Cafe(ダナン)、Coffeeholic Now | SNS映え |
| 日本人向けエリア | ダナン: ハン市場周辺・ソンチャ半島、フーコック南部 | 韓国客少なめ |
| 住み分けポイント | 朝早く(6-9時)と夜遅く(22時以降)が日本人快適 | 韓国客は10-22時集中 |
| 仁川〜ダナン直行 | 大韓・アシアナ・VietJet・Jin Air・T’way等30社超 | 週300便超 |
| 料金参考 | 仁川〜ダナン片道300-500ドル、ハノイ400-700ドル | LCC含む |
まとめ――『日韓越』が混ざる新しいベトナム
2026年Q1の韓国客133万人はベトナム観光市場の構造変化を象徴する数字だ。ダナン・ニャチャン・フーコックは「もう一つの済州島」と呼べる地位に登りつめ、街並み・食・宿泊・小売のすべてに韓国カラーが染み込んでいる。日本人旅行者にとっての結論は「拒絶せず・取り込みすぎず・賢く住み分ける」こと。①韓国食材・チムジルバンといった韓国インフラを副次的に楽しむ、②人気時間帯(10〜22時)を避けて朝・夜のローカル体験を優先する、③韓国客がまだ少ないクイニョン・ダラット・ホイアン旧市街などを選択肢に入れる、の3点を意識すれば、日韓越が同居する新しいベトナム旅行を最大限楽しめる。次にダナン行きを計画するなら、ハングルメニューを「邪魔」と感じる前に、それが教えてくれる現地の現在地を読み解いてほしい。
引用元
・Saigon Giai Phong – Chinese, Korean tourists lead Vietnam’s international arrivals in early 2026
・South China Morning Post – Da Nang’s South Korean tourism boom
・VietnamPlus – Korean micro-trip trend
・Vietnam.vn – Korean Culture and Tourism Festival 2026 Hanoi
