高給のシェフ職を辞め2人がトロントでバインチャンチョン店

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ベトナムの路地や学校前で親しまれる軽食バインチャンチョン(ライスペーパーを細く切り、干しエビや青マンゴー、うずらの卵、香味野菜を和えたおつまみ)が、カナダ最大の都市トロントで一皿25カナダドルの商品として売れている。ベトナムの経済紙ダントリが伝えたのは、西洋料理店のヘッドシェフだった1997年生まれの女性2人が、高給の職を捨ててこの屋台飯の専門店を開いた話だ。1号店を出したあとも収入がほぼない時期が約1年半続いたが、その間も出店を止めずに店を増やし、いまは平日100〜150人、週末200〜300人が訪れる店に育った。ベトナムの家庭の味が海外でどう受け止められるかを示す事例として、ベトナム料理を旅先で味わう人にも、海外で暮らすベトナム好きにも読みごたえがある。

目次

ヘッドシェフの座を降りて屋台飯を選んだ2人

店を営むのはキム・ゴックさんとファム・ティ・ミー・ローンさん。ともに1997年生まれで、以前は西洋料理レストランのヘッドシェフを務め、年収はおよそ8万カナダドルあった。ベトナムの通貨に直せば年15億ドン規模で、日本円ではおおむね860万円にあたる安定した収入だ。2人はその職を手放し、故郷の屋台飯を海外で売る道を選んだ。

選んだ看板料理が、洗練された西洋料理とは対極にあるバインチャンチョンだったのが目を引く。プロの調理技術を持つ2人が、あえて家庭的で素朴な軽食に賭けた。ベトナムの若者が路上でつまむこの料理を、異国の都市で商品として成立させられるかという挑戦だった。

25カナダドルのバインチャンチョンが並ぶ店

店の名前は「カックマン・タンタム=チュオンチン」。ベトナムの街路名から取った屋号で、故郷の地名を海外の店に掲げている。看板のバインチャンチョンは1皿25カナダドル。ベトナムなら数千ドンで買える軽食に、加工と輸送の手間、海外の物価が乗った価格だ。

品ぞろえはバインチャンチョンにとどまらない。ライスペーパーで作る誕生日ケーキ(バインチャンのケーキ)は85カナダドル以上、ほかにチェー(ベトナムのぜんざい)、タピオカミルクティー、コーヒー、バインジオ(バナナの葉で包む蒸し餅)、ダーバオ(蒸しパン)、バインミー、コムタム(砕き米のプレート)まで並ぶ。価格帯は2〜28カナダドルと幅広く、軽くつまむ客から食事目当ての客までを受け止める。原料の一部はカナダで手に入りにくいため、ベトナムから輸入しており、その分がコストに響いている。

価格とカナダドルを円で並べる

主なメニューと年収を、日本円の目安と一緒に並べる。為替は2026年9月時点でおよそ1カナダドル=108円で換算した。記事はベトナムドン換算も併記しており、そちらも参考として添える(ドンは1円≒175ドン)。

項目 カナダドル 日本円の目安 記事のドン換算
バインチャンチョン(1皿) 25 CAD 約2,700円 約46万8千ドン
ライスペーパーの誕生日ケーキ 85 CAD〜 約9,200円〜 約150万ドン〜
メニュー全体の価格帯 2〜28 CAD 約220〜3,000円 約3万7千〜52万4千ドン
以前のシェフ職の年収 約8万 CAD 約860万円 約15億ドン

ベトナムの屋台なら小銭で買える一皿が、トロントでは2,700円で売れている。原料の輸入コストと海外の外食物価を織り込むと、故郷の軽食も現地の価格帯に乗る。

赤字覚悟で出店を先行、黒字化まで約1年半

順調な滑り出しではなかった。1号店を開いたのは2024年10月。そこから約1年半は収入がほぼない状態が続き、以前の給与から貯めた蓄えを切り崩して食いつないだ。慣れない土地で働き手を確保するのも難しく、ベトナム特有の食材が現地で入手しづらいという壁もあった。輸入に頼れば高くつき、利益を圧迫する。

それでも2人は出店の手を止めなかった。まだ黒字化が見えない2025年3月に2号店、同年8月に3号店を開き、開業から1年足らずで店舗を3つに広げている。収益を待つより先に店を増やす賭けだった。客足を押し上げた一因が、現地のベトナム文化祭にフードとして出店したことだ。イベントで味を知った人が口コミで店を広め、来店が増えていった。開業からおよそ1年半をかけて、ようやく収支が上向いたという歩みになる。反応も二つの方向から届いている。ベトナム系の客からは、故郷の味に触れて望郷の思いが和らぐという声が寄せられ、現地の客からは新しい食文化への好奇心をもって受け入れられている。

屋台飯の海外進出が旅行者の食の見方を変える

この事例は、ベトナム料理の海外での立ち位置が動いていることを示す。これまで海外のベトナム料理といえばフォーやバインミーが主役だった。そこへバインチャンチョンのような、より土着的な軽食が商品として通用し始めている。プロの料理人が本気で作れば、路上のおやつも異国で対価を取れる一皿になる。

旅行者にとっての意味は二つある。一つは、ベトナムを訪れたときに食べるべき対象が広がること。有名店のフォーだけでなく、学校前や市場でつままれるバインチャンチョンのような軽食こそ、その国の日常に近い味だと分かる。もう一つは、海外で暮らすベトナム好きにとって、故郷の味を再現する店が増えているという実感だ。トロントに滞在するなら、この3店舗はベトナムの屋台の空気を持ち帰れる場所になる。

トロントで探すときと、旅先で味わうとき

実際に味わうなら、二つの入り口がある。トロントを訪れる場合は、街路名を冠したこの店が候補になる。バインチャンチョンから食事系のコムタムまで幅があるので、軽くつまむのか食事にするのかで注文を変えられる。カナダドルの現地決済が基本だ。ベトナム本国で味わうなら、市場や学校の近く、夕方の路地でこの軽食を探すと、25カナダドルではなく数千ドンで本場の一皿に出会える。青マンゴーの酸味と干しエビの旨みの配分は店ごとに違うので、何軒か食べ比べると好みが見えてくる。

家業や職を変えて食に賭けた物語をもっと読みたい人は、家業を継いだ食の話(ミシュラン3年連続のうなぎ春雨、娘が米国のネイル店を閉じて継いだ)が重なる。ベトナム料理の世界的な評価は、NZ紙の読者投票でベトナムが美食世界1位、2位イタリア3位日本を抜くで確かめられる。屋台と行列店の価格差を知りたいなら、サイゴンで2030円の鉄板バインミー、屋台の6〜10倍でも行列が続くも合わせて読みたい。

次にベトナム料理を選ぶとき、フォーやバインミーの一つ先に、バインチャンチョンを頼んでみてほしい。トロントで2,700円の値がつく一皿は、ベトナムの路地では小銭で味わえる。同じ料理の値段の落差そのものが、その国の日常の豊かさを教えてくれる。

参照元: Dan tri「Bỏ lương 1,5 tỷ/năm, hai cô gái bán bánh tráng trộn giữa TP lớn nhất Canada」

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この記事を書いた人

ベトナム・ホーチミン在住3年目|旅行で来るだけでは知ることができない、現地にいるからこそわかるローカル情報を中心に発信していければと思いベトナム旅行の専門情報サイトを立ち上げました。

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