ベトナム中部ビンディン省の港湾都市クイニョン(Quy Nhon)が、米Lonely Planetが2025年10月に発表した「Best in Travel 2026」の世界25選にランクインした。アジアからは数都市のみ、ベトナムからは唯一の選出となる。Lonely Planetは「沿岸アドベンチャーとシーフードを楽しむのに最適」と評価し、Ky Co・Bai Xep などのビーチ、Cham朝の遺跡、混雑しない漁村文化を推している。ダナン・ホイアンが連休に大渋滞する一方で、クイニョンは「自分だけのビーチが見つかる」と紹介された点が、日本人旅行者の関心を集めている。
Lonely Planetが推した3つの理由
Lonely Planetは紹介文のなかで「自然の美と文化がシームレスに溶け合う海岸都市」と表現した。具体的に挙げられたのは、三日月形のKy Coビーチ、夜になると屋台街に変貌するBai Xepの入江、岩礁とサンゴが残るNhon Hai漁村の3カ所だ。さらに「Twins Towers」「Banh It Towers」と呼ばれるCham朝(2〜15世紀に中部ベトナムを統治した王朝)の煉瓦塔群、Ong Nui寺の600段の階段の先にある巨大な座仏像も推されている。要するに、海・遺跡・漁村文化が徒歩+バイク移動圏内に密集している点が、独立系旅行者の心を掴んだ。
ビンディン省という背景
クイニョンはビンディン省の省都で、ホーチミン市から約650km北、ダナンからは約300km南に位置する。ベトナム航空・ベトジェット・バンブー航空がフーカット空港(Phu Cat Airport)に1日複数便を運航しており、ハノイ・ホーチミンから約1時間半。Cham朝の都ヴィジャヤ(Vijaya)が現在のビンディン省にあったことから、ミーソン遺跡(ホイアン近郊)と並ぶCham文化の中心地として位置づけられている。中央政府は2025年に省名整理を進めており、行政上はビンディン省として広域観光プロモーションが進む見込みだ。
クイニョン主要スポット比較表
| スポット | タイプ | 所要時間 | 市内からの距離 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Ky Co ビーチ | 三日月ビーチ | 半日 | 約25km | 断崖に囲まれた透明度の高い湾、ボートツアー発着地 |
| Bai Xep | 漁村+ビーチ | 半日〜1泊 | 約13km | 夜は屋台街に変身、バックパッカー宿あり |
| Nhon Hai 漁村 | サンゴ礁の漁村 | 半日 | 約20km | シュノーケリング・ホームステイ可能 |
| Twins Towers | Cham朝煉瓦塔 | 1〜2時間 | 市内中心 | 11〜13世紀建立、入場料約20,000VND(約120円) |
| Banh It Towers | Cham朝塔群 | 2時間 | 約20km | 4塔が高台に立つ、夕景が絶景 |
| Ong Nui寺 | 山岳寺院 | 半日 | 約30km | 600段の石段、東南アジア最大級の座仏 |
現地・業界関係者の反応
ビンディン省観光局の関係者はベトナム国内紙に対し「コミュニティツーリズムを軸に、Nhon Ly・Nhon Hai・Bai Xep・Hai Minh の4漁村でホームステイ整備を進めてきた成果」とコメントした。地元のホテル業界からは「2026年は国内ビーチリゾートとしての知名度が一気に上がる。客室稼働率は前年比1.3〜1.5倍を見込む」との声が上がる。一方で日本の旅行業界関係者からは「ハノイ・ホーチミン経由で乗り継ぎが必要なため、まずは個人手配の中級〜上級者層にハマりそう。団体ツアーの受け皿は2027年以降」と慎重な見方も出ている。VnExpress などの主要メディアは、Nha Trang や Hoi An が混雑で評価を落とすなか、クイニョンが「ローカル感を残したビーチタウン」として浮上した構図を強調した。
日本人旅行者にとっての意味
「ダナンはもう3回行った」「ホイアンの旧市街は人で進めない」と感じている層にとって、クイニョンは新しい選択肢になる。直行便はないので、ハノイかホーチミンを経由してフーカット空港に飛ぶか、ダナンから列車で約7時間という選択肢がある。シーフード文化が圧倒的に濃く、Banh xeo muc(イカの塩味クレープ)、Bun cha ca(魚すり身の麺)、Banh hoi long heo(極細米麺と豚の盛り合わせ)などダナンとは違うローカル料理が並ぶ。物価はダナンの7〜8割で、3つ星ホテル一泊4,000円台、海鮮ディナー一人1,500円程度が目安だ。
ベトナム国内旅行のトレンドについては ダナンの夏旅トレンド で詳しく扱っており、クイニョンの位置づけはその「次の世代のビーチタウン」として理解しやすい。
業界への波及・関連トレンド
クイニョンの選出は、単独の観光ニュースでは終わらない。第一に、ベトナム政府の「中部観光ベルト」構想(フエ―ダナン―ホイアン―クイニョン―ニャチャン)の最後の空白だった同市が国際的お墨付きを得たことで、国道1号線・南北高速鉄道計画への投資判断材料が増える。第二に、ミシュランガイド・ベトナム版が2026年6月にハノイで授賞式を行う流れと連動し、地方都市の食文化が一斉に脚光を浴びる構図ができている。第三に、クイニョン近郊にはAnantaraやFLC、TUI BLUEなど高級リゾート系の進出が進んでおり、Best in Travel入りで開発計画の前倒しが起こり得る。
ベトナムが観光大国としての地位を確立してきた経緯は ベトナムがタイに迫る観光競争 でも触れている。クイニョンの選出はこの流れの象徴的な一手と言える。
3〜4日モデルプラン(実用情報)
| 日程 | 午前 | 午後 | 夜 | 目安予算 |
|---|---|---|---|---|
| 1日目 | ハノイ/ホーチミン発→フーカット空港着 | 市街地散策・Cham博物館 | Bun cha ca のローカル食堂 | 5,000円 |
| 2日目 | Ky Co日帰りボートツアー | ビーチでシュノーケリング | Bai Xep屋台ナイトマーケット | 6,000円 |
| 3日目 | Banh It Towers + Twins Towers | Ong Nui寺・座仏像 | 市内シーフードレストラン | 4,000円 |
| 4日目 | Nhon Hai漁村半日ツアー | 市内土産購入 | フーカット空港発 | 3,500円 |
合計予算は航空券別で一人あたり18,000〜25,000円程度。ダナンより観光客が少ないぶん、ホテルとの直接交渉やバイクタクシー(Xe om、Xanh SMバイク)の利用がスムーズに行く。Cham塔群への移動は配車アプリ Xanh SM のEVカーが20,000〜80,000VND(120〜480円)ほどで使える。
まとめ
Lonely Planetの「Best in Travel 2026」入りで、クイニョンは2026年のベトナム旅行で最も注目される地方都市になる。ダナン・ホイアンの混雑を避けたい層、Cham文化を深掘りしたい歴史好き、漁村ナイトマーケットでローカル料理を食べ歩きたい人にとって、いまが最も「整いすぎていない」状態で訪れられるタイミングだ。次のアクションとしては、(1) フーカット空港行きのチケット価格を半年前に確認、(2) Bai Xep のバックパッカー宿か Anantara のリゾートかを早めに予約、(3) ダナン or ホイアンと組み合わせた周遊ルートを検討、の3点を勧めたい。
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