ホイアンの夜を彩る絹のランタン。スーツケースに収まる「折りたたみ式」を初めて生み出したのが、90歳を超えた職人フイン・ヴァン・バー氏だ。オーストラリア人観光客の一言をきっかけに、傘や扇子の仕組みを応用して開発したこの技術は、いまも息子や弟子へと受け継がれている。
折りたたみランタンを初めて作った職人
フイン・ヴァン・バー氏は、ホイアンで折りたたみ式ランタンを初めて作った人物として公式に認められている。クアンナム省タンビン出身で、人生の大半をホイアンで過ごしてきた。もともとは大手の竹細工協同組合で織り手として働き、すだれや花瓶、かごなどを作っていた。ランタン作りを始めたのは1990年代、ホイアンに観光客が増え始めた頃で、当初は副業だったという。
観光客の一言から生まれた発明
折りたたみランタンが生まれたきっかけは、ランタンを買いたいのにスーツケースに入らず困っていたオーストラリア人観光客との出会いだった。バー氏は約半年をかけて試行錯誤し、傘や紙の扇子の仕組みを応用。竹ひごの両端に穴を開け、軸(ピボット)に留めることで折りたためる試作品を完成させた。旅先で買っても持ち帰りやすいこの構造は、ホイアン土産の定番を一変させた。
ランタン作りは、骨組みの製作と布貼りという2つの工程に分かれ、全体で10の主要なステップを踏む。竹と絹を使い、絹はハドン村から仕入れる。手間のかかる工程の一つひとつに、長年培った職人の勘が宿る。
折りたたみランタンの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発明者 | フイン・ヴァン・バー氏(ホイアン在住、90歳超) |
| 開発時期 | 1990年代に試作、約半年で完成 |
| 着想元 | 傘・紙の扇子の折りたたみ機構 |
| 素材 | 竹(骨組み)+絹(ハドン村産) |
| 工房 | ファンディンフン通りで家族が運営 |
受け継がれる技
- 技術は息子のフイン・ヴァン・チュン氏や多くの弟子へ継承されている
- 家族はファンディンフン通りで工房を構え、いまも製作を続けている
- 折りたたみ構造は、ホイアン土産として世界中の旅行者に持ち帰られている
日本の読者への影響
ホイアンのランタンは、ベトナム土産の定番だ。折りたたみ式なら、絹の風合いを保ったままスーツケースに収まり、壊れる心配も少ない。日本の住まいにも合わせやすく、玄関や寝室の間接照明として実用できる。一つの不便を解決した発明が、いまも旅の記念品として生き続けている点に物語がある。
ホイアンは古都としての評価も高い。世界で最も美しい51都市に選出された街並みのなかで、ランタン作りは観光の核を担う。手作り体験を楽しむなら、タンハー陶器村のろくろ+ランタン作りもあわせてチェックしたい。
伝統工芸への波及
職人の手仕事を「持ち帰れる土産」に変える発想は、ベトナムの伝統工芸全体に通じる。ハノイのシルク土産ガイドのように、素材や技をどう旅の記念品へ落とし込むかが、工芸の継承を支える。バー氏の折りたたみランタンは、その好例として語り継がれている。
まとめ
フイン・ヴァン・バー氏の折りたたみランタンは、観光客の一言から生まれ、ホイアン土産の常識を変えた。技術は次世代へと受け継がれ、いまも家族の工房で作られ続けている。ホイアンを訪れたら、半世紀の物語が込もった一灯を手に取りたい。
