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ベトナム国内のカフェ・コーヒーショップの総数が50万軒を超えたことが、コンサルティング企業Mibrand Vietnamの調査で明らかになった。チェーン店から路上の小さなカフェスアダまで含めた数字で、年間売上高は14.6億ドル(約2,263億円)に達する。年平均成長率(CAGR)は7.56%で、ベトナムのコーヒー市場は東南アジアでも突出した伸びを見せている。
50万軒という数字はMibrand Vietnamの推計で、iPos.vnの別調査では2023年末時点で約31.7万軒という数字もある。いずれにしても、ベトナムが「世界有数のカフェ密集国」であることに変わりはない。
チェーン店は店舗数こそ全体の一部だが、売上シェアでは存在感を増している。一方で、ベトナムのコーヒー文化を支えているのは圧倒的多数の個人経営カフェだ。路地裏のプラスチック椅子で飲むカフェスアダ(練乳コーヒー)から、エアコンの効いたインテリア重視の「映えカフェ」まで、業態の幅広さがベトナムの特徴といえる。
ベトナムのコーヒーチェーン市場は、国内ブランドが圧倒的に強い。以下に主要チェーンの店舗数をまとめた。
| チェーン名 | 店舗数 | 特徴 |
|---|---|---|
| Highlands Coffee | 721店舗 | 最大手。空港・商業施設を中心に全国展開 |
| Trung Nguyen E-Coffee | 542店舗 | 老舗ブランドのフランチャイズ型 |
| Phuc Long | 約150店舗 | 茶系メニューにも強い。米国進出済み(2021年〜) |
| The Coffee House | 約150店舗 | 若者人気No.1。ダナン・カントーから撤退し主要都市に集中 |
| Katinat | 拡大中 | ホーチミン発の新興チェーン。高品質路線 |
| Cong Caphe | 約100店舗 | ミリタリーテーマ。カナダにも出店 |
| Starbucks | 約110店舗 | サイゴンのReserve店を閉店。ベトナム市場では苦戦 |
| %Arabica(日本発) | 数店舗 | 京都発のスペシャルティチェーンがベトナム上陸 |
| Cotti Coffee(中国発) | 10店舗〜 | サイゴンから急速展開を開始 |
※店舗数はMibrand Vietnam調査およびSaigoneer報道に基づく。円換算は1ドル=約155円(2026年4月時点)。
| 指標 | 数値 | 円換算 |
|---|---|---|
| カフェ総数 | 50万軒超 | – |
| 年間売上高 | 14.6億ドル | 約2,263億円 |
| 年平均成長率(CAGR) | 7.56% | – |
| カフェスアダ1杯(路上) | 15,000〜25,000 VND | 約90〜150円 |
| チェーン店1杯 | 39,000〜65,000 VND | 約240〜400円 |
| スペシャルティ1杯 | 80,000〜120,000 VND | 約490〜740円 |
ホーチミン市の飲食業コンサルタントは「50万軒という数字に驚く人もいるが、ベトナム人の生活リズムを考えれば当然だ。朝の出勤前、昼休み、午後の商談、夕方の友人との時間——1日に3〜4回コーヒーを飲む人は珍しくない」と話す。
SNS上では「うちの通りだけで10軒はある」「競争が激しすぎて3カ月で閉店する店も多い」という声が目立つ。一方で、地方都市ではまだチェーン店が少なく「ハノイやサイゴンのトレンドが来るのを待っている」という投稿もある。
日本の%Arabicaがベトナムに進出したことについては「京都発のブランドがベトナムのコーヒー市場に挑むのは面白い」「値段は高いが雰囲気は抜群」と、好意的な反応が多い。
50万軒のカフェがあるベトナムでは、本場のベトナムコーヒー体験が旅の大きな目的になる。路上カフェで90円のカフェスアダを飲み、次にチェーン店で新作フルーツコーヒーを試し、夜はスペシャルティカフェでシングルオリジンを味わう——という「1日3カフェ」の過ごし方が、ベトナム旅行の定番になりつつある。
ハノイのカフェガイドを参考に旧市街のエッグコーヒー発祥店を訪ねるのもいいし、ホーチミン市では若者トレンドの最新カフェを攻めるのも面白い。
物価面でも、ベトナムの物価ガイドで紹介しているとおり、カフェ1杯100〜400円台で楽しめるのは日本人旅行者にとって大きな魅力だ。
市場が拡大する一方で、淘汰も進んでいる。The Coffee Houseがダナンとカントーから撤退し、スターバックスがサイゴンのReserve店を閉めたことは、「店舗数を増やすだけでは勝てない」という現実を示している。
代わりに台頭しているのが、Katinatのような高品質路線の新興チェーンと、Cotti Coffee(中国発)のような低価格・大量出店モデルだ。ベトナムのカフェ市場は「安さで勝つか、体験で勝つか」の二極化が進むと予想される。
日本勢では%Arabicaに続き、他のスペシャルティブランドの参入も噂されている。フランス統治時代から続くベトナムのコーヒー文化に、新しい層が加わりつつある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定番メニュー | カフェスアダ(cà phê sữa đá)=練乳入りアイスコーヒー |
| 注文のコツ | 「カフェ・スア・ダー」で通じる。砂糖不要なら「コン・ドゥオン」と伝える |
| 価格帯 | 路上15,000 VND(約90円)〜 スペシャルティ120,000 VND(約740円) |
| 営業時間の目安 | 路上カフェ:6:00〜 / チェーン:7:00〜22:00 / 映えカフェ:8:00〜23:00 |
| WiFi | チェーン・映えカフェはほぼ完備。路上カフェは不安定 |
| 決済 | 現金が基本。チェーン店ではMoMo・ZaloPay等のQR決済も可 |
| おすすめエリア(ハノイ) | 旧市街・鎮国寺周辺・西湖エリア |
| おすすめエリア(HCMC) | 1区グエンフエ通り周辺・3区・タオディエン |
50万軒超のカフェを擁するベトナムは、ブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国としての実力を、消費の側面でも証明している。Highlands Coffeeの721店舗を頂点にしたチェーン勢力図、年間14.6億ドルの市場規模、そして毎年7.56%の成長率——数字が示すのは「コーヒーはベトナム人の日常そのもの」という事実だ。日本人旅行者にとっては、1杯90円から始まるカフェ体験が、ベトナム旅行の最大の楽しみの一つになるだろう。