豆乳に映った「想像のベトナム」——パリ育ちの青年がサイゴンで知った食卓の真実

パリ13区のチャイナタウンで育ったベトナム系フランス人のTom Phamが、サイゴンのレストランで「豆乳がメニューにない」と知った瞬間の衝撃を綴ったエッセイが、Saigoneerで公開された。ディアスポラ(離散民)の子どもが抱く「想像のベトナム」と、実際の食卓文化のズレを鮮やかに描き出している。

目次

パリ13区の食卓——豆乳が「ベトナムそのもの」だった少年時代

Tom Phamは、ベトナム人の親を持つフランス生まれの青年だ。幼少期の食卓は祖母が作るベトナム料理に囲まれていたが、家庭料理の延長ではない「本場のベトナム」を感じる瞬間がひとつだけあった。パリ13区のベトナム料理店で出される、冷たい豆乳(sua dau nanh)だ。

「ほのかな甘みと、少し土っぽい風味。食事の合間に飲むと涼しさが口に広がる」。Phamにとって、その一杯はフランスでは手の届かない「祖国の味」の象徴だった。

サイゴンで突きつけられた現実——「豆乳? ありませんよ」

初めてサイゴンを訪れたPhamは、レストランで当然のように豆乳を注文しようとした。しかし返ってきたのは、怪訝な顔と「tra da(アイスティー)ならありますけど」という一言。ベトナムの食卓で豆乳は定番ドリンクではなかった。朝の路上で売られることはあっても、レストランの食事に添えられるものではない。

パリ13区のベトナム料理店が豆乳を出していたのは、現地の華人系文化や在仏ベトナム人コミュニティ独自の食習慣が混ざった結果であり、ベトナム本国のスタンダードとは別物だったのだ。

「想像のベトナム」を生むディアスポラの食文化

この「ズレ」は、Pham個人の勘違いにとどまらない。移民コミュニティの食文化は、母国を離れた時点から独自の進化を始める。フランスで手に入る食材、現地の客の好み、華人系・ラオス系・カンボジア系の食文化が混ざり合い、「本国にはないベトナム料理」が生まれる。

要素パリ13区のベトナム料理サイゴンの実際
食事中の飲み物豆乳(sua dau nanh)アイスティー(tra da)
豆乳の位置づけレストランの定番メニュー朝の路上販売が中心
食文化の影響華人系・仏越混合ベトナム南部ローカル
「ベトナムらしさ」の基準両親・祖父母の記憶日常の生活実態

ダラットの豆乳も「あの味」ではなかった

Phamはその後、豆乳が名物のダラットでも飲んでみた。しかし「子どもの頃に感じたあの味」は再現されなかった。味の問題ではない。パリの薄暗いレストランで、家族に囲まれて飲んだあの豆乳には、「まだ見ぬ祖国への憧れ」という調味料が入っていたのだ。

エッセイの結びでPhamはこう書いている。「この神話的な “ベトナムの味” は、飲み物の中にはなかった。僕が探していたのは、地理的にも文化的にも遠かった故郷とのつながりだった」。

旅行者が体験できる「食文化のズレ」

ベトナムを訪れる旅行者にとって、このエッセイは「ガイドブックのベトナム料理」と「現地の食卓」のギャップを意識するきっかけになる。日本で食べるフォーとハノイのフォー、日本のバインミーとホーチミンの路上バインミーは、別の食べ物と言っていいほど違う。その違いこそが、現地を訪れる面白さだ。

ベトナムの豆乳を飲める場所

場所スタイル特徴
ホーチミン市内の朝市路上販売温かい豆乳+揚げパン(quay)が定番の朝食セット
ダラット市場周辺専門店高原の冷涼な気候で温かい豆乳が名物
ハノイ旧市街路上販売豆腐花(tau hu)と一緒に売られることが多い
パリ13区(参考)レストラン食事のサイドドリンクとして提供

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よくある質問

Q. ベトナムのレストランで豆乳は飲める?

A. レストランのメニューにはほとんどありません。朝の路上販売や市場の屋台で買うのが一般的です。

Q. パリ13区にベトナム料理店が多いのはなぜ?

A. 1970年代以降のインドシナ難民の定住先として13区が発展し、現在もベトナム・中華系の飲食店が集中するエリアです。

Q. 海外のベトナム料理と現地の違いは大きい?

A. 食材の入手性、現地客の好み、周辺の食文化の影響で、メニュー構成も味付けもかなり異なります。その違いを体験するのが旅の醍醐味です。

出典:
Saigoneer – How Soy Milk Symbolizes an Imagined Vietnam of My Childhood in France

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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