ハノイの路線バスが電気に、17路線281台が変える在住者の足

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ハノイで毎朝バスに乗る人なら、車内の音が少しずつ変わってきたことに気づいているかもしれない。ディーゼルの重い振動とエンジン音が消え、静かに滑り出す電気バスが、市内の幹線を次々に置き換えている。ハノイ交通総公社(Transerco)は2026年7月9日、上半期の実績として17路線・281台をEVバスに転換したと公表した。年内には保有車両の51%超をグリーン車両にする計画で、通勤・通学の足として使う在住者にとって、乗り心地も路線の顔ぶれも動き始めている。

目次

17路線281台、半年で165台を投入した上半期

Transercoの発表によると、2026年6月末時点で同社が運行するEVバスは17路線・281台に達した。このうち165台は2026年に入ってからの半年で投入された分で、転換のペースが明らかに加速している。Transercoはハノイのバス網を支える最大手の公営事業者で、市内路線の中核を担う。その中核事業者が半年で165台を電動化したことは、実験段階を抜けて日常運行に組み込むフェーズへ入ったことを示している。

数字は車両だけではない。上半期の輸送実績では乗客数が前年同期比で3.3%増え、サービス品質に関する違反は約40%、乗客からの苦情は38%それぞれ減った。同時期に公共交通網全体で電子チケット(キャッシュレス決済)の導入も進み、乗車時間の短縮と、1つのアカウントやカードで複数の交通機関を乗り継げる仕組みが整いつつある。車両の刷新と決済の刷新が同時に走っている点が、今回の転換の特徴といえる。

「2025〜2026年は下地づくり」という段階設計

ハノイ市はバス車両をグリーンエネルギーへ切り替えるロードマップを段階に分けて描いている。2025〜2026年は支援制度や政策を固め、EVバス網を広げながら急速充電を含む充電インフラを整備する「下地づくり」の期間。続く2027〜2030年に、化石燃料バスの本格的な置き換えを一気に進める設計だ。今回Transercoが半年で165台を投入できた背景には、この最初のフェーズで充電拠点と運用ノウハウが積み上がってきた事情がある。

市全体で見ると、最終的なバス網は電動化の進め方によって総数2,000〜2,400台規模に落ち着く想定で、当初は電気とLNG/CNGを併用しつつ、条件が整うほどEV比率を高めていく道筋が引かれている。Transercoの「年内51%超」は、その長い道のりのなかで最初の折り返し点に手をかける水準にあたる。

上半期に動いた数字

指標 2026年上半期の実績
EVバス(累計) 17路線・281台
うち上半期に投入 165台
乗客数 前年同期比 +3.3%
サービス品質違反 約40%減
乗客の苦情 38%減
年内のグリーン車両比率(目標) 51%超

在住者の毎日は、何が変わるのか

電動化がまず効いてくるのは、乗車体験そのものだ。停車と発進を繰り返す市内路線では、エンジンの騒音と振動、そして排気の熱が乗客の負担になりやすい。EVバスはこの3つをまとめて軽くする。40度近い日が続くハノイの夏や、渋滞で信号待ちが長引く時間帯ほど、静かで振動の少ない車内の快適さは体感差として大きい。日々同じ路線を使う在住者にとっては、路線の刷新は「新型車両が来た」という以上の意味を持つ。

もう一つの変化は、バスという移動手段そのものの使いやすさだ。ハノイでは無料バスのICカード申請や中心部路線の無料化が進んでおり、今回の電子チケット導入と重なることで、「乗る前に小銭を用意する」手間が消えていく。車両が新しくなり、決済がキャッシュレスになり、路線によっては運賃もかからない——この3つが同時に進むと、これまでバイク移動が当たり前だった層にとってもバスが現実的な選択肢に入ってくる。市が同時に進める旧市街の低排出ゾーン試行とも狙いは重なっており、EVバスは「排ガスを出さない都心の足」を支える一手として位置づけられている。

旅行者や出張者にとっての実利もある。電子チケットで乗り継ぎが1枚のカードにまとまれば、路線図さえ押さえておけば短距離の移動でタクシーや配車アプリに頼る場面を減らせる。どの路線がEV・無料の対象かは順次入れ替わるため、滞在前に最新の対象路線を確認しておくと動きやすい。

ホーチミンとの比較で見える、二都市の設計思想

公共交通のテコ入れという点では、ホーチミンも同じ時期に動いている。ホーチミンは路線バスの無料化で短期間に利用者を積み増す施策を打ち、無料化からわずか5日で利用者を3割増やした実績を出した。対してハノイのTransercoは、無料化と並行して「車両そのものを電動へ入れ替える」ことに軸足を置く。運賃で需要を呼び込むホーチミンと、車両更新とインフラ整備で足元を固めるハノイ——アプローチの違いは、両市の交通行政の設計思想の差として読める。

この転換は日本企業にも無縁ではない。EVバスの量産・充電設備・車載部品・運行管理システムには供給と協業の余地があり、2027〜2030年に置き換えが本格化すれば、その市場規模は一段と大きくなる。ベトナムの都市交通が「グリーン化」を旗印に更新期へ入るタイミングは、部品・インフラ側から見れば入り口が開く局面にあたる。

まとめ

ハノイのEVバスは、17路線281台という到達点よりも、半年で165台を積み増した速度と、年内51%超という近い目標にこそ勢いが表れている。在住者はまず、自分が使う路線がEV・無料・キャッシュレスの対象に入っているかを確認しておきたい。旅行者は、電子チケット対応の路線を滞在前に押さえておけば、市内移動の選択肢が一つ増える。車両が静かになり、決済が軽くなるこの流れは、ハノイの日常の移動を数年かけて塗り替えていく。

参照元

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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