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イタリアの高級ファッションブランド「Dolce & Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)」が、2026年4月にホーチミン市1区のレックスホテル(Rex Hotel)アーケードでベトナム初となるポップアップストアを開設しました。同ブランドはIPP Group傘下のDAFCを通じてベトナム市場に展開し、最新の女性向けコレクションを中心に、男性向けレディー・トゥ・ウェア(既製服)・シューズ・アクセサリーをラインナップしています。
ベトナムの高級品市場は2026年に342億USD(約5兆175億円・1USD≒147円)規模に達し、2031年までに636億USD規模への成長が見込まれています。富裕層人口(純資産100万USD以上)は2026年時点で約25,812人と推計され、ASEAN圏内でも最速ペースで拡大中です。日本企業がベトナムのラグジュアリー市場に参入する際の判断材料として、今回のポップアップ事例を整理します。
DAFC(Duy Anh Fashion & Cosmetics)と現地紙の発表をもとに整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ブランド | Dolce & Gabbana |
| 場所 | Rex Hotel Arcade, Shop 5-6 |
| 住所 | 141 Nguyen Hue Boulevard, District 1, Ho Chi Minh City |
| 開設日 | 2026年4月12日 |
| 開設形態 | ポップアップ(旗艦店化前のテストマーケティング) |
| 取扱商品 | 女性向け新作コレクション(メイン) 男女ready-to-wear、シューズ、アクセサリー |
| 運営 | DAFC(IPP Group傘下) |
| デザイン | ミラノ拠点デザイナー Giovanni Bressana 監修・赤を基調 |
IPP Groupはベトナム高級ブランド流通の70%を扱うリーディングカンパニーで、配下に100以上の海外ブランドを抱えます。Burberry、Chanel、Calvin Klein、Salvatore Ferragamo、Hermèsなど主要ラグジュアリーがDAFC・ACFC経由で展開されています。
ベトナムの可処分所得・富裕層人口・消費トレンドの3軸で整理します。
| 年 | 富裕層(HNWI)人口 | GDP成長率 | 高級品市場規模 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 約14,800人 | 2.9% | 約9.5億USD |
| 2023年 | 約19,600人 | 5.0% | 約16.8億USD |
| 2025年 | 約24,200人 | 6.8% | 約28.4億USD |
| 2026年(予測) | 約25,812人 | 6.5% | 約34.2億USD |
| 2031年(予測) | 約42,000人 | 6.2% | 約63.6億USD |
出典:Mordor Intelligence、Knight Frank Wealth Report、ベトナム財務省
ホーチミン市は富裕層7,200人を抱え、ベトナム高級品消費の37.65%(2025年時点)を占めます。レックスホテル周辺のNguyen Hue通り・Dong Khoi通り・Le Loi通りには、Hermès、Louis Vuitton、Chanel、Cartier、Tiffanyなどが集積する「サイゴン・ラグジュアリーストリート」が形成されています。
主要海外ブランドのベトナム1号店オープン年と店舗数を整理します。
| ブランド | ベトナム1号店年 | 現店舗数 | 主要立地 | ベトナム流通担当 |
|---|---|---|---|---|
| Louis Vuitton | 1997年 | 4店舗 | HCM/HN | LVMH直営 |
| Hermès | 2008年 | 2店舗 | HCM/HN | DAFC |
| Chanel | 2008年 | 3店舗 | HCM/HN | DAFC |
| Burberry | 2011年 | 5店舗 | HCM/HN/DN | ACFC |
| Cartier | 2012年 | 1店舗 | HCM | DAFC |
| Dolce & Gabbana | 2017年(旗艦) | 2店舗 | HCM | DAFC |
| Bottega Veneta | 2019年 | 1店舗 | HCM | DAFC |
| Tiffany & Co. | 2020年 | 1店舗 | HCM | DAFC |
