タインホア省バンガムの禁漁区が4km超に広がり客は累計8500人を超えた

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タインホア省ソンディエン村のバンガムで、タイ族の住民がソン・ルオン(ルオン川)の一部を禁漁区にしてから約10年が過ぎた。VnExpressが2026年10月11日に伝えた記事によると、最初に線を引いたのは約3kmの区間で、いまは4kmを超えるところまで広げられている。魚を獲らない代わりに、村は高床式の家に客を泊めて現金を得る。タインホア市街から180km以上、ラオス国境のナーメオ国際ゲートへ向かう国道217号の奥にある集落なので、ハノイやダナンから軽く足を伸ばせる距離ではない。それでも、ベトナムで「村が自分たちで決めた取り決め」がそのまま観光商品になる仕組みを見るには、いま一番追いやすい場所になっている。

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最初に引いた線は約3km、いまは4kmを超えた

取り決め(quy ước)の中身は、VnExpressの記述を追うとおおむね次の形だ。禁漁区では日常の漁をしない。祭りやテト、大きな団体客を迎えるときなど、村として必要な場面に限って獲る。獲るときは投網(chài)や網(lưới)といった昔からの道具だけを使い、大きい魚だけ持ち帰って小さいものは川へ戻す。電気ショックや爆薬は一切認めない。

決めたのは村の役員と長老たちで、住民集会で合意した。違反した人は「共同体の取り決めに沿って処理する」とされ、過料の額は記事に出てこない。始めたころは禁漁区へ網を持ち込む人もいて、住民が声をかけて止めたという。バンガム党支部書記のルオン・バン・ズアン氏と、ソンディエン村人民委員会委員長のファム・バン・ティン氏が同紙に答えている。

川の長さは一つの数字ではない。記事のリード部分だけを読むと「4km」の一本に見えるが、本文には当初が約3kmだったことと、その後4km超に広げたことの両方が書かれている。広げたという事実のほうが、この取り決めの性格を正確に表している。続いたから伸びた、という順番だ。戻ってきた魚として記事が名前を挙げるのは、カーマイ(cá mài)、カードック(cá dốc)、カートロイ(cá trôi)、コイ(cá chép)、カーラン(cá lăng)の5種。

電気ショック漁は2017年の水産法で全国禁止、村の取り決めが先に効いた

ベトナムでは2017年水産法の第7条7項が、毒物・爆発物・電流を使った漁と「破壊的・絶滅的な」漁具の使用を全国で禁じている。行政罰は2024年5月20日施行の政令38/2024/ND-CP第28条にまとまっていて、漁船を使ったかどうかと船の長さで額が変わる。実際の処分では、ビンディン省で全長6m未満の漁船を使って電気漁をした個人に750万ドン(約4.6万円。本記事は1万ドン=約61円、1円=約163ドンで換算する。2026年10月13日時点の相場)の過料が出ている。

つまり禁止そのものは10年近く前からある。ソン・ルオンの魚が減ったのは条文が無かったからではなく、ラオス国境に近い山あいの川で誰が見ているのかという問題だった。バンガムの取り決めに金額の決まった罰則が無いのに機能しているのは、別の損失と結びついているからだ。禁漁区の魚が減れば、川下りや投網の体験も、焼き魚を出す食卓も薄くなる。見張るのは役人ではなく、同じ集落に住む人の目になる。

順番も見ておきたい。旧クアンソン県がバンガムでコミュニティ観光を推し始めたのは2018年、省が観光地として認定したのは2019年だ。取り決めが約10年続いているなら、禁漁が始まったのは観光より前になる。呼び物が必要になってから保護規則を作る地域が多いなかで、ここは保護が先に立っている。似た順序は、住民が自分たちの持ち物を先に守って後から客を呼んだ例に共通していて、旧ハザン省ドンヴァンで役場のトップがスマホ動画から客を集めた話も、外から企画が降りてこない場所で起きている。

2019年に省の観光地認定、2025年9月末までに8,500人を超えた

タインホア省人民委員会委員長がバンガムを省レベルの観光地に認定したのは2019年。文化紙バオ・バンホア(2025年10月20日)によれば、2025年9月末までの累計来訪者は8,500人を超えた。VnExpressが「年間数千人」と書いているのと桁は合う。

世帯数は資料で食い違う。VnExpressは「タイ族ほぼ120世帯」で、うち12世帯が常時観光業に携わると書く。一方バオ・バンホアは2025年10月の記事で75世帯、観光業に登録したのが23世帯、宿泊客を受け入れられるのが11世帯としている。タイ族が8割超で、ムオン族も住むとも書いている。2025年に県の層がなくなり集落の統合も進んでいるため、バンガムという枠そのものが動いた可能性がある。断定は避けるが、確かなのは泊まれる家が10軒台で、全世帯の1割前後にとどまるという規模感だ。

その10軒台が背負っているものは軽くない。住民の一人は高床式の家を直すために5億ドン(約306万円)を借り、いまは1日25〜30人を受け入れているとバオ・バンホアに話している。同紙はこの家を集落で最大級の宿のひとつとしている。2016年より前は村の半数超が貧困世帯だったという記述と並べると、一軒あたりの賭けの大きさが見える。

