フエのカフェがマムルオック入りコーヒー、1杯55,000ドン

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フエ市トゥアンホア坊(phường Thuận Hóa)のグエン・ティ・ミン・カイ通りにあるカフェ「TOC Gallery」が、9月初めからマムルオック(mắm ruốc)入りのコーヒーを出している。マムルオックは小さなアミを粗塩と混ぜ、甕に入れて発酵させた調味料で、フエの台所でおなじみのものだ。価格は1杯55,000ドン。2026年9月24日の1円=164.29ドンで換算すると約335円になる。

報じたのはVnExpressとDân tríが9月23日、Thanh Niênが24日。Dân tríとThanh Niênはそれぞれ店主に取材したと明記し、VnExpressは店提供の写真と動画を添えている。3紙を突き合わせると、売れている杯数も、来店客が増えたという数字の扱いも、媒体ごとに書き方が違う。原文で確かめられたことと、どの記事にも書かれていないことを分けて並べる。

目次

マムルオックはアミを塩で漬けて甕で発酵させた調味料、ブンボーフエの赤いスープも土台はこれ

日本語では「エビの塩辛」と訳されることがあるが、日本の塩辛のように生の魚介を塩漬けにしたものとは作り方が違う。VnExpressの説明では、マムルオックは生のルオック(con ruốc、khuyết biểnやtép biểnとも呼ばれる小さなアミ)を粗塩(muối hạt)と混ぜ、甕(chum、vại)に入れて自然発酵させたもの。液体の魚醤ヌクマムとは別の調味料にあたる。

フエ料理では、これがブンボーフエやコムヘンの味の骨格になっている。当サイトでフエの食べ歩きを扱った記事でも、ブンボーフエの赤いスープはレモングラスと発酵エビ調味料(マムルオック)で組み立てられていると書いた(宮廷料理の街フエを1日1,200円で食べ尽くす麺と米粉菓子の旅)。Tuấnさんの言葉では「ルオックはフエの人の台所ではおなじみの調味料だが、飲み物には入れられてこなかった」(VnExpress)。

酸味のないマムルオックをカラメルとクリームで煮る

レシピを作ったのは共同オーナーのTrần Ngọc Anh Tuấnさん(32)。VnExpressとDân tríは「đồng sở hữu(共同オーナー)」、Thanh Niênは「店主であり、レシピの開発者」と紹介している。

Dân tríとThanh Niênは、素材選びの条件をほぼ同じ言葉で書いている。選ぶマムルオックは特徴的な塩気がしっかりあり、酸味がないもの。酸味があると上に載せるクリームの層が損なわれるためだ。そのうえでマムルオックはカラメル糖とクリームと一緒に煮て、特有の匂いを弱める。量は低めに抑え、塩気とうま味、後味だけを出してコーヒーの香りを押さえつけないようにする、とThanh Niênは書いている。

Tuấnさんがアイデアを出した当初は「vô lý(無茶だ)」と言われ、店のスタッフからも、匂いが強すぎるのではないか、牛乳やクリームの脂と合わないのではないかという声が出た。構想から最終レシピまでにかかったのは約6か月だった。

飲み方の指定もある。ストローは使わず、よく混ぜもしない。カップの縁から直接すするのがTuấnさんの勧めで、VnExpressは「下のコーヒーと牛乳だけを軽く混ぜ、ルオックのクリーム層はそのまま残す」と書いている。

項目 内容
店 TOC Gallery(フエ市トゥアンホア坊、グエン・ティ・ミン・カイ通り)
価格 1杯55,000ドン(1円=164.29ドン換算で約335円、2026年9月24日時点)
1日の販売杯数 約50杯(VnExpress)/30〜50杯(Thanh Niên)
発売 2026年9月初め
開発期間 構想から最終レシピまで約6か月
営業時間・定休日 3紙に記載なし
1層目(底) 牛乳と練乳
2層目 フエの山間部A Lưới(アルオイ)産アラビカとロブスタを合わせたマシン抽出のコーヒー
3層目 マムルオック風味のクリームソース
4層目(上) 薄く削った干しマグロ(cá ngừ khô)を数本
飲み方 ストローを使わず、カップの縁から直接すする

