ベトナムの電子身分アプリVNeIDが7月にバージョン2.2.10へ更新され、犯罪経歴証明(Phiếu lý lịch tư pháp、日本の書類では「無犯罪証明書」と訳されることが多い)の申請から結果受領までがアプリ内で完結する導線が加わった。ダクラク省公安の業務記録課が7月20日付で住民に更新を呼びかけ、その告知をKenh14などが伝えている。就労許可や一時滞在カードの更新のたびにこの書類を求められる在住日本人には、窓口に並ぶ手間が消えるかどうかが直接効く。ただし根拠となる公安省通達を読むと、オンラインで申請できる外国人には条件が付く。
VNeID 2.2.10で増えた3つの機能
ダクラク省公安 業務記録課の告知によると、公安省はVNeIDを2.2.10へ引き上げ、3つの機能を追加した。核になるのが犯罪経歴証明の発給サービスで、公安省通達第101/2026/TT-BCA号に基づき2026年7月1日から有効になっている。利用者はアプリ上で申請を作り、処理の進捗を追い、規定に沿って結果を受け取れる。
残る2つは、身分証(thẻ căn cước)の交付遅れや記載誤りをアプリから申告できる機能と、戦没者遺族がデジタル上で情報を照会・接続できる機能だ。
告知は住民に3点を求めている。アプリを最新版に保つこと、電子身分アカウントのレベル2を有効化すること、統合された機能を自分から使うこと。このレベル2という条件が、外国人にも別の形で効いてくる。
法務省から公安省へ、所管そのものが移った
アプリに機能がひとつ増えた話に見えて、その下では制度の土台が入れ替わっている。2025年12月5日、ベトナム国会は司法履歴法の改正法(法律第107/2025/QH15号)を可決した。出席441名のうち437名の賛成、全議員数に対して92.39%と政府系メディアが報じている。施行は2026年7月1日。
この改正で司法履歴(lý lịch tư pháp)の管理が法務省から公安省へ移った。発給機関も省・市の司法局(Sở Tư pháp)から、公安省業務記録局(Cục Hồ sơ nghiệp vụ)と各省・中央直轄市の公安へ切り替わり、データベースは公安省に集約されて国家人口データベースと接続される。
中身も同時に動いた。標準の処理期間は10日から5営業日へ短縮され、確認が要る場合も15日を超えない。申請できる年齢は16歳以上、電子版は紙と同等の法的効力を持つ。さらに機関・組織・個人が本人へ第2号証明書の提出を求めることが禁じられた。第2号には抹消済みの前科まで載るため、雇用や許認可の場で安易に求められないよう歯止めをかけた形になる。
行政手続きをアプリへ寄せる流れは続いており、6月には入管関連の手続きがVNeIDへ一本化され(ベトナム入管手続きが6月からVNeIDに一本化)、7月には車検が紙不要になった(7月からVNeIDで完結する車検の新ルール)。犯罪経歴証明は、その中でも外国人の生活に食い込む度合いが大きい。
7月1日をはさんで何が変わったか
公表資料で確認できたものだけを並べる。処理日数と所管の変化が、実務では最も効く。
| 項目 | 2026年6月30日まで | 2026年7月1日から |
|---|---|---|
| 所管官庁 | 法務省 | 公安省 |
| 発給機関 | 省・市の司法局 | 公安省業務記録局/省レベル公安 |
| 標準の処理期間 | 10日 | 5営業日 |
| 確認が必要な場合 | 延長規定あり | 15日を超えない |
| 電子版の効力 | 紙が原則 | 紙と同等 |
| オンライン窓口 | 国家公共サービスポータル | 同ポータルまたはVNeID |
| 第2号証明書 | 提出を求められる場面があった | 機関・組織・個人は要求できない |
手数料は財務省通達第16/2025/TT-BTC号が定める。円換算は1円=約162VND(2026年7月時点)で計算した。
| 区分 | 手数料(VND) | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| 一般(1回1名あたり) | 200,000 | 約1,230円 |
| 16歳以上の生徒・学生、革命有功者、烈士の遺族 | 100,000 | 約620円 |
| 1回の申請で3通目以降の追加分 | 1通につき5,000 | 約31円 |
| 児童・高齢者・障害者・貧困/準貧困世帯 | 免除 | — |
2025年に適用されていた170,000VNDのオンライン割引は期間を区切った措置で、同年12月31日で終わった。2026年はオンラインでも窓口でも200,000VNDが基準になる。
公安省と省公安、それぞれの説明
公安省業務記録局長のゴー・ティ・ホアン・イエン氏は、7月1日以降は司法履歴の情報がVNeID上に表示され、証明書を何度も申請し直す必要がなくなると説明している。一度電子版が出れば、その後の情報は本人のアカウントへ自動で更新される設計だという。
公安大臣のルオン・タム・クアン大将は国会審議で、第1号・第2号の両方を維持する方針を示した。第2号を廃止するのではなく、他者が本人に提出させることを禁じる整理になる。通達101号も同大臣の署名で6月24日に発出された。
現場に近い声が、冒頭のダクラク省公安の呼びかけだ。機能が増えても手前の準備がなければ使えない、という運用側の実感がにじむ。利用者側の負担も一部は軽くなった。申請できる年齢の下限は16歳に定まり、証明書を受け取る人が本人の父母・配偶者・子であれば委任状は要らない。ただし続柄を証明する書類の提示は求められる。
在住日本人と出張者は、結局どこから申請できるのか
