ベトナムのSIMに顔認証——2026年の新ルールと旅行者への影響

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ベトナムを旅行・出張するとき、多くの人が現地で安いSIMカードやeSIMを手に入れます。そのSIMをめぐる本人確認の仕組みが、2026年に入ってさらに厳しくなりました。きっかけは「顔認証(生体認証)」を組み込んだ新しい通達の施行です。ニュースの見出しだけを見ると「ベトナムで新しい通信法ができた」「SIMが使えなくなる」と身構えてしまいますが、一次情報をたどると誤解されやすい点がいくつもあります。制度の全体像と、日本人旅行者・在住者にとっての実際の影響を分けて整理します。

目次

2026年に動いたのは「法律」ではなく「顔認証の通達」

新しいのは通達と執行、土台の法律は2023年から

最初に押さえておきたいのは、2026年に新しい「電気通信法」ができたわけではない、という点です。2026年に動いたのは、法律そのものではなく、その下にある「通達(Circular)」と、その執行スケジュールでした。3つの層を分けると、誤解が解けます。

時期 動いたこと 区分
2023年 電気通信法(Law No. 24/2023/QH15)成立、主要部分は2024年7月施行 法律
2024年 政令(Decree 163/2024/ND-CP)公布、加入者の本人確認手順を具体化 政令
2026年 通達(Circular 08/2026/TT-BKHCN)施行(4月15日)+未認証者の発信停止執行(6月15日) 通達・執行

通達は2026年3月31日に公布、4月15日に施行されました。位置づけは、2023年の法律と2024年の政令が進めてきた「実名・本人確認の徹底」という流れに、顔認証という一段強い確認を加えた最新の一手です。

発行元は科学技術省で、情報通信省ではない

通達の発行元はベトナムの科学技術省(Ministry of Science and Technology)です。かつて通信行政を所管していた情報通信省(MIC)は2025年初めに科学技術省へ統合されており、通信規制は現在この省の傘下にあります。古い記事では「情報通信省が発表」と書かれていることがありますが、現在の正式な所管はこちらです。

顔認証はどんなときに必要になるのか

主なきっかけは「端末の入れ替え」

通達で顔認証が求められる代表的なきっかけは、「端末(スマートフォン本体)を入れ替えたとき」です。同じSIMを別の端末に差し替えたり、機種変更したりした場合に、本人かどうかを改めて確認する仕組みです。認証の手段は主に次の4つが用意されています。

  • 国家デジタルID「VNeID」アプリでの認証
  • 通信事業者(Viettel、VinaPhone、MobiFoneなど)の公式アプリでの認証
  • 通信事業者の窓口(通信センター)での対面認証
  • 指定された登録ポイントでの認証

ベトナム国営メディアの報道では、端末を変えた後に一定時間内に認証しないと発信が一時停止され、未認証の状態が続くと段階的に制限が進むとされています。細かな日数は事業者や状況で変わり得るため、「端末を替えたら早めに認証する」と理解しておくのが実用的です。なお、本人確認の強化は端末入れ替えだけでなく、加入者情報の確認全体に及ぶ枠組みで、番号付きSIMを新規に契約する場面でも生体情報を使った確認が組み込まれていく流れです。

6月15日の一斉停止は「別の話」

ここで混同しやすいのが、2026年6月15日から始まった「未認証利用者の発信停止」です。これは端末入れ替えの顔認証ルールとは別筋で、長く本人確認が済んでいない既存の加入者を整理するための執行です。Viettel・VinaPhone・MobiFone各社が、未認証の番号から順に発信を止め始めました。対象は数百万から一千万規模と報じられています(母数の取り方で数字に幅があります)。きちんと登録して使っている回線が、6月15日を境に突然止まるという話ではありません。

日本人旅行者への影響を整理する

影響は、滞在の長さで大きく変わります。短期と長期に分けて見ます。

区分 顔認証との関係 やること
観光・短期出張 端末を替えなければ通常はかからない 正規の場所でパスポートを提示してSIMを購入
長期滞在・在住 機種変更・端末買い替え時に求められる場合がある 契約事業者の公式アプリか窓口で確認(VNeIDは利用資格がある場合)

