ベトナム中部フーイエン省(Phú Yên)の名物「マグロの目玉煮(mắt cá ngừ đại dương)」を外国人TikTokerが実食した動画が、140万回以上再生された。投稿したのは越在住のTikToker「Joe」(Vietjoe TV/フォロワー約12.9万人)。丼ほどもある目玉が皿にどんと載る見た目のインパクトと、口の中でとろける意外な旨さのギャップが受けた形だ。旅行者にとってこれは単なるゲテモノ動画ではない。ダナンやニャチャンほど知られないフーイエンを訪ねる動機になり、しかも一皿200〜300円で試せる。どの店が当たりかを見抜くコツは、地元客が集まる店を見分けるベトナムの黄金律がそのまま効く。
何が140万回も再生されたのか
動画でJoeが挑んだのは3品。主役のマグロの目玉煮に加え、地鶏とハーブの鍋「lẩu gà lá é」、クラゲの和え物「nộm sứa」を続けて口に運んでいる。とりわけ目玉煮は、皿に据えられた瞬間の絵力が強い。まん丸の眼球が湯気を立てている画は、初見の外国人が思わず息をのむ。
ところが一口食べると評価が反転する。Joeは脂の乗ったゼラチン質を「やわらかく、口の中でほぼ溶ける」と表現し、生姜や漢方の香りが臭みを消していると伝えた。この「見た目で身構え、味で裏切られる」流れが、コメント欄で共感を集めた。TikTokの累計いいねが250万を超えるアカウントが発信したことも、拡散を後押ししている。
「海のヘッドライト」と呼ばれる目玉が名物になるまで
フーイエンはベトナム有数のマグロ水揚げ地で、地元では「マグロの首都」とも呼ばれる。年間数千トン規模の水揚げがあり、身は刺身や輸出に回るが、頭に残る大きな目玉は長らく地元の家庭料理の素材だった。眼球ひとつの重さは100〜300グラム、大きいものは茶碗ほどもあり、地元の人はその見た目から「đèn pha(海のヘッドライト)」と呼ぶ。
これが観光の名物へと格上げされたのは、調理法の洗練による。生の目玉は下ゆでして臭みを抜き、土鍋でなつめ・クコの実・生姜といった漢方食材と一緒に20〜30分ほど煮込む。仕上げに胡椒や刻んだエシャロットを散らし、熱々を土鍋のまま供する。ベトナム記録協会は2014年、これを国内の代表的な珍味10選のひとつに選んでいる。中部の食べ歩きを楽しみたいなら、1日1,200円で回れるフエの麺と米粉菓子の食べ歩きと組み合わせると、中部の味の幅が一気に広がる。
数字で見るマグロの目玉煮
珍味の輪郭を、確認できた数値で押さえておく。為替は1万VND=約60円で換算した。
| Item | Details |
|---|---|
| Dish | マグロの目玉煮(mắt cá ngừ đại dương)/通称 đèn pha |
| 目玉1個の重さ | 約100〜300グラム(茶碗大) |
| 調理法 | 塩湯で下ゆで→土鍋でなつめ・クコ・生姜と20〜30分煮込み |
| 一皿の相場 | 約40,000〜50,000VND(およそ240〜300円) |
| Awards | ベトナム記録協会 国内珍味10選(2014年) |
| Video views | 140万回以上(TikToker「Joe」の実食動画) |
How locals received it
地元と旅行者では、この一皿の受け止め方に温度差がある。
- 地元の食堂では、目玉煮は「頭を使う仕事の人に効く」滋養食として扱われ、締めや酒の肴として日常的に注文される。
- 初めて挑む外国人観光客の多くは、丼大の眼球という見た目に一度ひるみ、口に運んでから評価を改める。Joeの動画のコメントもこの反応で埋まった。
- トゥイホア市内には目玉煮を看板にする店が複数あり、地元客と観光客が同じ卓に並ぶ。専門店化が進んだこと自体が、需要の裏づけになっている。
珍味が旅先を決める時代に、旅行者が使える視点
この小さなバズは、旅行者にとって3つの実用的な意味を持つ。
First,珍味が旅先そのものを選ぶ動機になるという点だ。フーイエンは映画『ザ・イエロー・フラワー・オン・ザ・グリーングラス』の舞台として国内では知られるが、日本人の旅程には乗りにくい土地だった。「ここでしか食べられない一皿」があると、通過するだけの県が滞在先に変わる。目玉煮はその引力を体現する料理だ。
Second,SNSの視覚インパクトと実際の味は分けて考えるべきだという教訓だ。目玉煮は動画映えの筆頭だが、怖いのは最初の一瞬だけで、実態は漢方で煮含めた濃厚な珍味にすぎない。同じ構図はライスペーパーや発酵系の屋台料理にも当てはまる。見た目の強さだけで敬遠すると、旅の食の楽しみを自分から狭めてしまう。
第三に、一皿200〜300円という価格のハードルの低さだ。失敗しても財布はほとんど痛まない。相場が読めていれば、観光客向けに上乗せされた値段もすぐ見抜ける。挑戦のコストがこれだけ低い名物は、旅の予定に組み込みやすい。
実際に食べに行くための基本情報
目玉煮の名店はトゥイホア市内に集中している。住所と相場を一覧にした。
| Item | Details |
|---|---|
| 提供エリア | フーイエン省トゥイホア市(Tuy Hòa)中心部 |
| 代表的な店 | Quán Bà Tám(レズアン通り289〜293C・8:00〜20:00)/Nhà hàng Đại Dương(フンヴォン大通りLô A12)/Quán hải sản Chúc Xíu(ドックラップ通り05) |
| Budget guide | 目玉煮 約40,000〜50,000VND(約240〜300円) |
| 玄関口 | トゥイホア空港(TBB)。市中心部まで約10km・タクシー120,000〜170,000VND(約720〜1,020円)・約20分 |
| Direct flight | ホーチミン(SGN)・ハノイ(HAN)・ダナンから国内線(ベトジェット/ベトナム航空/バンブー等)。国際線の乗り入れはなし |
フーイエンは単独でも成立するが、南隣のニャチャン(カインホア省)と結ぶと海の旅程が厚くなる。湾の楽しみ方はカインホア3湾の水上飛行機構想を読む記事が参考になる。
まとめ——次にすべき3つのこと
丼大の目玉が皿に載る一皿は、見た目のインパクトで140万回を稼いだが、旅行者にとっての価値は味と手頃さの側にある。フーイエンを旅程に入れるなら、動く順番はこうだ。第一に、トゥイホア行きの国内線を押さえる。ホーチミンかハノイからの乗り継ぎが基本になる。第二に、目玉煮の店を市内で1軒決め、相場40,000〜50,000VNDを頭に入れて注文する。第三に、地鶏ハーブ鍋やクラゲの和え物など、Joeの動画に出た周辺の名物もあわせて頼み、フーイエンの海の食卓を一度で味わい尽くす。怖いのは最初の一瞬だけだと、食べればすぐに分かる。
