10月12日の夜、ホーチミン市のサイゴン駅で、ニャチャンへ向かう夜行寝台SNT1/SNT2の改装車両が公開された。手を入れたのは32両。4人用の個室寝台と6人用の個室寝台に食堂車が付き、シーツと枕、マットレス、カーテンは新品に替わり、照明と音響も入れ替えた。11907号車では空調のダクトまで引き直されている。Wi-Fiと24時間稼働の防犯カメラが付き、自動販売機も入った。24床の軟寝台車にはチェックイン用のスペースが設けられ、車掌と乗務員は英語で案内できるよう研修を受けている。サイゴン発は21時45分で、ニャチャン着は翌朝5時40分。逆向きのSNT1はニャチャンを20時20分に出て、サイゴンに5時に着く。片道およそ8時間、眠っているあいだに移動が終わる列車の中身が入れ替わった。
32両は新造ではなく走っていた寝台車の改装で寝具とカーテンから替えた
ベトナム各紙の原文で使われている動詞は一貫して「cải tạo」と「nâng cấp」、つまり改修と格上げだ。「đóng mới」(新造)という語は出てこない。工場から新しい車両が出てきた話ではなく、すでに走っていた車体の内側を作り直した話になる。替わったのは寝具とカーテン、照明、音響、それに接客の作り方だ。内装の配色はクリーム色とニャチャンの海を思わせる青で統一された。空調のダクトを騒音を抑える形に引き直し、乗客の側で温度を調整できるようにしたのは、各紙が挙げている限りでは11907号車の1両だけだ。
32両という数字も、1本の編成の長さではない。SNT1とSNT2は同じ区間を往復する1組の列車で、両方向を走らせるための車両をまとめた数と読むのが自然だ。報道はどの車種が何両かを書いていないため、個室寝台と食堂車の比率は当日の編成を見るまで分からない。
SNT1とSNT2は2017年から走っていて下りだけが9時間から7時間55分に縮んだ
SNT1とSNT2という番号は、今回が初登場ではない。2017年2月、当時のサイゴン鉄道運輸がこの区間に「高品質」をうたう列車を入れたときの番号が、すでにSNT1とSNT2だった。そのときの公表ダイヤはSNT2がサイゴン20時30分発でニャチャン5時30分着、SNT1がニャチャン19時10分発でサイゴン3時28分着。運賃は片道265,000〜423,000ドンと発表され、前年より15%安いとされた。停車はディーアンとタップチャムの2駅だった。
9年前の時刻と並べると、どこが動いたのかがはっきりする。サイゴン発は20時30分から21時45分へ1時間あまり遅くなり、到着は5時30分から5時40分へほぼ据え置き。下りの乗車時間は9時間から7時間55分に縮んだ。縮んだのは下り側だけで、ニャチャン発のSNT1は8時間18分から8時間40分へ逆に伸びている。夜に出て朝に着くという枠を守ったまま、出発を遅らせて夕方の数時間を旅行者に返した形だ。今回の発表は新しい路線や新しい列車が生まれた話ではなく、9年走り続けた「高品質列車」の中身をもう一度組み直した話だと読むほうが実態に近い。
2024年のSNT6とSNT3は中国ジンシン系の新造車でこちらは自社車両の手直し
同じサイゴン〜ニャチャンでは、2024年8月9日から別の番号の列車が試験運行に入っていた。SNT6とSNT3である。車両を新造したのは中国のジンシン(Jinxin)で、ベトナムの鉄道設備開発会社と組み、当時のサイゴン鉄道運輸が商業運行を担った。外装は赤と白、内装は木の黄色が基調。座席車と4人用個室寝台、食堂車、車掌車の組み合わせで、試験は8月9日から10月7日までの2か月、2日に1便の頻度だった。停車はサイゴン、ディーアン、ビエンホア、タップチャム、ニャチャン。最初の5往復は運賃が5%引きになった。
民間資本の新造車が先に入り、国鉄側は自社車両の改装であとを追う。この順番が32両の位置づけを決めている。設備の新しさで横に並びにいくのではなく、時刻表に番号が載り続ける定期の夜行という持ち場で張る側に回っている。
事業者の名前も2024年と2026年で違う。2024年の主体はサイゴン鉄道運輸(SRT)だったが、今回の主体は鉄道運輸株式会社(VTR)だ。ハノイ鉄道運輸(HRT)とSRTを1社にまとめる再編計画が2024年6月26日の首相決定562号で承認され、合併後の会社は8部門と17支店、従業員4,877人の規模で2024年11月1日から営業を始めている。今回の各紙は親会社をベトナム国家鉄道グループと表記している。
21時45分発5時40分着は空港から30キロの移動とホテル1泊を同時に省く
空路と比べたときの損得は、所要時間だけでは出ない。ホーチミンからニャチャンへ飛ぶときの玄関はカムラン国際空港で、ニャチャンの市街までは約30キロ離れている。市内に入るまでのタクシーや乗合バスを足すと、飛行時間の短さはそのぶん目減りする。対してニャチャン駅は市街の中心にあり、降りてすぐの範囲に宿がある。
