ベトナム大手紙タインニエンが連載した「ホーチミンで故郷の店を探して(Đi tìm quán ăn quê nhà ở TP.HCM)」というグルメ企画が反響を呼び、掲載された地方料理店に客が殺到している。朝の混雑がすさまじく、9時半で全品完売して早じまいする店まで出た――と同紙が報じた(2026年6月30日報道)。ホーチミンは北から南まで各地方の出身者が集まる街で、路地の一軒に一つの地方の味が眠っている。旅人にとっては、この連載がそのまま「地方食べ歩き地図」になる。
連載14本が火をつけた「故郷の一杯」ブーム
タインニエンの連載は全14本。ハノイのブンタン、クアンガイのゼリー菓子スーソア、フエの揚げ餅バインラムイット、ホイアンのカオラウ、フーミーのブンザム、ザライの発酵カニ麺ブンクアトイ、サーデックのフーティウ、チャウドックのブンカー、バクリューのブンマム、カマウのバインタムカイなど、北部から南部まで一地方につき一皿を紹介していった。共通するのは「観光名所ではなく、その地方の出身者が郷愁で通う普段づかいの店」という視点だ。
掲載後、店側は想定を超える来客に対応するため人手を増やし、デリバリーアプリの受注を一時停止して店内客をさばく店も現れた。売名的な行列ではなく、「知られていなかった実力店に、記事が地図を与えた」形での混雑である点が、この現象の面白いところだ。
朝9時半で完売──ハノイの「ブンタン」がなぜ売り切れるのか
連載で特に話題になったのが、フーニャン区ホービエウチャイン通り50番地の「Bún Thang 50」。ブンタンは鶏肉・錦糸卵・干しエビなどを細く刻んで澄んだスープにのせるハノイの伝統麺で、手間がかかるぶん一日に作れる量に限りがある。ここは1990年創業で三代続く老舗。営業は朝6時から午後1時までだが、記事掲載後は9時半にはその日のぶんが尽きる日が出た。ハノイ以外ではめったに出会えない一杯を、ホーチミンで食べられること自体が旅人には価値になる。
この「午前中で完売する」パターンは、ベトナムの人気食堂に共通する落とし穴でもある。以前紹介した午後1時に閉店するサイゴンのカオラウ店のように、狙った一杯があるなら開店直後を目指すのが鉄則だ。
「臭いのに、やみつき」ザライの発酵カニ麺という冒険
もう一軒、旅の話題になるのがザライ省の郷土料理を出す「Măm Măm Gia Lai」。看板メニューのブンクアトイ(bún cua thối)は、田ガニを発酵させた独特の匂いを持つスープ麺で、地元では「臭いのに、つい癖になる(Thum thủm mà… lỡ ghiền)」と愛される。開業10年近い店で、客のおよそ半分がザライ出身者、SNSで知って訪れる外国人客も出てきているという。挑戦意欲のある旅人には、フォーやバインミーの先にある「地方の本気」を体験できる一杯だ。
値段と営業時間で見る「地方麺食べ歩き」早見表
いずれも1杯あたり30〜60円ほど(1万ドン≈約60円で換算)という手頃さで、地方の味を試せるのがホーチミンの強みだ。旅程に組み込みやすいよう、連載で話題になった代表店を整理した。
| 店名 | 地方の味 | 場所(ホーチミン) | 目安価格 | 営業時間 |
|---|---|---|---|---|
| Bún Thang 50 | ハノイのブンタン(鶏だし澄まし麺) | フーニャン区ホービエウチャイン通り50 | 4万ドン〜(約240円〜) | 6:00〜13:00 |
| Măm Măm Gia Lai | ザライの発酵カニ麺ブンクアトイ | タンミータイ坊(旧ビンタン区)D5通りの路地 | 2.7万〜5.6万ドン(約160〜340円) | 11:00〜21:00 |
日本人旅行者が「地方料理店」を探すときのコツ
ガイドブックの定番はフォーとバインミーに偏りがちだが、ホーチミンの醍醐味はむしろ「各地方の出身者が守る一皿」にある。探し方のコツは三つ。第一に、店名や看板に地方名(Gia Lai=ザライ、Cà Mau=カマウなど)が入った店を狙うこと。地元出身者向けの本格店であるサインだ。第二に、開店直後を狙うこと。朝の麺類は昼前に売り切れる前提で動くと外さない。第三に、匂いや見た目で身構えず一度試すこと。発酵カニ麺のように「臭みこそ地方の個性」という料理にこそ、その土地の記憶が詰まっている。
ホーチミンは交通の便も改善が続いており、路地の名店へのアクセスもしやすくなってきた。7月から134路線が無料になった市バスを使えば、区をまたいで点在する地方料理店をはしごするのも現実的だ。有名観光地の合間に一軒、地方の味を差し込むだけで、旅の記憶の解像度がぐっと上がる。
混雑と「食べ逃し」を避ける実用メモ
メディア掲載直後の店は、しばらく通常より混みやすい。狙いの店があるなら、平日の開店直後を第一候補に。麺類は昼前完売が珍しくないので、朝食枠に入れておくと確実だ。人気が集中している時期はデリバリー受注を止めている店もあるため、確実に食べたいなら店に足を運ぶのが近道になる。地方料理は日によって仕込み量が変わることもあり、「今日は早く売り切れました」も旅の一部として楽しむ余裕を持っておきたい。
よくある質問
ブンタンやブンクアトイは、どのくらいの予算で食べられますか?
いずれも1杯あたり数十円〜数百円と手頃です。Bún Thang 50は1杯4万ドン(約240円)から、Măm Măm Gia Laiのブンクアトイは2.7万〜5.6万ドン(約160〜340円)が目安です(1万ドン≈約60円で換算)。地方の本格料理を低予算で試せるのがホーチミンの魅力です。
朝に行かないと食べられないのは本当ですか?
ブンタンのように仕込み量が限られる麺類は、メディア掲載後は午前9時半ごろに完売する日も出ています。狙いの店があるなら、開店直後の来店が確実です。一方、ブンクアトイの店は昼から夜まで営業しているため、時間帯の自由度は比較的高めです。
発酵カニ麺は匂いが強いと聞きますが、初めてでも大丈夫ですか?
ブンクアトイは田ガニを発酵させた独特の香りが特徴で、地元でも「臭いのに癖になる」と言われる料理です。匂いに慣れれば深い旨みが楽しめると評判で、外国人客も少しずつ増えています。不安なら小サイズから試すのがおすすめです。
参照元
Thanh Niên: Quán ăn quê nhà ở TP.HCM ‘đóng cửa sớm vì quá đông’ sau loạt bài của Báo Thanh Niên
Thanh Niên: Quán bún thang bình dân trứ danh TP.HCM, truyền 3 đời
