ダクラク省コーヒー栽培がUNESCO無形文化遺産へ――「世界コーヒー遺産フォーラム」が始動

2026年4月17〜19日、ベトナム中部高原ダクラク省の省都バンメトートで「世界コーヒー遺産フォーラム」が開催された。テーマは「多様な伝統から生きたグローバル遺産へ」。UNESCO、FAO、タイなど各国の代表が集まり、ダクラク省のコーヒー栽培・加工に関する知識をUNESCO無形文化遺産に推薦するための道筋が具体的に議論された。

ベトナムはブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国で、その中核がダクラク省だ。ロブスタ種を中心に、省内だけで国内生産量の約30%を占める。2025年3月にはベトナム文化スポーツ観光省が「ダクラクにおけるコーヒー栽培・加工の知識」を国の無形文化遺産として正式認定しており、今回のフォーラムはUNESCOへの申請に向けた国際的な足固めとなった。

目次

フォーラムで何が語られたか

フォーラムでは約40本の研究論文・プレゼンテーションが発表された。テーマは4つの柱で構成されている。

第一は「世界のコーヒーの歴史と文化的遺産」。エチオピアからアラビア半島、ヨーロッパを経てアジアに広がったコーヒーの伝播ルートと、各地域で独自に発展した飲用文化が報告された。

第二は「栽培・加工技術の知識体系」。ダクラクの少数民族エデ族やジャライ族が何世代にもわたって受け継いできた栽培ノウハウが、単なる農業技術ではなく「生きた知識遺産」であることが強調された。

第三は「消費文化としてのコーヒー」。ベトナム特有のカフェ・フィン(金属フィルター)によるドリップ文化や、練乳コーヒー(カフェ・スア・ダー)の社会的な役割が分析された。

第四は「遺産の保全と持続可能な発展」。産業としての成長と文化遺産としての保全をどう両立させるかという議論が行われた。

ベトナムコーヒー産業の数字

指標 数値 備考
世界生産ランキング 第2位 ブラジルに次ぐ
ロブスタ種世界シェア 第1位 世界のロブスタ生産の約40%
ダクラク省の国内シェア 約30% ベトナム最大の産地
ドイツへのコーヒー輸出額(2025年) 12.2億ドル(約1,850億円) ブラジルに次ぐ第2位の供給国
国の無形文化遺産認定 2025年3月 文化スポーツ観光省による
UNESCO申請 準備中 今回のフォーラムで具体的議論

参加者・関係者の声

「この取り組みはベトナムコーヒー産業の付加価値を高め、世界のコーヒー地図における我が国の地位を強化するものだ」――グエン・ミン・ヴー外務副大臣

「コーヒーは単なる農産物ではなく、知識、慣習、精神的価値を体現する”生きた遺産”だ」――フォーラム参加者の共同見解

「バンメトートをグローバルなコーヒーハブとして位置づけ、産地のアイデンティティを持つブランド構築を推進する」――ダクラク省人民委員会

日本のコーヒー愛好家への影響

日本はベトナムコーヒーの主要輸入国の一つだ。コンビニコーヒーやインスタントコーヒーに使われるロブスタ種の多くがベトナム産であり、知らず知らずのうちにダクラクのコーヒーを飲んでいる人は多い。

UNESCO無形文化遺産に登録されれば、ベトナムコーヒーの認知度とブランド価値は確実に上がる。スペシャルティコーヒー市場では、すでにダクラク産のアラビカ種が注目を集め始めている。ハノイのカフェ・ジャンで出されるエッグコーヒーのように、ベトナム独自の飲み方が国際的に評価される流れも加速するだろう。

コーヒー文化遺産化がもたらす産業変革

UNESCO登録は観光資源としても大きい。ダナン花火大会DIFF 2026のようなイベント観光に加えて、ダクラク省の「コーヒー農園ツアー」が新たな観光商品として育つ可能性がある。すでにバンメトートには世界コーヒー博物館が存在し、フォーラムの会場にもなった。

産業面では、「遺産コーヒー」というブランディングにより、ロブスタ種の価格引き上げが期待される。現状ではアラビカ種に比べて安価に取引されるロブスタだが、文化的ストーリーが加わることで、プレミアム価格帯への移行が現実味を帯びてくる。フーコック島のニョクマムがGI(地理的表示)で価値を高めた事例と同じ構図だ。

バンメトート訪問ガイド

項目 内容
アクセス ホーチミンから国内線で約1時間。バンメトート空港(BMV)
ベストシーズン 11〜4月(乾季)。コーヒー収穫期は10〜1月
世界コーヒー博物館 バンメトート市内。コーヒーの歴史と各国の飲用文化を展示
コーヒー農園ツアー 半日〜1日ツアーが現地旅行社で手配可能。収穫・焙煎体験あり
名物コーヒー カフェ・フィン(練乳入りアイスコーヒー)。1杯15,000〜30,000 VND(約90〜180円)
宿泊 市内ホテル1泊3,000〜8,000円程度

まとめ

ダクラク省のコーヒー文化がUNESCO無形文化遺産に正式登録されるかどうかは、今後数年の申請プロセスにかかっている。しかし、すでに国の無形文化遺産に認定され、国際フォーラムでUNESCOや各国の専門家が議論のテーブルについた事実は大きい。コーヒーを通じてベトナムの文化的多様性が世界に認識される日は、確実に近づいている。

引用・参考

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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