建築メディアArchDailyが「遺産を生き返らせたカフェ」を特集
世界最大級の建築メディアArchDailyが、「Everyday Heritage: 10 Vietnamese Coffee Shops Reviving Small-Scale Traditional Buildings」と題した特集を公開した。フランス植民地時代のヴィラ、1950年代のモダニスト別荘、戦前のショップハウスなど、取り壊しの危機にあった小規模建築をカフェとして再生した10軒を取り上げている。
共通するテーマは「保存と活用の両立」。建築家が既存構造を極力残しながら、現代のカフェ空間へと変換する手法を紹介している。壊すのではなく、使い続けることで建物を守る。その実践が10軒に詰まっている。
注目10軒の全リスト
| 店名 | 設計 | 建物の由来 | 所在地 |
|---|---|---|---|
| The Cocoa Project Cafe | T3 Architects | 1950年代モダニスト別荘 | ホーチミン市 |
| The Running Bean | Red5studio | 歴史的保全建築 | ハノイ |
| CoCo Cha Taiwan Tea & Coffee | PT Arch Studio | クラシック城郭風建築の融合 | ベトナム中部 |
| Namra Coffee | D1 Architectural Studio | 1970年代ウェディングドレスショールーム | ホーチミン市 |
| Okkio Duy Tan Caffe | sgnhA | 仏植民地時代のセミデタッチドヴィラ | ホーチミン市 |
| DeHue Coffee | son.studio | 伝統的フエ木造建築 | フエ |
| Tan Coffee | Son Studio | 廃工場(前面のコンクリート天井を保持) | ベトナム南部 |
| Sipply Coffee | sgnhA | モダニスト構造 | ホーチミン市 |
| Adiuvat Coffee Roaster | A+H architect | 1975年以前のタウンハウス | クイニョン |
| Bo Bakery | Nhabe Scholae | サイゴン旧市街のショップハウス | ホーチミン市 |
The Cocoa Project:メコンデルタのカカオで故郷と再接続
ホーチミン市にある1950年代のモダニスト別荘を、T3 Architectsが改装した。数十年にわたる工業利用で覆い隠されていたオリジナルの建築意匠を丁寧に剥がし、カカオとパティスリーに特化した空間として蘇らせた。メコンデルタ産のカカオを使ったチョコレートドリンクが看板メニューだ。
Okkio Duy Tan:残りわずかな仏植民地ヴィラで淹れる一杯
ホーチミン市Duy Tan通りの路地裏に佇む、フレンチコロニアルのセミデタッチドヴィラ。周辺では取り壊しが進む中、「この地区に残る数少ない本物のヴィラのひとつ」をカフェとして活用している。sgnhAが設計を手がけた。
ハノイの蔵書3トンカフェ「Tiny Revolution」
ArchDailyの10選には含まれていないが、ハノイのヘリテージカフェ文脈で注目すべき1軒がある。ホアンマイ区Giai Phong通りの「Tiny Revolution Cafe」は、約1,600平方メートルの空間に3トンの古書を配架した圧巻の空間だ。
オーナーのフィ・ラン・コアは、14億VND(約820万円)を投じて開業。2か月かけて収集した古書が、吹き抜けを囲む巨大な書棚に積み上がる。レンガの壁をむき出しにし、天井の構造体を露出させたデザインは、ハノイの集合住宅の記憶をそのまま残している。
| 項目 | Tiny Revolution Cafe |
|---|---|
| 住所 | 348 Giai Phong, Hoang Mai, Hanoi |
| 面積 | 約1,600 m2(2フロア) |
| 蔵書 | 約3トン(文学・歴史・自己啓発・児童書) |
| ドリンク価格 | 30,000~55,000 VND(約180~320円) |
| 営業時間 | 7:00~22:30 |
| 収容人数 | 最大約500名 |
SNS・メディアの反応
- 「ベトナムの建築家がカフェを通じて遺産を守っている。政府より効果的かもしれない」(ArchDaily読者コメント)
- 「Okkioのヴィラ、あと数年で周囲は全部ビルになる。今のうちに行くべき」(Saigoneer記事)
- 「3トンの古書に囲まれて読書する贅沢。ドリンク180円から。ハノイでこのコスパは異常」(Vietnam.vnニュース)
日本人旅行者への実用ガイド
10軒のうち半数以上がホーチミン市に集中しているため、ホーチミン市の新規カフェ巡りと組み合わせやすい。Cafe Apartmentが入る42 Nguyen Hueビルも、実はフレンチコロニアル建築のリノベーションだ。
ハノイならCafe Giangのエッグコーヒーを飲んだ後に、The Running Beanまで足を延ばすルートがおすすめ。
「壊す」から「使い続ける」へ ベトナム建築保全の転換点
ベトナムの都市部では、古い建物を壊して高層ビルを建てる再開発が長年続いてきた。だがここ数年、若い建築家たちが「既存の建物をカフェとして活用することで、保存と経済活動を両立する」モデルを次々と生み出している。ArchDailyの特集は、その動きを国際的に可視化した意義がある。
まとめ:建築を味わうカフェ巡りのすすめ
コーヒーの味だけでなく、建物そのものを楽しむカフェ巡り。1950年代のモダニスト別荘で飲むカカオドリンクも、仏植民地ヴィラで飲むスペシャルティコーヒーも、その空間があるからこそ成立する味だ。ベトナム旅行の新しい楽しみ方として、ヘリテージカフェ巡りを計画に加えてほしい。
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