ベトナムのラグジュアリー流通は、IPP Group(DAFC・ACFC)が事実上の独占的代理店として機能している点が特徴です。日本市場と異なり、ブランドオーナーは現地パートナーへの依存度が高い構造です。
| 商品カテゴリ | ベトナム店頭価格目安 | JPY換算(1USD=147円) |
|---|---|---|
| Dolce & Gabbana ハンドバッグ | 1,800〜3,500USD | 約26.5万〜51.5万円 |
| 同 シューズ | 650〜1,200USD | 約9.6万〜17.6万円 |
| 同 ready-to-wear(ドレス) | 1,500〜4,200USD | 約22.1万〜61.7万円 |
ベトナム店頭価格は欧州本国比で15〜25%高く、日本店頭価格よりも10〜15%高い水準です。富裕層は香港・シンガポールでまとめ買いする傾向が依然強く、現地小売は「ブランド体験の場」としての機能が大きい状況です。
開設後のベトナム語SNS・ファッションメディアコメントから3件を意訳・匿名で抜粋します。
「ドンコイ通りのHermèsとLouis Vuittonは並ぶがDolce & Gabbanaが少し離れていて訪れにくかった。レックスホテルのアーケードに入ったことで、シティツアーとセットで立ち寄れるようになった。新作のシシリーアン柄ドレスは即完売した」
「以前はバンコクや香港で買っていたが、ベトナム店舗で買えば免税申請が国内で完結し時間が節約できる。価格差15%程度なら国内で買う」
「DAFCが今年だけで3つの新規ブランドを誘致している。ベトナム富裕層の購買力は東南アジアで最速で伸びており、欧州ブランド側もテストマーケティングのスピードを上げている」
日本企業がベトナム高級品市場に参入する場合、5つの論点があります。
| 論点 | 判断軸 |
|---|---|
| 直営vs代理店 | 富裕層人口25,000人規模では直営損益分岐点が高い |
| IPP Group一択か | 日本ブランドは三井物産・住友商事ルートも選択肢 |
| 立地交渉 | レックスホテル・ヴィンコムセンター・タカシマヤが3大候補 |
| 関税 | 高級品は関税20-30%+VAT10%+特別消費税15%が基本 |
ベトナム富裕層は「LINE的SNS」より「Zalo」「Facebook」を多用するため、日本式の店舗体験+デジタル接客の組み合わせが重要です。Agriture社運営の食品OEMの窓口では、こうしたベトナム市場進出を検討する食品・ライフスタイル系メーカー向けの情報提供を行っています。
レックスホテルは1959年開業のサイゴン・コロニアル建築の象徴で、ベトナム戦争時には外国人記者団の主要宿泊地でした。1区Nguyen Hue通り・Le Loi通りの交差点に立地し、現在は政府接待にも使われるアイコンホテルです。
| ブランド | 業態 | フロア |
|---|---|---|
| Dolce & Gabbana(新規) | ファッション | アーケード5-6 |
| Cartier | ジュエリー | アーケード3 |
| Versace | ファッション | アーケード4 |
| Salvatore Ferragamo | レザー | アーケード7 |
| ベトナム高級漆器 | 工芸品 | アーケード10-12 |
ホーチミン市のラグジュアリーストリートの観光ルートはホーチミン市1区の観光ガイドも参考になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | Dolce & Gabbana Rex Hotel Pop-up |
| 住所 | 141 Nguyen Hue Blvd, Ben Nghe Ward, District 1, HCMC |
| 営業時間 | 9:30-22:00(無休) |
| アクセス | ベンタン市場から徒歩約5分 |
| 駐車場 | レックスホテル地下P利用可(VIP card必要) |
| 決済 | カード・現金・Apple Pay対応 |
| 免税手続き | パスポート提示で国際空港受取VAT還付可 |
| ドレスコード | スマートカジュアル推奨 |
ドルチェ&ガッバーナのレックスホテル ポップアップは、単なる新店オープンではなく「ベトナム富裕層が国内でラグジュアリーを買う時代」の象徴です。富裕層人口25,812人・市場規模342億USD(5兆円)の市場は、シンガポール・タイに次ぐ東南アジア第3位の規模に育ちつつあります。
日本企業のベトナム参入における3つのアクションは以下の通りです。
ベトナム市場は「越境EC+ホーチミン1号店」の組み合わせが当面の最適解です。富裕層拡大スピードは日本の1980年代後半の伸びに匹敵しており、参入タイミングを逃さない判断が問われます。