標準80分の鉄筋課題を46分45秒で終えたベトナム人が外国人初優勝

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静岡県富士宮市で10月3日に開かれた鉄筋工の全国大会で、大阪の鉄筋工事会社・田村工業に勤めるベトナム出身のルオン・ドゥック・クイさん(33)が優勝した。全国鉄筋工事業協会(ZENTEKKIN)が主催する「TETSU-1 GRAND PRIX」の第6回で、外国籍の技能者が1位になったのは初めてだ。課題のタイムは46分45秒。標準時間として設定された80分を33分以上縮め、34人の決勝進出者のうち最も速かった。ベトナム国営通信系のVietnamPlusが10月9日、VnExpressが10月10日に伝え、どちらも「ベトナム人技能者が初めて1位になった」という点を見出しに置いている。日本で働くベトナム人が60万人を超えたいま、この1位が何を証明したのかは、来年4月に始まる新しい在留制度と並べて見ると分かりやすい。

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標準80分の課題を46分45秒、34人の決勝で最も速かった

競技は、図面どおりに基礎・柱・梁の鉄筋を組み立てて結束する内容だ。採点は精度、仕上がり、速さの三つで、標準時間は80分、100分を超えると失格になる。柱や梁の向きを取り違えたり、指定と違う材料を使ったりした場合も失格の対象だ。鉄筋の間隔や位置、定着長さ、結束の手順といった、工事が終わればコンクリートに隠れて誰にも見えなくなる部分が、そのまま点数になる。

決勝に進んだ34人は各地区の予選を勝ち上がった技能者で、クイさんの46分45秒は標準時間の6割弱にあたる。速さだけを競う大会ではなく、失格基準がここまで細かく置かれている以上、精度を落とさずに縮めたことが順位になったとみてよい。優勝には国土交通大臣賞が併せて贈られている。主催者側は、機械化が進んでも現場で鉄筋を組む人の技能が構造物の品質と安全を決めるという立場を示しており、国籍の違う技能者が同じ課題で競うこと自体を業界の必要事項として説明している。

2015年に来日したクイさんは、6月の地区予選を抜けた代表3人の1人だった

クイさんが日本に来たのは2015年で、鉄筋の仕事はおよそ11年になる。VietnamPlusによれば、勤務先の推薦を受けて6月の地区予選に出場し、その地区から選ばれた代表3人の1人として決勝に進んだ。VnExpressは、大会前の2週間を練習に充てたと伝えている。現場では自分の手で組むだけでなく、施工の指示を出す側にも回っていた。初出場で「優勝を目標にした」と本人は話している。

この11年という長さが、今回の見出しの実質だ。来日から1年や3年で帰る前提の滞在では、地区予選に出る対象にもなりにくい。鉄筋は、図面の読み方、結束のくせ、現場ごとの段取りを、数年単位で手に入れていく仕事だからだ。外国籍の1位が第6回まで出なかったのは、腕の差というより、同じ会社に10年残れる人がそれほど多くなかったという受け入れ側の事情を映している。

日本で働くベトナム人は60万5,906人、国籍別で23.6%を占める

厚生労働省の集計では、2025年10月末時点で日本で働く外国人は257万1,037人、前年から11.7%増えて13年続けて過去最多を更新した。国籍別の上位は次のとおりで、ベトナムが4分の1近くを占める。

国籍 人数 構成比
ベトナム 605,906人 23.6%
中国 431,949人 16.8%
フィリピン 260,869人 10.1%
ネパール 235,874人 9.2%
インドネシア 228,118人 8.9%

産業別では製造業が63万5,075人(24.7%)で最も多い。外国人を雇う事業所は37万1,215か所あり、その63.1%は従業員30人未満の規模だ。統計が数えているのは、ある時点で働いている人の数であって、何年続けたかではない。60万人のうち11年目の人が何人いるのかは、この表からは出てこない。クイさんの優勝が「初」になったのは、在籍数ではなく滞在の長さを測る指標が、日本側の統計にほとんど用意されていないことの裏返しでもある。

2027年4月1日に技能実習が終わり、転籍には技能検定と日本語試験が条件になる

入口の制度は来年度に切り替わる。政府は2025年9月の閣議で、技能実習に代わる「育成就労」の施行日を2027年4月1日と決め、同じ日に1993年に始まった技能実習制度は廃止される。在留資格は技能実習1号から3号までの区分に代わって「育成就労」の一本になり、期間は原則3年。2026年1月に示された分野別の受け入れ見込数では、2029年3月末までの2年間で約43万人、熟練度の高い特定技能1号と合わせて123万人規模が上限になる。対象は農業や建設など17分野で、航空分野の追加も検討されている。

育成就労でいちばん効くのは、同じ業務区分の中なら転籍ができるようになる点だ。ただし条件があり、同じ受け入れ機関で分野ごとに定められた1〜2年を働いたうえで、技能検定基礎級などの合格と、A1〜A2相当の日本語試験の合格が求められる。会社をまたいで移る前提が入ると、本人が持ち運べる証明の値段が上がる。社内で「あの人は速い」と言われていても転籍先には伝わらないが、全国大会の順位と大臣賞は、会社の外でも読める記録として残る。

試験で技能を測ることの重さは、ベトナム側の読者にも説明がいらない。ベトナム国内では運転免許試験で9か月のうちに153万件が不合格になっているほど、合否の線が動かない。日本の競技会で34人の頂点に立ったという話は、その文脈でそのまま通じる。

1円=約163ドンの前提で、稼ぎを動かす経路を確かめておく

ここからは円とドンの話だ。為替は2026年10月12日時点で1円=約163ドン、裏返すと1万ドン=約61円で換算している。日本の現場で積み上げた賃金をベトナムに移すとき、まず効くのがこのレートで、次に効くのが経路の手数料だ。ベトナム国内の支払いはQRコードへ急速に寄っているが、越境QRが使える店は6%にとどまり、日本の決済アプリはまだ接続されていない。日本側から送る人は銀行と送金事業者を比べることになり、ベトナムを旅行する人も、QRが前提の店と現金やカードで足りる店を分けて考えておくほうが動きやすい。

日本側の受け皿も厚みを増している。バインミー祭が東京・新宿で初めて開かれたように、食と祭りの側から先に場所ができ、働く人の技能の話が後から見える形になってきた。鉄筋のように出来上がりが見えない仕事は、その順番だと最後まで表に出にくい。46分45秒という数字が効くのは、隠れる仕事に外から読める物差しを当てた点にある。

2015年に来日した1人が、標準80分の課題を33分縮めるまでに11年かかった。働くベトナム人が60万5,906人になり、来年4月から転籍と試験を前提にした制度へ移る。次に外国籍の技能者が1位になるのは、育成就労の下で日本に入った人かもしれない。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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