21時45分に出て5時40分に着くダイヤは、宿の1泊分を移動に振り替える使い方ができる。夕方までホーチミンで用事を済ませ、夜に乗り、朝そのまま海に出る。帰りのSNT1は20時20分発で5時着なので、ニャチャン最後の1日を日没まで使える。金曜の夜に動いて土曜の朝から現地、という出張の組み方にも合う。
弱点も具体的だ。朝5時40分の到着では、宿のチェックインまで数時間空く。荷物を預かってくれる宿を先に押さえるか、駅の周りで朝食をとって時間を埋める前提で日程を組むことになる。改装で入ったチェックインスペースと自動販売機は、その待ち時間を少し軽くする程度の装備だと見ておいたほうがいい。車窓を目的にするなら夜行は向かない。ベトナムで景色そのものを売りにしているのは昼の区間で、ハイヴァン峠に蒸気機関車の煙が戻った動きなどはその系統にあたる。
カインホア省の1〜9月の宿泊客は約930万人で総来訪2,040万人とは数え方が違う
投資が向かう理由は、ニャチャン側の数字に出ている。カインホア省文化スポーツ観光局の推計では、2026年1〜9月に省を訪れた客は2,040万人超。うち宿泊した客は約930万人で、前年同期より45.6%増え、年間目標を10.8%上回った。国際客は710万人超で69%以上の増加。観光収入は68兆ドン近くで21%増、平均客室稼働率は約65%。省は2026年通年で2,370万人超、収入80.2兆ドン超を見込んでいる。1万ドン=約61円(2026年10月13日のレート)で換算すると、9か月の観光収入は約4,160億円にあたる。
2,040万人と930万人の差が、夜行列車の商売の形を決めている。前者には日帰りや通過の客も入る。朝5時40分に駅に降りる客は、その日の夜にその街で泊まる確率が高い。寝台の改装は、省が数えている頭数のうち単価の高い側を取りにいく動きだ。ただし、これらはいずれも省の推計値で確定値ではなく、伸び率も推計同士の比較になる。
切符は発車24時間以上前なら手数料10%で払い戻せる
切符はベトナム鉄道の公式サイトと公式アプリで買える。公式サイトの案内では、個人名義の切符の払い戻し手数料は発車の24時間以上前で運賃の10%、4時間以上24時間未満で20%。予定が動きやすい日程なら、この24時間の線を頭に入れて予約の順番を決めることになる。テト(旧正月)の繁忙期は扱いが変わるので、テト期間の列車の払い戻し規定は別に確認しておきたい。
改装された32両はSNT1とSNT2という番号に紐づく。同じ区間には番号の違う列車も走っているため、この内装を狙うなら列車番号で指定して取ることになる。選択肢は4人用個室と6人用個室で、個室単位で押さえれば家族や2組での移動が落ち着く。運賃は今回の発表では示されていないので、購入画面で確かめる必要がある。鉄道への投資はこの32両だけで動いているわけでもなく、高速鉄道ではビンスピードがシーメンスと結んだ契約の話が並行して進んでいる。
披露の場で、ベトナム国家鉄道グループの評議会メンバーであるディエップ・アイン・トゥアン氏は、見た目のいい列車よりも、便ごとに同じ安全とサービス品質を出し続けることのほうが重いと述べた。整備と運行の組み方、接客の態度を平らに保てるかという話である。32両の寝具が1年後も10月12日の夜と同じ状態かどうかは、披露の時点では誰にも分からない。
参照元
- Tuổi Trẻ「Ngành đường sắt ra mắt đoàn tàu chất lượng cao nối TP.HCM với điểm đến du lịch biển Nha Trang」
- Dân Trí「Tuyến đường sắt Sài Gòn – Nha Trang khai thác đoàn tàu chất lượng cao」
- Tiền Phong「Đi tàu du lịch chất lượng cao từ TPHCM tới Nha Trang hết 8 tiếng」
- VietnamPlus「Đoàn tàu chất lượng cao tăng sức hút du lịch đường sắt tuyến Sài Gòn-Nha Trang」
- Thời báo Tài chính Việt Nam「Khai thác thương mại tuyến tàu Sài Gòn – Nha Trang」
- Việt Nam News「Sài Gòn Railways launches luxury train to Nha Trang」
- VnEconomy「Hợp nhất hai Công ty Vận tải Đường sắt Hà Nội và Sài Gòn」
- Doanh nghiệp & Hội nhập「Khánh Hòa dự kiến đón 23,7 triệu lượt khách trong năm 2026」
- Đường sắt Việt Nam(公式きっぷ販売サイト)


