サイゴン初、13皿170ドルの「おまかせフォー」を読み解く

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屋台の丼で60円台から食べられるフォーが、サイゴンでは1晩170ドル(約2万5,500円)の「おまかせ」に姿を変えた。ミシュラン一つ星ANAN Saigonを率いるピーター・クオン・フランクリン氏が、ホーチミン市1区のカウンター「Pot Au Pho」で、13皿・14席限定のフォーおまかせディナーを2026年8月に提供した。VnExpressが8月8日に報じたこの試みは、旅行者にとって「安いベトナム飯」の常識をひっくり返す一皿になっている。日本から食べに行く前提で、値段の内訳・料理・場所を実用目線で整理する。

目次

ミシュラン星付きシェフが14席のカウンターで出す「フォーおまかせ」

会場のPot Au Phoは、ホーチミン市1区トンタットダム通りにあるフランクリン氏の店。寿司屋のカウンターのように厨房を囲む14席だけの小箱で、夜のみ・予約制で営業している。今回のディナーは、氏に加えて日本人シェフのShozo氏(ホーチミンのレストランFUMEに在籍、ベトナム在住9年)が共同で厨房に立つ企画で、13皿のコースとして構成された。

フランクリン氏はダラット生まれのベトナム系アメリカ人。モルガン・スタンレーで投資銀行家として働いたのち、ル・コルドン・ブルーで料理を学び、バンコクのnahmやシカゴのAlineaなどで研鑽を積んだ経歴を持つ。2017年に開いたANAN Saigonは2021年にアジアのベストレストラン50入り、2023年にはベトナム版ミシュランガイドの初回でホーチミン市初の一つ星を獲得している。その人物が、国民食フォーを解体して一皿ずつ組み立て直すのが、この「おまかせフォー」の骨格だ。

コース110ドル+ペアリングで総額170ドル──ドンと円で見る内訳

報道された価格は、コース料理がVND290万(約110ドル)、これにドリンクペアリングがVND160万上乗せされ、総額でおよそ170ドルになる。屋台のフォー1杯(1万〜1万5,000ドン=約60〜90円)と比べると、料理だけで100倍を超える計算だ。

項目 現地価格(ドン) 円換算(概算) 参考(ドル)
コース料理(13皿) VND290万 約1万7,400円 約110ドル
ドリンクペアリング VND160万(追加) 約9,600円
総額(ペアリング込み) 約VND450万 約2万7,000円 約170ドル

換算レートは1万ドン≒60円、1USD≒150円。ドル基準だと総額170ドルは約2万5,500円、ドン基準だと約2万7,000円で、この差はレートのブレの範囲に収まる。来店客のNhan Hien Nhiさんは報道の中で、「これだけ独創的な料理を試せるおまかせなら、VND500万近くという価格は高くない」と語ったという(VnExpress)。ペアリング込みで約VND450万=「500万近く」という感覚は、この一言と符合する。

うにの牛タルタルから熟成鴨のフォーまで、13皿が解体するもの

コースはフォーの構成要素(スープ・麺・肉)を分解し、別の料理に組み替えていく流れになっている。報じられた皿には次のようなものがある。

  • うにをのせた牛肉のタルタル
  • ドライエイジング(熟成)させた鴨を使った鴨のフォー
  • トリュフを効かせたフォーのスフレ
  • ハロン湾産のピーナッツワーム(環虫の一種)を合わせたうなぎのラーメン

ベトナム食材の使い方が独特で、熟成肉やトリュフといった西洋のファインダイニングの語彙を、フォーという土台に持ち込んでいるのがわかる。フランクリン氏がふだんPot Au Phoで出す通常メニューは12皿・VND350万(約134ドル)とされ、今回の13皿・共同企画版はそこに日本人シェフの視点を重ねた特別編という位置づけになる。

屋台メシの街サイゴンで「高級フォー」が成り立つ背景

170ドルのフォーが突飛に見えて、実はサイゴンの外食シーンの流れに沿っている。ホーチミン市はミシュランガイドで最多のセレクテッド掲載を集める都市になり、Cuisine Mới(新しいベトナム料理)と呼ばれる、現代的な技法とベトナムの食材・味覚を掛け合わせる潮流が育っている。星付きのフルコースがVND300万〜400万台で、世界の同格店より割安に体験できる価格帯にあることも、こうした挑戦を後押ししている。

プレミアム化は一店だけの話ではない。元Esta料理長が独立して開いた1区のカウンター「Vore」の12コースのように、少席・おまかせ形式でベトナム食材を掘るスタイルの店が続けて生まれている。ロバート・デ・ニーロが共同創業したNobuが2026年に1区の高層タワーへ進出する動きも重なり、サイゴンは「安くてうまい」だけの街から、高価格帯でも勝負できる食都市へと幅を広げている。フォーのおまかせは、その最前線に国民食を持ち込んだ試みだ。

日本から食べに行くなら──場所・時間・費用感の実用メモ

Pot Au Phoは1区トンタットダム通り91番地。ベンタイン市場やドンコイ通りといった観光の中心から徒歩圏で、旅行の夜に組み込みやすい立地にある。14席・夜のみ・予約制のカウンターなので、行くと決めたら早めに席を押さえるのが前提になる。今回のような共同企画は開催期間が限られるため、訪問前に店の最新案内で内容と提供時期を確認しておきたい。

費用は、ペアリングまで頼めば1人約2万5,500〜2万7,000円。日本で同格のおまかせ(寿司・フレンチのコース)を思えば近い水準で、そこに「フォーの解体」という現地でしか味わえない切り口が乗る。予算を抑えたい旅行なら、こうした特別な一晩は1回に絞り、ふだんの食事は屋台や食堂で回すのが現実的だ。街の価格帯全体はホーチミンの食事ガイドで、150円台の屋台から1万円級の店まで整理している。1杯60円のフォーと2万5,000円のフォーが同じ街に共存する落差こそ、いまのサイゴンの食の面白さになっている。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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