ベトナムの契約輸送(xe hợp đồng)と相乗りリムジンを規制する政令218/2026/ND-CPが、2026年8月10日に施行された。個々の乗客への座席販売・運賃徴収・予約確認を禁じ、事務所やオフィス前での客の乗降も認めない内容だ。ハノイ〜ハイフォン、ホーチミン〜ブンタウといった路線で、在住者や出張者が都市間移動に使ってきた「実質は乗合」の限リムジンは、この日を境に予約手順が切り替わる。
影響が大きいのは、電話1本で座席を1つだけ押さえてきた人だ。地方在住で空港送迎に乗合バンを使う層、出張のたびに事務所前まで迎えに来てもらっていた駐在員は、8月10日以降の手配方法を見直す必要がある。この記事は、限リムジンや契約バンで都市間・空港間を動く在住者と出張者に向けて、何が禁止され、どう手配を変えればよいかを整理する。
政令218号が契約輸送に引いた三本の線
今回の政令が契約輸送事業者に禁じたのは、大きく三つだ。第一に、個別の乗客に対する予約確認・チケット販売・運賃徴収。第二に、複数の乗客を対象にした固定路線・固定時刻での運行。第三に、本社・支店・駐在事務所その他の固定地点での乗降だ。これらに反した事業者は、事業許可の取消対象になる。
あわせて、2028年1月1日からは出発前に旅客の契約データを公安省へ共有する義務も課される。段階的に運行実態を可視化していく設計になっている。
| Item | Details |
|---|---|
| 公布日 | June 19, 2026 |
| Effective date | 2026年8月10日 |
| 改正の対象 | 政令158/2024/ND-CP(道路輸送) |
| 契約データ共有義務 | 2028年1月1日から |
出典は政令218/2026/ND-CPおよびVietnam.vn。日付・番号は原文で確認した。
貸切のはずの契約輸送が、路線バス化していた
契約輸送はもともと、グループ単位で車両を丸ごと借り切る形態を想定している。ところが9〜16人乗りの限リムジンは、座席をバラ売りして毎日同じ区間を同じ時刻に走る、路線バスと変わらない運び方が広がっていた。少人数でも快適に座れ、ドアからドアまで運んでくれる手軽さから、ハノイやホーチミンと周辺都市を結ぶ移動では路線バスや鉄道より支持を集めてきた区間もある。
一方で、決まった停留所と時刻表で運ぶ以上、実態は路線バスに近い。認可を受けた路線バス事業者との間で条件が不公平になり、乗客名簿や運賃の管理も曖昧になりやすかった。政令218号は既存の政令158/2024を改正し、この「見た目は貸切、中身は乗合」の線引きをはっきりさせた。運行を続けたい事業者は、正規の路線バス免許を取り直すか、本来の貸切に徹するかの二択に近づく。
空港送迎と都市間移動の手配はこう変える
実務で変わるのは三点だ。まず、座席1つだけの予約は成り立たなくなり、車両を貸し切る契約か、正規の路線バス・鉄道への切り替えが前提になる。ホテルのフロントやZaloのメッセージで「明日1席」と頼んできた出張者は、この頼み方が通らなくなる場面に出くわす。次に、事務所前でのピックアップが使えないため、合法な乗降ポイントを指定して待ち合わせる形になる。オフィスや自宅の玄関前まで来てもらう前提の移動は組み替えが要る。そして空港送迎は、配車アプリのGrabやXanh SM、メーター式の正規タクシー、路線バスへ需要が流れる。
取り締まりの環境も同時に厳しくなっている。私用車での有料送迎は自家用車の有料送迎に対する罰金として別途規制され、市民が撮影した映像が交通違反の立件に使われる運用も8月に始まった。裏道的な移動手段は選びにくくなったと考えたほうがよい。
予約前に確認したいこと
- 予約が「貸切契約」か「座席売り」か。座席売り前提の業者は運行を止める可能性がある
- 契約書や領収書が発行されるか。名目上の契約が実態を伴っているか
- 乗降場所が事務所前を指定されていないか。指定なら8月10日以降は使えない
- 空港へは配車アプリ・正規タクシー・路線バスを代替に。将来はタンソンニャット空港を地下駅で直結するメトロ6号線も選択肢に入る
- 都市間は正規の路線バスや鉄道の時刻を控えておく。ハノイ〜ハイフォン、ホーチミン〜ブンタウは代替便が比較的多い
- 移動前後の予定に余裕を持たせる。手配方法が定まるまで所要時間が読みにくい
次の予約から業態を一言確認する
8月10日以降、座席のバラ売りや事務所前ピックアップを続ける契約輸送事業者は、事業許可の取消という重い処分に直結する。在住者や出張者にとっての現実的な備えは、次にリムジンを頼むとき「これは貸切か、座席売りか」を一言たしかめることだ。座席売りなら正規の路線バス・鉄道か配車アプリへ切り替える。2028年には契約データの公安省共有も始まり、乗合まがいの運行はさらに続けにくくなる。移動そのものが止まるわけではなく、合法な手配へルートを引き直す局面だと押さえておきたい。
