ミシュランガイドが2026年10月1日、ベトナムでの調査対象にフーコック島を加えると発表した。ハノイとホーチミン市が2023年、ダナンが2024年に加わっており、フーコックは4番目の対象地になる。ただし、島のどの店に星が付くのかが分かるのは2027年半ばだ。発表されたのはレストランを対象とするミシュランガイドの話で、ホテルを対象とするミシュランキーとは別の評価になる。ベトナムで食を目的に動く日本人旅行者にとって、フーコックが「食べに行く島」として扱われ始めるのは2027年からで、発表から選定までは8〜9か月ある。その間に何が起きるかを整理しておく。

10月1日の発表で決まったことと、まだ決まっていないこと
決まったのは、フーコックがミシュランガイドの対象地に加わることと、その結果が「ベトナム2027年版」として2027年半ばに公表されることだ。対象地はハノイ、ホーチミン市、ダナンに加えてフーコックの4か所になる。調査をいつ始めるかは発表文に書かれていない。発表には、Sun Groupがデスティネーション・パートナーとして拡大を支える立場で入っていることも記されている。
決まっていないのは、星が付く店の数、ビブグルマン(手頃な価格で質の高い料理を出す店への評価)の数、発表式典の日付と場所だ。いくつ選ばれるかを示す枠は存在しない。ハノイとホーチミン市が加わった2023年の初回以降、ベトナムの選定数は毎年増えてきたが、新しい対象地で初年度に星が出るかどうかは事前に読めない。ダナンが加わった2024年版では、同市から星付きの店が出ている。
ミシュランガイドの国際ディレクターであるグウェンダル・プーレンネック氏は、フーコックの食に海と結びついた固有の性格があるとし、魚醤(ヌクマム)と香り高い胡椒という土地の産物を挙げている。さらに、漁村の素朴な食文化と、国際的な料理人が持ち込んだ変化しつつあるレストラン群が同じ島に重なっている点を指摘した。
ホテルの「キー」とレストランの「星」を混同しない
混同されやすいので先に分けておく。ミシュランには、レストランを評価するミシュランガイド(星とビブグルマン)と、宿泊施設を評価するミシュランキーがある。今回の発表はレストラン側の調査対象地の拡大だ。
ホテル側については、ミシュランキー2026でベトナムから21軒が選ばれ、そのうち8軒が初選出だった件を別途扱っている。キーはレストランの星と連動しておらず、キーの付いたホテルの中にあるレストランが自動的に星の候補になるわけでもない。2027年にフーコックの選定が出たとき、「ミシュランの島」という言い方で両方が混ざった記事が出てくることが予想されるので、どちらの話なのかを見分ける癖をつけておくと、宿と食事の予約を取り違えずに済む。
ベトナムのミシュランは4回で何を選んできたか
2026年版はベトナムで4回目の選定にあたる。2026年6月4日にハノイで発表された内容は次のとおりだ。
| 区分 | 軒数 | うち新規 |
|---|---|---|
| 一つ星 | 11軒 | 2軒 |
| ビブグルマン | 72軒 | 11軒 |
| ミシュラン・セレクテッド | 110軒 | 9軒 |
| 掲載店の合計 | 193軒(上の3区分の合計) | - |
| グリーンスター(重複区分) | 3軒 | 1軒 |
グリーンスターは持続可能な取り組みを評価する別枠で、星やビブグルマン、セレクテッドと重なって付くため、193軒に足し込む数字ではない。一つ星11軒の内訳は、ハノイが Gia、Hibana by Koki、Tầm Vị、ONVIT の4軒、ホーチミン市が Ănăn Saigon、Long Triều、CoCo Dining、Akuna、CieL、Upstairs の6軒、ダナンが La Maison 1888 の1軒だ。新規の2軒はハノイのONVITとホーチミン市のUpstairsで、ONVITはベトナムで初めて星を獲得した韓国料理店になる。二つ星以上はまだ出ていない。
対象地の追加の順番はこうなる。2023年にハノイとホーチミン市、2024年にダナン、そして2027年版でフーコックが加わる。都市が3つから4つに増えるのは3年ぶりで、しかも初めて島が単独の対象地として選ばれた。ビブグルマンの層が厚くなってきた流れは、ハノイのマモムが開業2年で約100品の家庭料理で選出されたような事例に表れている。
フーコックで名前が挙がっている店は、どのジャンルか
タインニエン紙が候補として挙げた店を見ると、2つの層にはっきり分かれる。
