ベトナム中部ダナンの世界遺産・五行山(Ngũ Hành Sơn)で、8月20日から22日までヴーラン報恩祭(Lễ hội Vu Lan báo hiếu)が営まれる。亡くなった親や祖先に感謝を捧げる仏教の行事で、日本のお盆と同じ盂蘭盆(うらぼん)に根を持つ。国慶節の連休で中部を旅する人、ダナンに暮らす日本人にとって、季節の祈りの場に立ち会える三日間になる。
この記事は、8月末にダナン滞在を予定する旅行者と在住者に向けて、行事の中身と五行山への行き方をまとめた。
8月21日朝7時半に開幕、冥界をかたどった洞窟の前で祖先を送る
ダナン市が主催する今年のヴーラン報恩祭は、五行山の主峰トゥイソン(Thủy Sơn)にある動陰府(Động Âm Phủ)の前と洞内で行われる。動陰府は冥界をかたどった鍾乳洞で、地獄と極楽の情景を石の彫刻で見せる。祖先供養の舞台としては、場所そのものが持つ意味が重い。
会期は3日間、旧暦では7月9日から10日にあたる。開幕式は8月21日の午前7時30分に組まれた。プログラムには、法要を起こす興作(Hưng tác)や仏前で経を開く儀礼、地蔵経の読誦、22日朝の古仏托鉢と斎僧供養が並ぶ。会場には「七月の記憶(Ký ức tháng Bảy)」と名づけた文化体験の空間や法話の時間、そして胸に孝行のバラを挿す催しが設けられる。仏教儀礼と文化交流のキャンプを重ねた構成で、参拝だけでなく滞在して過ごせる作りになっている。
目連が母を救う話まで、お盆とヴーランは同じ経典から出ている
ヴーラン(Vu Lan)は盂蘭盆(Vu lan bồn)を縮めた呼び名で、日本の「お盆」と語源が重なる。どちらもサンスクリットのウランバナ、そして釈迦の弟子・目連(ベトナム語でMục Kiền Liên)が餓鬼道に落ちた母を供養で救う物語に由来する。国は違っても、7月に祖先を迎えて弔うという骨格は同じところから出ている。日本のお盆が新暦の8月中旬に固まっているのに対し、ベトナムは旧暦で日取りを決めるため、年によって時期がずれる。
ダナンの行事で目を引くのが、胸に生花のバラを挿す所作だ。母が存命なら赤いバラ、すでに亡くしていれば白いバラを着ける。自分がどちらの立場かを一輪の花で示す静かな儀礼で、参拝者の胸元を見れば、その人の来し方がほのかに伝わってくる。ベトナム全体のヴーランの本番は旧暦7月15日、今年は8月27日にあたる。五行山の催しは、その本番に先立つ助走の位置づけになる。
同じ夏の時期、ダナンでは盆踊りを組み込んだ越日文化祭のように、日本文化と交わる催しも開かれてきた。祖先を思う行事が両国で並んで立ち上がるのを、同じ街で見比べられる。
五行山は市街から8km、入場料4万ドンで登れる石灰岩の山
五行山は、ダナン中心部から南東へおよそ8kmの海沿いに立つ5つの石灰岩の峰の総称だ。金・木・水・火・土の五行から名がつき、ヴーラン報恩祭の舞台になるトゥイソン(水の山)には寺院と洞窟が点在する。麓から石段を登るか、有料のエレベーターで中腹へ上がる二通りの行き方がある。
入場料は4万ドン(約230円)、エレベーターは片道1万5千ドン(約86円)。開門は午前7時から午後5時半まで。動陰府は階段を下りた先の暗がりにあり、足元が濡れて滑りやすいので、歩きやすい靴で行きたい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会期 | 8月20〜22日(開幕7:30・8月21日) |
| 場所 | 五行山トゥイソン 動陰府の前・洞内 |
| 中心部から | 南東へ約8km |
| 入場料 | 4万ドン(約230円) |
| エレベーター | 片道1万5千ドン(約86円) |
| 開門 | 7:00〜17:30 |
ドン→円は1円≒175ドンで概算。
連休前に組み込むなら、朝いちの参拝が動きやすい
- 会期: 8月20〜22日(開幕式は21日午前7時30分、古仏托鉢は22日朝)
- 場所: 五行山トゥイソンの動陰府前・洞内(ダナン中心部から約8km)
- 費用: 入場料4万ドン、エレベーター片道1万5千ドン
- 開門: 7:00〜17:30。日中は日差しが強く、朝の参拝が涼しく歩きやすい
- 服装: 寺院なので肩と膝が隠れる服。石段と洞内用に滑りにくい靴
- 前後: 9月2日の建国記念日へ向けた連休の直前。ホイアンやミーソンと同じ中部旅程に組み込める
祖先を思う行事に外国人が加わるのをためらう人もいるが、五行山は普段から参拝と観光が混ざる場所で、静かに手を合わせる分にはとがめられない。丸いお盆マムを囲む食卓の記事で触れたように、ベトナムの供養は家族の食と地続きだ。旅の途中で線香の煙に触れると、その距離の近さが腑に落ちる。
8月21日朝の開幕に合わせて登り、涼しいうちに動陰府で線香を上げる
五行山のヴーラン報恩祭は、8月22日朝の古仏托鉢で幕を閉じる。ダナンに20〜22日にいるなら、21日午前の開幕に合わせて朝いちで水の山へ登り、動陰府で線香を一炷上げてから涼しいうちに山を下りる段取りが動きやすい。連休の中部旅では、早めに出回る月餅を祖先への供物や土産に選ぶと、七月の祈りの季節が旅の記憶に残る。