観光・短期出張の場合

数日から数週間の短期旅行で、現地SIMやeSIMを買ってそのまま同じ端末で使う分には、顔認証で急に使えなくなる心配は小さいと考えられます。顔認証のきっかけは「端末の入れ替え」なので、旅行中に端末を替えなければ、通常はそこに引っかかりません。

むしろ旅行者が向き合うのは、SIMを「買うとき」の本人確認です。番号付きの現地SIMを正規の店舗や空港カウンターで購入する場合、パスポートの提示と、本人とパスポートを撮影する電子的な本人確認(eKYC)が求められるのが一般的です。登録の厳格化が進む流れの中で、この手続きはより徹底される方向にあります。空港でも生体認証による出入国の高速化が進んでおり、本人確認のデジタル化はベトナム全体の方向性です。パスポートは必ず携帯しておきましょう。

長期滞在・在住者の場合

半年以上の滞在や駐在など、ベトナムの番号を継続的に使う人は、より直接的に関係します。機種変更や端末の買い替えをした際に顔認証を求められる可能性があるため、認証手段を事前に把握しておくと安心です。実務上は、まず契約している事業者の公式アプリか窓口での確認を前提にするのが現実的です。国家デジタルID「VNeID」は利用資格がある人向けの手段で、外国人パスポート保持者への適用がどこまで・どのように及ぶかは、政府の一次情報では細かく示されていません。重要な手続きの前には、契約事業者の窓口で最新の取り扱いを確認するのが確実です。

現地でSIM・eSIMを買うときの実務

旅行者目線で、いま押さえておきたい実務ポイントを整理します。

  • 番号付きの現地SIMはパスポート必須。空港到着ロビーのViettelなど正規カウンターや正規店で買えば、その場で登録まで済みます。料金は時期で変わりますが、データ中心のプランで15万〜20万ドン前後が目安です。
  • 観光客向けのデータ専用eSIMは、QRコードとWi-Fiだけで開通できるものが多く、ベトナムの番号を持たないため通常の登録フローには乗らないのが一般的です。手軽さを優先するならこちらも選択肢になります。
  • 路上や非正規の露店での未登録SIM購入は避ける。本人確認の厳格化で、登録が不十分なSIMは停止・解約のリスクが高まっています。

ベトナムに直行便で到着したら、まず正規の場所でパスポートを出して登録する。この手順を踏めば、旅行者が通信で困る場面はほとんどありません。

まとめ

2026年のベトナムのSIMルールは、見出しのインパクトほど旅行者を身構えさせるものではありません。中身は、2023年の電気通信法から続く本人確認の徹底という流れの中で、端末の入れ替え時に顔認証という確認が加わり、未認証の既存回線の整理が6月から動き出した、という2つの動きです。

日本人旅行者への実害は限定的です。短期なら、パスポートを携帯してSIMは正規の場所で買う。長期滞在者なら、機種変更時の顔認証に備えて事業者アプリや窓口を確認しておく。この2点で十分に対応できます。制度は運用が更新される可能性があるため、最新情報は事業者公式や現地報道で確認しておくと安心です。

よくある質問

短期の観光旅行でも顔認証は必要ですか?

同じ端末でSIMを使い続ける短期旅行なら、顔認証が求められる場面はほとんどありません。顔認証は主に「端末を入れ替えたとき」のきっかけで発生します。ただしSIM購入時のパスポート提示・本人確認は必要です。

2026年に新しい通信法ができたのですか?

新しい「法律」ができたわけではありません。土台の法律は2023年成立(2024年施行)、政令は2024年公布で、2026年に動いたのはその下の通達(Circular 08/2026)と、未認証回線の停止執行です。

6月15日に回線が止まったのは旅行者にも関係しますか?

6月15日の停止は、長く本人確認が済んでいない既存の加入者を整理するための執行です。正規に登録して使っている回線が突然止まるものではなく、新規に正規でSIMを買う旅行者が直接の対象になるわけではありません。

eSIMでも本人確認は必要ですか?

観光客向けのデータ専用eSIMは、ベトナムの番号を持たないものが多く、通常の登録フローに乗らないため手軽です。一方、番号付きのeSIMを契約する場合はパスポートと本人確認が必要になります。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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