高級店の側は、JWマリオット内のPink Pearl by Olivier E.(フランス料理に地中海の要素)、Seta(広東料理)、Mare(イタリア料理)、Corallo(シーフード)、COCO Beach House(ベトナム風の焼き海鮮)、Herring Bar(地元食材を使う)、The Home Pizza(ピザにベトナムの食材を合わせる)。リゾート内または近接の店が多く、価格帯も高い。
大衆店の側は、フーコック名物のまぜ麺ブンクアイを出す Bún quậy Kiến Xây と Thanh Hùng、魚のココナッツスープ麺を出す Bún kèn Út Lượm。こちらは島の人が日常的に食べている店だ。
ここに挙がっているのはタインニエン紙の予想で、ミシュラン側が公表した候補ではない。星は価格帯で決まるものではなく、食材の質、調理技術、味の個性、コストに対する価値、一貫性という基準で判断される。高い店が星に近いとは限らない。ただ、プーレンネック氏が漁村の食文化と国際的な料理人の両方に触れたことから、この2層のどちらも評価の対象に入ると読める。ハノイとホーチミン市ではビブグルマンの数が星の数を大きく上回る構成になっており、フーコックでも軒数の多くがビブグルマンとセレクテッドに入る形は想定できる。
なぜリゾート島が4番目に選ばれたのか
ミシュランが新しい土地を調査対象に加える判断には、だいたい共通した条件がある。国際線の直行便が入っていること、通年で営業する店の層があること、そして評価が旅行需要に跳ね返る規模があることだ。フーコックは3つを満たしている。島には国際空港があり、30日間のビザ免除が適用され、リゾート開発でレストランの数が増えてきた。
ただし、島の飲食店には本土と違う制約がある。食材の調達が船と空輸に依存するため、仕入れが天候で止まる。シェフの確保も難しく、人の入れ替わりが激しい。ミシュランの評価は訪問時点の状態を見るので、仕入れが安定しない店は星まで届きにくい。逆に、島で獲れる魚と島の胡椒・魚醤で組み立てている店は、この制約を強みに変えられる。プーレンネック氏が魚醤と胡椒を名指ししたのは、評価の軸がそこにあると示したものと読める。
観光インフラの側も動いている。フーコックLRTは2027年11月の開業が予定されている。評価が出る2027年半ばの時点では開業前だが、島内の移動が鉄道でつながれば、リゾート外の店へ行く客が増える。ビブグルマンの店は中心部や市場の周辺にあることが多いため、移動手段の整備は大衆店側の集客に効く。
日本からフーコックへ行く人の計画に、これはどう効くか
2027年半ばの発表を挟んで、島の飲食店の混み方は変わる可能性がある。星やビブグルマンに入った店に客が集まるのは他都市でも起きていることで、予約の取りやすさは今のほうが上だ。候補として名前が挙がっている段階の今なら、同じ店に並ばずに入れる。
島に3泊する場合、高級店は1〜2回に絞り、残りはブンクアイとブンケンの店に充てる組み方が成立する。候補に挙がっているBún quậy Kiến XâyやBún kèn Út Lượmのような店は席数が少ない。評価が出る前に行っておけば、同じ料理を落ち着いて食べられる。
高級店側は、JWマリオット内のPink Pearl by Olivier E.のようにホテル内の店が多い。宿泊客以外も入れるが、ディナーは予約が前提になる。評価が出た後に予約が取りにくくなる可能性を考えると、2027年以降に行く予定なら航空券と同時に押さえておくほうが安心できる。
日本からのアクセスは、現時点では直行便に頼れない。ハノイまたはホーチミン市で乗り継ぐ形が基本で、フーコック拠点の新興航空会社が初のA330を受領したものの、日本路線の日程はまだ出ていない。乗り継ぎ時間を含めると日本からは半日以上かかるため、2泊3日では食事の回数が足りない。食を目的にするなら3泊以上を見たい。
ビザについては、日本のパスポートで行く人は気にしなくていい。ミシュランの発表文はフーコックの30日間ビザ免除に触れているが、これは本来ビザが必要な国籍の人に効く制度だ。日本国籍者はベトナム全土で45日以内の滞在が査証免除になっている(決議44/NQ-CPにより2025年3月15日から2028年3月14日まで適用)。条件はパスポートの残存期間が6か月以上あることで、島だけを回る日程でも本土に泊まる日程でも扱いは同じになる。
島の飲食店と宿泊業に起きること
