ベトナム北部トゥエンクアン省のホンタイ(Hồng Thái)で、2026年8月7〜9日に「ホンタイ秋祭り(Hồng Thái Autumn Festival)」が開かれた。標高およそ1,000mの高原に広がる梨畑を舞台に、来場者が枝から実をもぐ梨狩り競争や、少数民族の民謡、民族衣装のお披露目が三日間続いた。梨の収穫は祭り二日目の8月8日に本格化し、そこから8月いっぱいが旬の入り口になる。花見で知られる同じ山が、実りの季節にも人を呼び込む二毛作型のイベント設計だ。
標高1,000mの畑で「梨狩り競争」、三日間の秋祭り
祭りの中心は、観光客自身が畑に入って梨を収穫する競争企画だった。摘み取った梨をその場で味わえるため、産地の空気ごと体験する仕掛けになっている。あわせて、ザオ族の伝統歌「テン(then)」と「パオズン(páo dung)」の歌合戦、伝統舞踊、民族衣装の披露、音楽・芸能の公演が組まれた。
会場では地元の食も並んだ。五色おこわ、かまどで燻した肉、伝統菓子といった山の家庭料理が、収穫の風景と一緒に供された。梨という単一の農産品を核に、歌・衣装・食を束ねて「山ごと見せる」構成になっている点が、この祭りの持ち味だ。
7集落164世帯が育てる「ホンタイ梨」
ホンタイ梨は、ここ数年でトゥエンクアン省を代表する農産品に育ってきた。8月に収穫の盛りを迎え、しゃきっとした歯ざわりと強い甘みが土産物・観光の目玉になっている。品種名は公表されていないが、地元では「ホンタイ梨」の名で通る高原栽培の甘梨だ。
栽培を支えるのは、7つの集落にまたがる164世帯と、90ヘクタール超の梨畑(トゥエンクアン省ホンタイの数値。報道により100ヘクタール前後まで幅がある)。担い手はザオ・ティエン系を中心とする少数民族で、タイ族やモン族も暮らす。花の名所が実の名産地でもあるという二重の顔が、通年で観光を組み立てる下地になっている。
梨は摘み取ってすぐ味わうほど鮮度の差が出やすい果物で、産地を訪ねる意味が大きい。日本の梨狩り観光と発想は近いが、ホンタイの場合は少数民族の集落と暮らしがそのまま観光資源になっている点が異なる。畑の持ち主である家族から直接買い、収穫の様子を見ながら食べる体験は、市場やスーパーの棚では再現できない。
梨は8月いっぱい、花は2〜3月——ハノイから車で約6時間
ホンタイはかつてのナハン県エリアにあたり、ハノイからは車でおよそ6時間(およそ240km)。山あいの曲がりくねった道が続くため、時間には余裕を見ておきたい。公共交通で直接向かうのは難しく、ハノイやトゥエンクアン市街から車をチャーターするか、ナハン方面のツアーに組み込む形が現実的だ。日本人旅行者が押さえるべきは「二つの季節」だ。実を狙うなら8月、白い花の絨毯を狙うなら2〜3月に照準を合わせる。標高が高いぶん朝晩は冷え込むので、夏でも羽織るものを一枚持っておくと安心だ。
花のシーズンには「ホアレ(梨の花)祭り」が2026年は2月2日〜3月10日に開催され、ベトナム最長級の梨花ルートとして売り出されている。8月の秋祭り自体は7〜9日で幕を閉じたが、梨の収穫は月内が旬。日程が合わなければ、翌年2月の花見を次の目標に据えるのが現実的だ。
| Item | Details |
|---|---|
| Location | トゥエンクアン省ホンタイ(旧ナハン県エリア) |
| Elevation | 約1,000m(省内でも高地の集落) |
| 秋祭り | 2026年8月7〜9日(収穫本格化は8日) |
| 花見の祭り | 2026年2月2日〜3月10日 |
| 梨の旬 | August |
| Access | ハノイから車で約6時間(約240km) |
日本人旅行者はホンタイをどう組み込むか
ホンタイ単体を目的地にするより、北部の山岳ルートに一泊足す発想が合う。棚田と少数民族の村を歩くなら、より観光インフラが整った標高1,600mのサパ(北部高原・少数民族と棚田の絶景ガイド)と比べて、ホンタイは素朴さと収穫体験に振り切っているのが違いだ。人混みを避けて「農作業ごと味わう」旅を求める層に向く。
高地の少数民族が育てる農産品という点では、同じく標高1,000m級で栽培されるベトナムコーヒー(種類と楽しみ方の徹底ガイド)と地続きの文脈にある。梨とコーヒー、山の恵みをテーマに北部を巡ると土産選びの軸もはっきりする。ハロン湾とセットで北部を回る計画なら、玄関口としてハイフォン(ハロン湾と組み合わせる港町の旅)を起点に据える手もある。
白い花と甘い実、二つの季節で山を訪ねる
ホンタイの梨は、2〜3月に山を白く染める花と、8月にもぐ甘い実という二つの表情で旅人を待つ。今年の秋祭りは3日間で終わったが、旬の梨は月内なら畑に残る。花を見逃しても実がある、実を逃しても花が咲く——この往復こそが、標高1,000mの小さな集落が観光地として立ち続ける理由になっている。