来店客20%増は比較した期間が書かれておらず、Tuấnさん自身も時間が必要だとしている

VnExpressはこの飲み物が店の「đinh(看板)」になったと書き、Thanh NiênはSNSで拡散したあとに売れ筋のひとつになったとしている。1日の販売杯数は媒体で食い違い、VnExpressが約50杯、Thanh Niênが30〜50杯だ。

VnExpressは、TOC Galleryが9月初めから来店客20%増を記録したと書き、この増加をマムルオック入りコーヒーによるものとしている。ただし根拠の記述はない。Thanh Niênは「この飲み物がSNSで注目されてから、店の客数はおよそ20%増えた」とする。どちらも誰がどう数えた数字なのか、比較の基準期間も測定方法も書かれていない。Dân tríはこの数字を載せていない。

Tuấnさん自身はThanh Niênに対して慎重な言い方をしている。好奇心による効果はまだ第一歩にすぎず、マムルオック入りコーヒーが日常的な選択肢になるのか、話題を集めるだけの一杯で終わるのかを判断するには時間が必要だ、という内容だ。Thanh Niênの見出しも「フエのマムルオック入りコーヒーは塩コーヒーのような『トレンド』になるのか」という問いの形になっている。

飲んだ客の反応で3紙に共通するのは、名前を聞いた時点では身構えたが、匂いは想像より弱く、コーヒーが主体で塩気は後味に来る、という部分だ。ホーチミン市から来た28歳のQuốc Bảoさんは9月17日に初めて飲み、匂いが思ったほど強くないことに驚いたとVnExpressに話した。ゲアン省から来た35歳のBích Ngọcさんは「最初はマムルオックがコーヒーに合うと思えなくて少し気が引けたが、飲んでみたら面白かった」と述べている。Dân tríが取材したフエ在住の女性客は、カウンターの前で作るところを見てそのまま飲めることを、試す価値のある体験だと話した。

F&Bの専門家が挙げた、新しい飲み物が残る4条件

Thanh Niênは、外食サービスの専門家でMapdy.vnとConcepts学院(VCS)の共同創業者であるNguyễn Thái Bình氏の見方を載せている。この動きをF&B市場の「đổi mới mang tính bản địa(土着的な刷新)」の流れとして説明したうえで、こう話す。「マムルオックが目を引くのは、珍しいからだけではない。塩気とうま味、そして非常に特徴的な香りを持つ発酵原料だ。正しい技術で扱えば、かつて塩がコーヒーに持ち込まれたのと同じように、調味のひとつの層として働ける」

ただし同氏は、珍しさが呼べるのは最初の1杯までだとして、新しい飲み物が残るかどうかを決める条件を4つ挙げた。

  • 2杯目を頼みたくなるだけの飲みやすさ。マムルオックのように強い素材では、味に奥行きがある状態と匂いが重すぎる状態の間隔がきわめて狭い
  • 店舗運営に載せたときにレシピが安定すること
  • 商品の物語に無理がなく、土地・素材・文化と結びついていること
  • 販売価格、原料費、提供の速さ、供給を維持できるかという採算面

ダナンは魚醤を粉に、フエは煮てソースに、同じ発酵調味料で処理が分かれた

発酵した魚介の調味料をコーヒーに入れる試みは、7月に中部ダナンでも出ていた。当サイトが伝えたダナンのカフェ・マムは、ナムオー産の一番搾りの魚醤を空炒りしてつき砕き、粉にしてロブスタの上に振りかけるやり方だった(コーヒーに魚醤とゴックリン人参、ダナンが3日間だけ試した味)。フエのTOC Galleryは、マムルオックをカラメル糖とクリームで煮てソースにしている。どちらも強い匂いの処理から入っているが、ダナンは乾かして粉に、フエは加熱してソースにと、手段が分かれた。

3紙はいずれもフエを塩コーヒーで有名な街として紹介している。塩コーヒーの値段については、2022年12月にVnExpressが取材したフエの塩コーヒー店が1杯15,000ドンで、当サイトの7月の記事では約93円と換算していた。2022年末時点の価格なので、今回の55,000ドンと直接並べることはできない。

いま現地で通っている値段の感覚としては、当サイトが8月に伝えたフエの朝食が1杯10,000ドン、記事では約55円だった(フエの朝、77歳サさんが40年炊く赤米のお粥は1杯55円)。同じフエで、コーヒー1杯は街の朝食5杯分を超える。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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