調査対象地に入ったという発表だけで、島の店は動き出す。ハノイとホーチミン市が2023年に加わったときも、発表から選定までの間に内装を直し、メニューを整理し、仕入れを固定した店が出た。ミシュランは予告なしで訪問するため、いつ来るか分からない1年半を通して状態を保つ必要がある。これは小さな店には負担が重い。
懸念もある。評価を狙って価格帯を上げる店が出ると、島の飲食の平均単価が上がる。フーコックはすでにベトナム国内では物価の高い観光地で、リゾート価格と地元価格の差が大きい。ビブグルマンは「手頃な価格」を条件にしているので、値上げは選定から外れる方向に働く。この矛盾をどう処理するかが、大衆店側の判断になる。
宿泊業の側では、ホテル内レストランの位置づけが変わる。ミシュランキーで評価された宿がフーコックにもあるため、キーと星の両方を持つ施設が2027年に出てくる可能性がある。そうなれば宿の販売単価を上げる材料になり、Sun Groupがデスティネーション・パートナーに入っている背景とも整合する。評価制度が観光開発の計画に組み込まれている構図だ。
フーコックへ行くための実用情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年10月1日(ミシュランガイドのフーコック拡大) |
| 結果の公表 | 2027年半ば(ベトナム2027年版として) |
| 対象地 | ハノイ・ホーチミン市(2023年〜)、ダナン(2024年〜)、フーコック(2027年版から) |
| 評価の種類 | 星・ビブグルマン・セレクテッド・グリーンスター(レストラン)。ホテルは別制度のミシュランキー |
| 島へのアクセス | フーコック国際空港。日本からは直行便なし。ハノイまたはホーチミン市で乗り継ぎ |
| ビザ | 日本国籍者はベトナム全土で45日以内が査証免除(パスポート残存6か月以上)。フーコックの30日間免除は本来ビザが必要な国籍向けの制度 |
| 島内の移動 | 現状はタクシー・Grab・レンタルバイク。LRTは2027年11月の開業予定 |
| 候補に挙がる高級店 | Pink Pearl by Olivier E.(JWマリオット内)、Seta、Mare、Corallo、COCO Beach House、Herring Bar、The Home Pizza |
| 候補に挙がる大衆店 | Bún quậy Kiến Xây、Thanh Hùng(ブンクアイ)、Bún kèn Út Lượm(ブンケン) |
| 島の名産 | 魚醤(ヌクマム)、フーコック胡椒、海産物 |
| 滞在日数の目安 | 食を目的にするなら3泊以上 |
候補として挙がっている店は報道に出た範囲のもので、ミシュラン側が公表した一覧ではない。2027年の選定でこの通りになるとは限らない。
まとめ
ミシュランガイドがフーコックを4番目の対象地にしたことで、島の飲食店は2027年半ばまで評価を待つ期間に入った。発表されたのはレストラン側の調査拡大であり、ホテルのミシュランキーとは別の話だ。
フーコックに行く予定がある人への提案は2つある。2027年半ばより前に行くなら、報道で候補に挙がっているブンクアイとブンケンの店を先に回る。席数が少ない店ほど、評価が出る前のほうが入りやすい。2027年以降に行くなら、選定発表の内容を見てから高級店の予約を取り、航空券と同時に押さえる。どちらの場合も、日本から直行便がない前提で3泊以上を確保し、島内移動はLRT開業前ならタクシーとGrabで組む。
参照元
- Thanh Niên「Michelin đến Phú Quốc: Những nhà hàng nào có cơ hội đạt sao đầu tiên?」
- PR Newswire「The Michelin Guide Expands to Phu Quoc, Vietnam」
- MICHELIN Guide「The Full MICHELIN Star Vietnam 2026 List Plus Inspectors’ Honest Thoughts」
- Saigon Giai Phong「Michelin Guide 2026 shines spotlight on Vietnam’s culinary scene」
- VietnamNet「Michelin Guide Vietnam 2026 adds 23 new dining destinations」