客ができることは、竹の筏(bè luồng)でソン・ルオンを下る、投網を投げる、川で遊ぶ、タイ族の食事を食べる、踊りや笛を見る、といった組み合わせになる。料理として挙がるのは焼き魚、魚のすり身揚げ(chả cá)、バナナの花と魚のなます(nộm hoa chuối)。川岸には見せるための竹の水車も立っている。ただし体験としての漁は、祭りやテト、大きな団体が入るときに村がまとめて行う形なので、個人でふらりと訪ねて投網を投げられるとは限らない。日程を決める前に受け入れ先へ確かめたい部分だ。

カムルオンの神の魚は入場料を取る、バンガムは宿と食事で回収する

タインホア省には、魚を獲らないことで有名になった場所がもう一つある。旧カムトゥイ県カムルオン村のゴック集落(bản Ngọc)にある「スオイ・カー・タン(神の魚の泉)」で、タインホア市街から北西へ約90km。別名はスオイ・カー・ルオンゴック。山裾の泉に魚が群れ、住民が代々獲らずにきた。こちらは入場料を取る観光地として運営されている(旅行情報サイトでは大人2万ドン=約120円前後の案内が多いが、2023年ごろの情報が混ざっているので料金は現地で確認したい)。

バンガム(ソンディエン) スオイ・カー・タン(カムルオン)
守る根拠 住民集会で決めた取り決め・約10年 代々の禁忌と伝承
守る範囲 ソン・ルオンの4km超の区間 山裾の泉とその魚
お金の入り口 高床式の家への宿泊・食事・筏 入場料と売店
タインホア市街から 180km超 約90km

二つの差は回収の仕組みにある。入場料型は単価が小さく、客は日帰りで通り過ぎる。宿泊型は単価が大きいが、受け入れられる家の数が天井になる。泊まれる家は11軒で、最大級の1軒が1日25〜30人。全戸がそこまで受けられるわけではないので、満室でも1日の宿泊客は300人には届かない。そこを超えて人が来はじめると、増えるのは食事と筏だけの日帰り客で、川に入る人数が先に膨らむ。禁漁で守ってきた4kmが、観光の成功そのものに削られる順序だ。

取り決めが「大きな団体客を迎えるときは獲ってよい」としている点も、裏返して読める。団体の頻度が上がれば漁の頻度も上がる。3kmから4km超へ広げた幅は、増えた分の漁を吸収するための余裕と見ることもできる。保護の線を伸ばしながら客を増やすのは、カッティエン国立公園で客が罠を外して回る4日間のツアーのように、客の行動そのものを保護の側に組み込む設計と近い発想になる。バンガムの場合、客が払う宿泊代が禁漁の原資という構造になっている。

タインホア市街から180km超、国道217号は雨季に土砂で止まる

行き方は、タインホア市街から国道217号を西へ入る一本道が基本になる。この道はラオス国境のナーメオ国際ゲートまで続く幹線で、ゲートは国道217号のKm195+400にあたる。ソンディエンはクアンソンとナーメオの間にある。改良事業はKm104+475(国道15号との交点、バートゥオック側)からKm195+400(ナーメオ)までの94.7kmを対象にし、事業費は1兆8,990億ドン(約116億円)。2016年1月に第1期が開通し、Km107+200からナーメオまでの約88.2kmが幅7.5mの山地4級道路に改良された。

問題は雨季だ。2025年9月29日にはトゥンハ一帯のkm22付近で100mほどが土砂に埋まり、クアンソンを通る区間に崩落と冠水の箇所が複数出た。峠道が続く区間で、迂回路の選択肢は限られる。帰りの飛行機が決まっている旅程にこの奥地を組み込むのは避けたほうがいい。行くなら乾季で、出発前日に道路状況を確認する。自分で車を出すなら、燃料代の見通しも先に立てておきたい。ガソリンE10の値上がりはレンタカーとGrabで効き方が違うので、180km超を往復する行程では差が出る。

住所の伝え方にも注意がいる。2025年の行政改革で県(huyện)の層が無くなり、VnExpress自身も「旧クアンソン県」と書いている。宿への問い合わせや配車アプリの住所欄では、県名を出すより「タインホア省ソンディエン村(xã Sơn Điện)バンガム(bản Ngàm)」まで書いたほうが通る。ナーメオ国際ゲートからラオス側へ抜ける旅程を組む人は、ゲート手前の宿泊地としてこの村を挟む選択肢もある。

2016年より前のバンガムは、半数超が貧困世帯だった。いま4km超で魚を獲らずにいられるのは、獲らないほうが入ってくる金が多いという計算が10年合い続けたからだ。バオ・バンホアはコロナ禍で観光が沈んだ時期があったあと、いまは客足が戻っていると書く。次に試されるのは客が減った年ではなく、客が増えすぎた年に4kmの線を動かさずにいられるかどうかになる。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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