通達第101/2026/TT-BCA号は、オンライン申請の手順を定めた条文と、窓口・郵送の手順を定めた条文を分けている。法令データベースの解説を突き合わせると、オンライン(国家公共サービスポータルまたはVNeID)を使えるのは、レベル2の電子身分アカウントを持つベトナム国民、電子身分アカウントを持つ外国人、父母・配偶者・子・被後見人のために申請する個人。窓口・郵送に回るのは、レベル2を持たないベトナム国民、電子身分アカウントを持たない外国人、委任を受けた代理人となる。
条文の建て付け上は「電子身分アカウントを持つか」が分かれ目で、外国人だから一律に締め出されるわけではない。外国人向けの電子身分アカウントは2025年7月1日に発給が始まり、政令第69/2024/NĐ-CP号が根拠にあたる。取得には有効な一時滞在カード(thẻ tạm trú)か永住カードが要り、出入国管理機関でTK01様式を出して顔写真と指紋を採取される。滞在申告の窓口が新サイトへ集約された動きもあり(外国人の一時滞在申告が新サイトに一本化)、在住者の情報はアプリとポータルへ寄り続けている。
断定を避けたい点が2つある。条文はベトナム国民に「レベル2」と明記する一方、外国人には「電子身分アカウントを持つ者」とだけ書く。ダクラク省公安がレベル2の有効化を勧めているとおり、実務ではレベル2を前提に組むのが安全側になる。もうひとつ、VNeIDアプリの犯罪経歴証明の画面が外国人アカウントで実際に動くかは、公式の案内から確認できていない。日本人がアプリだけで完結できるかは、手続きの前に居住地の省公安で確かめてほしい。
代替ルートは条文に用意されている。ベトナムに居住する外国人は、居住地を管轄する省レベル公安へ窓口または郵送で申請できる。すでに出国した外国人は公安省の発給機関へ送る扱いだ。公安省の公共サービスポータルの手続き案内は、複数地域の居住歴・海外滞在歴・外国人といった要素を延長の対象に挙げ、最大15日と記している。5営業日を前提に日程を詰めるのは危うい。
就労許可との関係も押さえたい。外国人労働者の就労許可申請では犯罪経歴証明か相当する確認書が必要で、発給日から提出日まで6か月を超えないことが求められる。用途が就職・就労許可・一時滞在カード更新なら、選ぶのは第1号になる。第2号を会社から求められたら、7月1日以降は要求できなくなった旨を示せばよい。枠組みは政令第219/2025/NĐ-CP号が定めている。
人材紹介・行政書士・企業労務に返ってくる影響
最初に業務が変わるのは、取得代行を請け負ってきた事業者だ。本人がアプリから5営業日で取れる建て付けになると、単純な取り次ぎの価値は薄まる。残るのは外国人特有の論点で、電子身分アカウントの取得支援、居住歴の確認が絡む案件の見通し立て、母国側の無犯罪証明との組み合わせといった領域になる。
受け入れ企業の労務も動く。第2号の提出要求が禁じられた以上、入社時チェックリストに「第2号」と残っていれば書き換えが要る。第1号も法令が求める場合に限る整理なので、根拠を確かめずに一律で集める運用は見直しの対象になる。
電子版が紙と同等とされたことで、提出先が電子版を受け付けるかという問題も出てくる。ベトナム国内の官庁は制度側の変更に追随するとして、日本側の提出先がQRコード付きの電子ファイルをそのまま受理するかは別の判断になる。当面は電子版で取得し、必要に応じて紙の交付も併せて請求しておくのが現実的だろう。
申請前に確認しておく項目
手続きに入る前の確認事項をまとめた。金額・日数・根拠法令は、公表資料に記載があるものだけを載せている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類名 | Phiếu lý lịch tư pháp(第1号/第2号) |
| 用途で選ぶ種類 | 就職・就労許可・一時滞在カード更新は第1号 |
| 申請できる年齢 | 16歳以上 |
| オンライン窓口 | 国家公共サービスポータル/VNeIDアプリ |
| 外国人の利用条件 | 電子身分アカウントを保有していること(省公安で要確認) |
| 窓口・郵送の提出先 | 居住地を管轄する省レベル公安。出国済みは公安省の発給機関 |
| 外国人の必要書類 | 旅券、一時滞在カード等の滞在を示す書類、所定の申請様式 |
| 手数料 | 200,000VND(約1,230円)/減額区分は100,000VND |
| 処理期間 | 5営業日。確認を要する場合は15日以内 |
| 就労許可での有効期間 | 発給日から提出日まで6か月以内 |
| 様式番号 | 第1号=06/2026/LLTP、第2号=07/2026/LLTP |
アプリの版が古いと新しい導線が出てこないため、2.2.10以降へ更新しておく。ベトナム語表記のまま操作する場面が残るので、Phiếu lý lịch tư pháp、số 1、số 2 の3語だけは形を覚えておくと迷いにくい。
まとめ
やることは3つに絞れる。自分の電子身分アカウントの状態を確かめ、持っていなければ一時滞在カードを携えて出入国管理の窓口でレベル2を登録する。次に居住地の省公安へ行くか電話をして、外国人アカウントでVNeIDから申請できるかを直接聞く。条文上は可能でも、画面が対応していなければ意味がない。最後に、就労許可や一時滞在カードの更新が控えるなら、5営業日ではなく15日を見込んで逆算する。
手数料は200,000VND、種類は第1号、有効期間は6か月。この3点さえ押さえておけば、総務から急に書類を求められても慌てずに済む。所管が移ったばかりの時期は窓口の運用に地域差が出やすいので、申請の直前に下記の公式ページでもう一度確かめてほしい。
参照元:Kenh14/ダクラク省公安/LuatVietnam/Báo Chính phủ/VOV/Thư viện pháp luật/Báo Pháp luật/公安省 公共サービスポータル/外国人の電子身分(Báo Chính phủ)/Dân Việt
